40年前の風

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あの
曲がり角から
誰かが
こちらを
覗き込んでいる。

ハッとして
見ると、
気配は
消えた。

確認して
見たが、
誰もいない。

気のせいか、

思ったのだが、

やはりまた
気配がする。

こういった
場合、

大概その後、
面白い発想が
浮かぶ。

それも
過去に根ざした。

まずは
過去の誰かを
思い出す。

そして
その人に関連した
出来事を
思い出す。

その
ある場面が
グッとリアルに
迫ってきて、

そして
その時の
「風」を
感じる。

きっと
実際のその時にも
その「風」は
吹いていた。

しかし
その時の私には
それを受け取るだけの
感受性が
なかった。

しかし
今、思い出している
この私は
その「風」を
ありありと
感じている。

私が今、
思い出している
その人の
表情と、

その「風」を
一言で
表現すれば、

寂しさ

だ。

孤独
と言っても
いい。

誰もわかって
くれない
という
孤独感。

その人は
環境的には
恵まれた
人だった。

しかし
であるが故に
人生が
決められていた。

僕の人生は
もう
決まってるんだ。
でも
嫌なんだ。

そう
寂しそうに
笑った彼。

中学時代の
友人だ。

あの「風」が
確かに私を
突き動かした。

私が今ここに
いて、
この仕事を
しているのは、

その時の
「風」を
感じたからだ。

あの時私は
自分の
無力を呪った。

とても近しい
友人なのに、
何も
してあげられない。

たった一言の
言葉さえ
かけられなかった。

歯痒さ。

あの時、
無意識に
思っていたのだ。

未来の私なら
今の彼に
とても大切なことを
伝えられるのに、
と。

あの瞬間の
「風」は
私と未来とを
繋ぐものだった。

約40年前の
「風」。

あの過去の
実在の彼が
私に
今、
呼びかけた。

あぁそうか。

私はやっと
今になって、
彼を
「救える」
商品を
創り出せるのだ。

つづく

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