『人間発電所』
・・・これが平井さんの当時の人生理念です。
「私はどんな時も、みんなにエネルギーを与えられる
自分でいたい。
私のところに来れば、エネルギーが充電され、
元気一杯、自分の魅力と能力を最大に発揮できる状態になる。
そんな自分でいたい。
みんなを主役にできる自分でいたい。」
これが彼の揺るがぬ想いでした。
これは仕事のみならず、プライベートでも変わりません。
そんな自分でいられれば、
彼自身が幸せを感じるのです。
この理念を言語化してから、
平井さんの言動や習慣は大きく変わりました。
まず彼は、毎日1時間早く起きるようになったそうです。
その1時間で、自分の心を整えるのだそうです。
彼はヨガを習ったり、瞑想法の勉強をしました。
私もセルフコーチング法をお伝えしました。
いろいろ試しながら、彼なりの心の調整法を
編み出したようです。
朝だけでなく、夜寝る前にも
心を整える時間を創るようになったそうです。
それにより、睡眠が随分と深くなったこと、
目覚めがとてもよくなったこと、
一日の始まりが快適になったこと、
何よりも
「人間発電所としてのパワーが宿っているなと
思える状態になると、それだけでウキウキして、
さらにパワーが高まるんです」と。
面白いことに、
「人間発電所」になってからの方が
彼は静かになりました。
それまではどちらかと言えば、
彼は大声を出しながら皆を鼓舞する場面が
多かったです。
しかしそれはカラ元気に近く、
「そんな無理なことをしなくても、
自然に振る舞うだけで、パワーを与えられる
ことを知りました。」
それとともに、
彼からは余分な言動が消えていきました。
会議でも、以前は彼がずっと喋っていました。
しかし今は、彼はまるでコーチのように
問いを皆に投げて、あとは聴き役になります。
そして、ここぞという時のみ、
重要な一言を言います。
それはたった一言であるが故に、
逆に皆の心に深く響くようです。
しかも彼の発する言葉の多くは
「人間発電所」としてのものでしたので、
それにより皆が元気になりました。
そのような会議やミーティングを繰り返すことで
社員さん達の彼への印象が大きく
変わっていったのです。
彼は偉いなぁ、と私が思ったのは、
「人間発電所」という人生理念を大事にすることを
皆の前で宣言したことです。
「これまでの私は残念ながら、
皆のエネルギーを奪うことをたくさんしてきたように
思います。
しかしこれからは、パワーを与えられる自分に
なります。
もしそうでない言動を私がしていたら、
遠慮なく私にフィードバックしてください。」
そうは言っても最初は社員さん達は
なかなかフィードバックする勇気は
出ませんでした。
ですので、そこは私が少しサポートしました。
私が社員さん達の前でわざと、平井さんに
「今の態度はエネルギー奪ってますよ」と
フィードバックするようにしました。
その度に平井さんは、
「あっそうか。すんません」と言いながら
頭を掻きました。
そこに深刻さはなく、
素直に受け取る彼の姿を見て、
しだいに社員さん達も彼に意見を言うように
なりました。
そんな中での、生田さんの
「私はあなたのことが嫌いでした」発言も
出たのです。
平井さんは自分を別人に変えよう
としたわけではありません。
自分を変える、というよりも、
本来の自分に戻そうとしたのです。
本当は自分はこんな生き方をしたい
人間なんだ。
本当は自分はこんな自分であると
幸せな人間なんだ。
自分が素直に望む自分像。
それが本来の自分です。
そのためのキーワードが
人生理念なのです。
言葉というのはやはり
力があります。
言語化することで、常に意識化することが
できます。
その言葉が、反応本音レベルのものであれば
あまり意味はありませんが、
その言葉が、真本音から出されたものであれば、
それは深く自分自身に沁み込みます。
そういったキーワードは
誰もが必ず持っています。
真本音で望む生き方。
それが人生理念。
その言葉をその人が口にする時、
私は、とても心地良い「風」を感じます。
平井さんが、「人間発電所」と呟くと、
それだけで心地良い風が吹くのです。
そういったキーワードを
誰もが持っています。
それを見つけ出すことが、
真本音度合いを高める第一歩となるのです。
つづく