ある暗い倉庫の中で
遊んでいた子どもが
ふと、
外に出たとします。
外は
太陽の光が
注いでいます。
出た瞬間は、
それがあまりにも
まぶしくて、
目を開けて
いられません
でした。
しかし次第に
目が慣れて
きました。
周りを見渡すと
とても気持ちの良い
草原が
広がっていました。
青空と
爽やかな風と
広々とした
大地。
草原はどこまでも
続き、
その子は
大はしゃぎで
走り回って
遊びました。
ふと見ると、
倉庫がありました。
とても小さい。
あぁそうか、
さっきまで
あそこの中に
いたんだ、
とわかりました。
あんな小さな
中にいたんだ、と。
そこでもう一度、
倉庫の扉を開け、
中を覗いて見ると、
真っ暗で
何も見えません。
しかも中は
窮屈で、
空気も淀んで
います。
わぁ、さっきまで
こんな中に
いたんだ、
とびっくりしました。
いや、もう
ここには
戻りたくないなぁ、
と。
ふと、
気配がしたので
その子は
後ろを振り返りました。
すると、
ニコニコした
「家族」が
いました。
あっ、家族だ
と
一瞬でわかりました。
久しぶりに
会えた!
と思いました。
「母親」が
言いました。
「倉庫の中で
何やってたの?
随分と長い間
入ってたね。」
「うん。
あそこが僕の家
だと思ってた。」
「あはは、
何言ってんの。
あなたの家は
あそこでしょ?」
と「母親」の指差す
方向を見ると、
とても大きく、
しかも可愛らしく、
そして居心地良さそうな
建物が見えました。
あぁそうだ。
あそこが僕の
家だった。
僕はいつも
あそこで
寝起きしていた。
とても楽しい
毎日だった。
あっそうか。
僕はあそこで
育っていけば
いいんだ。
暗い倉庫の
中でじっとして
いなくてもいいんだ。
と思い出し
ました。
「父親」が
言いました。
「あの倉庫の中で
何をしていたんだい?」
「う〜ん。
何をしていたんだっけ?
なんか大切なことを
していたような・・・。
あっそうか。
探し物を
していたんだ。」
「見つかったのかい?」
「ううん。
そういえばまだ
見つかってないや。」
「それは
見つけた方が
いいものかい?」
「・・・そうだなぁ。
見つけた方が
いいかな。」
すると、
「兄弟達」が
言いました。
「そうなんだ。
じゃあ僕らも
手伝おうか?」
「ほんと!?
それは嬉しいなぁ。」
「そうしよ、そうしよ、
一緒に探してあげるよ。」
「わ〜い!
そうしよう!」
「兄弟達」は
その小さくて
暗い倉庫の中に
一緒に入りました。
最初は
暗くて何も見えなかった
けれど、
やはり中に入れば
暗さに目が慣れて
きます。
「兄弟達」は
協力して、
探し物をしています。
その子は、もう
知っています。
今のこの倉庫は
僕の本当の家ではない、
と。
しかし今の僕には
とても大切な場所で、
ここでしか
見つからないものが
あると。
でも、
ここで見つけたいものを
見つけられたら、
再び
外に出ることが
できる、と。
そして、外には
僕の本当の「家」が
ある、と。
その子はそれを
思い出しました。
だから、
あえてこの倉庫の
中にいる
意味も意義も
わかります。
しかも
「兄弟達」も
今はいます。
すると、
この倉庫が
より愛おしくなって
きました。
倉庫よ、
ありがとう!
そんな気持ちに
なってきました。
・・・・・・
真本音の人生を
歩き始める、
というのは、
そんなような
ものですね。
つづく