風の合図

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止まっている。

静かに。

鼓動すらも。

目を閉じ、

耳のみに
神経を向けながら。

ほんのわずかな
風の音をも
聴き逃すまい、と。

世の中は
まるで
影絵のように

止まったまま。

ところが、

フッと、
まずは私の
胸の奥が
揺れた。

風はないの
だが、

恐らく
風の前兆では
ないか。

私は胸の
奥に
蝋燭を灯す。

すると、
小さく
その炎が
揺らめいた。

耳には
何も聴こえない。

このような
本当に些細な
始まり、なのか。

と、
驚き、半ば
あきれつつも、

私は大急ぎで
駆け出した。

たとえ、
0.0000000001だと
しても、

ゼロからの
変化としては
とてつもなく大きな
こと。

55年も
待ったのだ。

この風を
逃してたまるか。

つづく

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