始まりの思い出

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波が迫り来る

海の

深みへ深みへと

向かって行く。

 

どんどん

深くなるのに、

底はずっと

見えたまま。

 

波の圧は

凄いのだが、

それに怯まずに

進む自分がいる。

 

行手は

大海原だ。

 

どこに向かうのか

何をしようと

しているのか

 

何もわかって

いない。

 

ただ、

まるで波に

逆らうかのように

進む。

 

海水を

何度も飲み込み

ながら、

溺れそうになる。

 

それでも

進みを止めようと

しない。

 

なぜに?

 

考える余裕も

ない。

 

ただ、進む。

 

ふと

見ると、

 

私の目の前に

私の背中が

見える。

 

必死に進む

私自身の

背中。

 

横波が来た。

 

溺れそうに

なる。

 

私は

背中の私を

咄嗟に支えた。

 

瞬間、

私は

支えられた私

になる。

 

後ろから

私を支える

何者かがいる。

 

それが誰か?

考える余裕も

ない。

 

それでも

前に進む。

 

私は

支えられる私

になったり、

支える私

になったり。

 

海は

ますます

深い。

 

波は

ますます

荒い。

 

でも

底は見える。

真透明な

海。

 

ふと、

 

何かが

わかった

気がした。

 

あぁこういうことか、

と。

 

私はその時、

人間であることを

あきらめた。

 

あきらめたら

海に

沈んで行った。

 

そして私は

人間に

なれたんだ。

 

つづく

 

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