目の前に
水平に漂う
何かがあって、
これは何だ?
と
目を凝らして
みると、
海だった。
水中と
水面上と
両方の視点から
観える海。
海は激しく
揺れていた。
なぜこんなに
激しく?
と
問いかければ、
海の苛立ちが
伝わってきた。
何を苛立って
いるの?
しかし
海は答えない。
しょうがないので
しばらくじっと
観察していた。
無言で
向き合うだけ。
すると
海の底の方に
ボーッと
赤いような光が
観え始めた。
あれは
何だ?
と、また目を
凝らすと、
あまり観て
ほしくないんだ、
と
海が言う。
なぜ?
と
問うても
答えてくれない。
観るなと
言われれば
観たくなってしまう
のが
人情というもので、
半ば強引に
その赤い光に
意識を向けて
しまったよ。
そうしたら、
すげー怒り。
海の怒り
の塊。
だから観るな
って
言ったのに。
・・・と海。
懐深い海が
こんなにも
怒ってるんだ。
並大抵では
ないなぁ、
と呟くと、
そろそろ私も
怒ろうかな、
と、
怒りを解放しても
よいかな、
と、
そう思うんだよ、
と、海。
そろそろ何の
怒りか
教えてくれよ、と
頼み込むと、
やっと
答えてくれた。
二つに
分かれちゃった
でしょ、
君たち人間は。
進む者達と
進まない者達に。
何やってんだよ!
と
怒ってるんだ。
確かに。
それは
面目ない。
弁解のしよう
もないよ。
ただ私は
詫びた。
私は
分かれないけど
いいかい?
と、海。
それは
むしろありがたい。
君が一つの
ままで
いてくれるなら、
人はまた
一つに戻れる
かもしれない。
進まない者達も
本当は
進みたいのだから。
じゃあ私は
私のやりたいように
するよ、
と、海。
なんかちょっと
海と和解
できたかのような
気分だ。
つづく