頼らなくてよかった

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心の中に

濁流がある。

 

激しい水の流れは

私を呑み込んだ。

 

私はこのまま

流されていくのか?

 

とも思うのだが、

 

私はただ

襲いかかる濁流を

見つめ続けた。

 

目の前に

長く張り出した

大樹の枝があった。

 

恐らく

これにつかまれば

濁流からは

逃げられるだろうな、

と思うのだが、

 

私は決して

それには

手を伸ばさなかった。

 

私は何の抵抗も

なく、

 

しかしただ

毅然として

 

濁流を見つめた。

 

濁流は

凄い勢いで

私を流そうとするのだが、

 

しかし

私は流れなかった。

 

なぜ私は

流れずにいられるのだろう?

疑問に思いながらも、

 

私は毅然と

そこに

立ち続けた。

 

そのうちに

先ほど枝を張っていた

大樹が

濁流によって

流された。

 

あの時あの枝に

頼っていたら

私も一緒に

流されたんだな、と

わかった。

 

うん。

 

流されるなら

流されるで

いい。

 

でも私は

ここに立ち続けると

決めている。

 

決めているのに

流されたら、

それはそれで

そこまでだった

ということさ。

 

そんな、ある種

呑気な気持ちで

私はまた

濁流を

見つめ続けた。

 

濁流は

まるで何匹もの

飢えた狼のような

激しい表情で

私に吠えた。

 

でもやはり私は

ただそれを

あるがままに

正面から見つめた。

 

そしてついに、

 

ある瞬間に

私はわかったのだ。

 

私はもう

ここからは

流されないな、と。

 

どのような流れが

私を襲っても、

私はきっと

このままだろう、と。

 

そう思えた瞬間から

濁流達が

可愛らしく観えた。

 

私自身は

とても楽になった。

 

「安易な道」

「楽な道」

似ているようで

まったく違う。

 

本当に「楽な道」を

見つけ出すには

 

覚悟と決意が

必要だ。

 

自分の足で

立ち続けようとする

意志が必要だ。

 

大樹の枝に

つかまるよりも、

 

自らの足で

立ち続ける方が

 

楽だった。

 

安易な道に

行かなくてよかった。

 

つづく

 

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