風船の決意

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子どもの頃の、

ついつい
手を離してしまった
風船が、

ぷかぷかと
空に浮かび、
上がっていく。

帰ってきてよ!
と叫んでも、
どんどん小さく
なっていく。

自分の大切な
ものが
自分の手を離れ、

消えていく。

あの体験、

喪失感を、
ふと、思い出す。

風船は
どこまで行って
しまったのかな?

いつまで
空中を
飛び続けたのかな?

最後は、
どうなったのかな?

私は同じ
地面に立ったまま、

想像するしか
ない。

想像するのだが、
私の中では
今でもあの風船は、

飛び続けている。

心の中に
残る思い出は、

その時の
映像のまま、

残り続ける。

永遠に。

あれから
50年近く経ち、

あの時の風船が
私に
語りかけてきた。

あれから
私は
あなたをずっと
空から見守り
続けてきたよ。

あの時、あなたは
決心したはずだ。

僕は
どこにも
飛んでいかない、

僕は
ずっと
ここに居続けよう、

とね。

そして
50年、
居続けたね。

何度も
飛んで行きそうには
なりながらも。

そうだね。

確かにあの時
私は
決心したよ。

あの時に
覚悟を決めた
のかもしれない。

ここ
で頑張ることを
ね。

あと
23年だね。

そうだね、
あと
23年だな。

短いね。

あぁ、
短いな。

できるかな。

やってやるさ。

つづく

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