桜の花が
舞い散る
ように、
ひらひらと
何かが
私の体に
触れながら
落ちている。
涙かな、
と。
そう
思ったんだ。
悲しさと
嬉しさの
ごちゃ混ぜの。
誰のかな?
確認する
のが
ちょっと
怖かった。
・・・・・・
あの人の
あの時の
涙を
ふと思い出した。
随分と
昔の話だ。
体の大きな
50歳近い
仕事の能力が
とんでもなく
高い
大の大人が、
人の目を
憚らず、
大声を上げながら
泣きじゃくった
のだ。
当時の私は
20代半ば頃。
呆然と
それを見ながら、
その人の
本音に
初めて触れて、
人間、という
存在の本音に
初めて
触れたような
不思議な感覚
だった。
あの時の
あの感覚が
今、
蘇っている。
・・・・・・
人は
本音を出さない。
出したいのに
なかなか
出せない。
大切な
一言を、
大切な
感情を、
ついつい
抑え込む。
そして
人間関係で
最も大事な
部分を
崩壊させる。
もうそんな
崩壊は
見たくない、
という
単純な気持ちが
私がこの
仕事を
続ける理由と
なっているのかも
しれない。
・・・・・・
そこまで
わかった時、
このヒラヒラが
何か?
誰のか?
わかった。
私はすぐさま
連絡を
入れた。
急遽、
その人に
会わなければ
ならない。
私の仕事は
いざという時の
瞬発力が
命だ。
つづく