完成のためでなく

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山の向こうから

月が昇った。

 

途端に

世界が調和

した。

 

そこにある

あらゆる存在が

意味を持ち始めた。

 

一つとして

不足はなく、

 

一つとして

余分もない。

 

世界は

完成された。

 

と、

次の瞬間、

 

世界に

ほんのわずかな

綻びが生まれた。

 

それが

次々に歪みや

淀みを生み出した。

 

そして

世界全体が

ざわめき始めた。

 

それを月は

ただ微笑んで

眺めている。

 

月は

調和をもたらし、

 

調和は

進化をもたらす。

 

そして進化は

次の調和を

もたらすだろう。

 

同じ調和でも

そうやって一つ一つ

次元を高めていく。

 

私は

月のような存在で

ありたいな、と

思っている。

 

一見、調和をもたらし

世界を完成させるかの

ように見えて

本当は、

 

進化のための

綻びをもたらすのだ。

 

決して

完成はされない世界。

 

そこにこそ

真の美しさがある。

 

一人の人間も

同様だ。

 

綻びがあるのを

嫌がる人もいるが、

 

綻びがあるのが

人間なんだ。

 

つづく

 

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