無限の幹だった

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どうやら

深い森の中心に

私はいるようだ。

 

そこには

巨大な一つの

幹があった。

 

「大樹」と言えば

よいのだろうが、

 

それはあまりにも

大きくて、

見上げても

遥か上空まで

幹しか見えない。

 

この幹の周りを

人が手を繋いで

囲むとしたら、

 

いったい何人、

いや何十人の人が

必要だろうか。

 

そんな巨大な

幹だ。

 

私はただ

茫然とそこに

佇んでいた。

 

先程から

幹から何かが

伝わってきている。

 

何か

メッセージのような

ものか。

 

私は

あまりに神聖なので

近づき難いその幹に、

 

思い切って

近づいてみた。

 

体が痺れる

くらいの波動。

 

右手で

その幹に

触れてみる。

 

瞬間、

 

私の中に

同じ幹が生まれた。

 

思わず私は

その幹を

ハグする。

 

いったい、

目の前にある幹を

ハグしているのか、

それとも

私の中に生まれた幹を

ハグしているのか、

 

区別が

つかなった。

 

私は幹に

吸い込まれた。

 

目の前の幹

なのか、

自分の中の幹

なのか、

 

またもや

区別がつかない。

 

そんなことは

どうでもいいや、

という気になった。

 

そしてしばらくすると、

自分と幹の区別すら

つかなくなった。

 

私の意識は

遥か上空まで

伸びていた。

 

そして

思わぬことを

口走った。

 

まだまだ

細いな。

 

この幹のことか?

 

う〜ん、

まだまだだな。

 

確かに幹は

無限へと

伸び続けている。

 

そこに

終わりはない。

 

しかしあまりにも

それは

細いのだ。

 

ついさっきまでは

あんなに巨大に

見えたのに、

 

今は、

一本の細い糸

のように見える。

 

でも私は

この幹を

守っていかねば

ならない。

 

育てて

いかねば

ならない。

 

本来の太さを

取り戻すまで。

 

無限の

さらにその先を

突っ切るまで。

 

幹は

まだ未熟だ。

 

しかし

幹には

無限の可能性が

秘められている。

 

つづく

 

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