「あぁ、お二人とも
だいぶ不安定になっていますね。
それでは、良い判断が
できないでしょう。」
木村さんと弓江さんの2回目の
二人コーチングの冒頭で、
私はそのようにお伝えしました。
二人にとっては
予想外の一言だったようです。
少しの間、二人は無言でした。
私の言葉に戸惑っていたのでしょう。
冷静な口調で弓江さんが
言いました。
「私達は今、不安定ですか?
私にはその自覚がありませんでした。」
木村さんも口を開きました。
「むしろ、いい状態だと
思っていましたが・・・。」
「いい状態、だと感じていた
理由はわかります?」
「すごくエネルギーが湧いてきています。
モチベーションが高いです。
集中力もあります。
前向きですし、絶対にやってやろうという
意志が高いです。
今日のこのコーチングも楽しみで
しょうがなかったです。」
「弓江さんはいかがですか?」
「そうですね。木村リーダーとほぼ同じです。
これまでとは少し違うレイヤーの意識に
自分はいるという気がしていました。」
「なるほど。
では、一つ今から問いをお二人に投げますので、
直観的にお答えいただけますか?」
「はい。」
「お二人の真本音は今、
どこにいますか?」
最初に弓江さんが答えました。
「あっ、なんか、私から離れている
気がします。
私の後ろの上の方、3mくらいの
ところにいるような気がします。」
「木村さんはいかがですか?」
「私も離れている気がします。
私は50mくらい後ろの方にいます。」
「では、その真本音の位置から、
今ここにいるご自分自身を
観察してみてください。」
二人は言われた通りにしました。
「どうです?
どのように見えますか?」
最初に木村さんが
言いました。
「なんか、自分の全身から炎が
上がっています。
その炎の中にいます。
でも、炎の中なので、外の世界がきちんと
見えていない気がします。
自己満足的な・・・。」
次に弓江さん。
「何でしょうか。
自分は、自分の内側のみを見ている
ような気がします。
外に意識を向けていません。
自分のエネルギーを楽しんでいますが、
それだけのようです。
私も自己満足しているのでしょうか。」
「お二人は、
新規事業プロジェクトのメンバーが
減ったことが、本当に嬉しいのですね。
なぜなら、直観的に
これで調和性の高いチームになると
思えたから。
そして、これで実績も上がるはずだと
思えたから。
さらに、人数が減らされたのに、
計画以上の実績を上げることができれば、
我ながら凄い!と思えたのではないですか?」
「その通りです。」
と木村さん。
「それはそれで、問題はありません。
でも、その直観が嬉しくて、
逆に意識が自己満足的な方向に
向かってしまった。
と同時に、
言った以上は、必ず実績を上げなければ!
と気合いを入れた。
気合いを入れること自体は大事ですが、
それは自己満足的な気合いですね。」
二人の心がギュギュッと
固くこわばったのがわかりました。
「まぁでもそれも人間でね。
そういった心になることをやめてください、
と言う話ではないのですよ。
大事なのは、
そういったご自分を真本音の視点から
客観的に見て、どうしたいか?ですね。」
「いやぁ、自己満足は嫌ですね。」
と木村さん。
「私は自己満足をするような人間ではないと
これまで思っていましたが、
結構しちゃうのですね。」
と弓江さん。
「自己満足するご自分を責める必要もありませんし、
否定することもありません。
それをあるがままに見つめることが大事です。
では、そういった自己満足的な自分に対して
どうしてあげたいですか?」
木村さんが言いました。
「私は自己満足な自分も可愛らしいと
思います。
ただ、その自分の中に閉じこもっているのは
嫌ですね。
そこから出たいです。」
次に弓江さん。
「私もなんか、こういう自分がいたのだと
思うと、ちょっと自分を可愛らしく思います。
でも、その中にはいたくないですね。」
「じゃあ、どうしましょうか?
その真本音の視点から、今の自分自身に
声をかけてあげてください。」
「まぁそんなに力まずに。
やるべきことをしっかりと見出して、
一歩ずつ着実に進もうよ。」
と木村さんが自分自身にメッセージしました。
弓江さんは、
「気合い入れ過ぎじゃない?
そんなことでは、本質を外してしまうよ。
もっと楽に力を抜いて進もうよ。」
とメッセージ。
その瞬間、お二人から一気に
肩の力が抜けた感覚が伝わってきました。
「気合い」が抜けたのです。
「では、お二人とも、
真本音を自分の体の中に
戻してあげてください。」
二人がそうすると、
その瞬間に、場の空気感が
一変しました。
二人の目が「自然体」に
戻りました。
そして、まっすぐに私を
見つめてきました。
見つめていますが、それは
とても軽やかです。
心地よい風が吹いてくるようです。
この瞬間、前回の二人コーチングと同じく、
私達は、「一つ」になっていました。
「ようやく元に戻れましたね。
では、コーチングを始めましょう。」
つづく
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