その者の正体

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誰もいない
廊下を

静々と
歩いている。

音を
立てずに。

幽霊の
ように。

奥にある
あの扉。

その向こう
には
何があるか?

本当は
よくわかって
いるのに、
何も知らない
まま、

誰にも
悟られない
ように、

静々と。

・・・・・・

私を
呼び寄せる
何者か
がいる。

子供の
頃から。

思えば、

ずっとその声

誘われて
ここまで
生きてきたようにも
思う。

誰かは
わからない。

が、
ずっと
懐かしい。

ここ、

私の本当の
場所ではない、
という
感覚もあり、

その声の
主に会えば、

きっと
すべてを
思い出せるだろう、
と。

・・・・・・

初めて
扉が開いた
のは、

もう
24年前。

その時は、
扉は
本当には
開いてはおらず、

開いたつもり
には
なっていたが、

今から
思えば、

ただ、
向こう側の
声が
聴こえただけ
だった。

しかし
それでも私は
有頂天に
なり、

結果として
道を
誤りそうに
なった。

そこで
扉は再び
完全に
閉ざされた。

・・・・・・

当時の私は
相当に
悲しんだのだと
思う。

その自覚は
なかったが。

しかし
もう一度、
最初から、
と、

静々と
歩み始めた。

愚直さしか
扉を開く
術はない、
とは
わかっていたから。

・・・・・・

そしてやっと
本当に
扉が開いたのが、

16年前。

扉の向こう
側に
出られたのが、

そこから
一年半後。

しかし今度
は、
こちら側に
戻って来れなく
なった。

この世で
生きることが
よくわからなく
なった。

そこから
また
試行錯誤。

思えば
長い旅の
ようだ。

・・・・・・

扉の向こう

いたのは、

私自身
だった。

当時から
してみれば

未来の私。

そして
それは、
今の私だ。

今の私は、
まだ
扉の開かない
当時の私を
導いている。

当時、私は
彼を、

つまりは
今の私を、

兄貴


呼んでいた。

その兄貴
となれた
私が

過去の私を
導く。

これが
人間が実在で
行なっている
ことなんだ、

今になって
よく
わかったよ。

つづく

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