デカいな

LINEで送る
Pocket

 

昔、

ヒマラヤの山を

歩いていた時に、

 

そこから見える

山々のあまりの

大きさに、

我を忘れたことが

あった。

 

そこで感じたのは、

「私」という

一人の人間の

あまりの小ささ。

 

存在の小ささ

だ。

 

この大自然を前に

いったい自分なんかに

何ができるものか。

 

こんな小っぽけな

存在なんかに。

 

それは

一種の絶望だった。

 

と同時に、

自然というものへの

憧憬が渦巻いた。

 

当時の私は

人間が

嫌いだった。

 

恐らく

その時代に

私が唯一向き合っていたのは

山だった。

 

私はよく一人で

山に入り、

 

たった一人で

山々と向き合った。

 

そこでしか、

きっと

私は私の存在を

感じ取れなかった。

 

あまりに小さな

存在であるが、

 

それは紛れもなく

「存在」

だった。

 

・・・・・・

 

冬に

南アルプスに登り、

日本第二の高峰の

白峰北岳と

向かい合った時、

 

私は北岳から

「もっと大きくなれ」

メッセージを受け取った。

 

もちろんそれは

北岳を介した

自己対話だったのだが、

 

当時の私はそれを

本当に

北岳からのメッセージであると

信じた。

 

私はようやくそこで

人間界で生きる決心を

得た。

 

・・・・・・

 

私は今の仕事に

就いてから、

実は一度も

山には登っていない。

 

でも山々はずっと

私の胸の内にある。

 

その純粋さと

大きさは、

今でも私の憧れだ。

 

北岳からのメッセージを

受け取ってから

もう

30年以上過ぎているが、

 

今の私が当時と

違うところは、

 

人間もデカい、

 

という事実を

知っていること

だろうか。

 

昔、

山に登ったように、

 

今は

目の前のお一人お一人を

登っているような

感じだ。

 

登れば登るほど、

そのデカさを

感じるし、

 

いつまで経っても

頂上は見えない。

 

そしてやはり、

 

人を介して

私は私自身と

向かい合っているんだな。

 

つづく

 

コメントを残す

*