世界を
見降ろし、
俯瞰するような
感じに
なった。
観えるもの
と言えば、
すべて
とも
言えるし、
逆に、
何も観えない
とも
言える。
ただ、
呆然とする
しか
なかった。
・・・・・・
洞窟の中に
いた
私が突然、
外に出た
ものだから。
しかも
いきなり
空だったもの
だから、
それはもう
何が起きているか
を
受け止めるまで
時間を要した。
ひょっとすると
いまだに
受け止めきれて
いないのかも
しれない。
だがこうして、
全体を俯瞰する
場所に
いるのだから、
その事実は
変わらないの
だから。
意を決して
つぶさに
観察することに
したんだ。
・・・・・・
まず最初に
思ったのは、
人というのは
こんなに
愚かだったのか、
ということ。
驚愕。
と
言っていい。
それでしばらく
また
呆然となり、
そして
だんだんと
落ち着いて
きた。
そんなこと
とうに
知っていたはずだろ、
という
自分が出てきて
いたから。
愚かなのは
わかっていて
ここまで
きたんだろ?
と。
その愚かさ
には当然、
私自身も
入ってるし。
そう思っていると
だんだんと
開き直って
きた。
・・・・・・
そして私の
視点は、
可能性
の方に
移った。
どうすれば
この今の
状況から
脱出できるか?
その可能性は
どこに
あるのか?
そんな視線で
世界を
つぶさに
見つめた。
・・・・・・
人一人に
できること
なんて、
たかが
知れている。
しかも
短い一生で
できること
なんて。
私にできる
のは、
たったの
一手。
しかし
その一手さえ
しっかり
打てば、
もうそれで
充分だろう。
そう確信を
得て、
決めて
きたんだ。
ここに。
・・・・・・
一手を
いつ打つか?
どのように
打つか?
その準備の
ために
ここまで約58年
かかった。
長いように
思えるが、
短い一瞬だ。
私は
一手を打って
帰っていく。
もうすぐ
打てそうだ、
と
やっと
実感がきた。
その
もうすぐ
が、
いつになるかは
わからないが、
少なくとも
この人生の
内には
打てそうだ。
つづく