いじけ虫へ

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こんなに明るい
場所なのに、

暗く
閉ざされている。

いじけ虫。

ウジウジと
いじけ続ける。

光が
眩しすぎる。

だから
目を閉じた
まま。

耳を塞ぎ、

感受性の
すべても
閉ざしたまま。

決して
その狭い世界から
出ようとしない。

もう
くさってしまった
から。

人間、
一度くさると、
そうそう簡単には
出られない。

もう一生、
このままで
いい。

とすら
思う。

もう、人生に
疲れたのだ。

生きていく
こと自体に。

だから
誰に何を言われても、

もう絶対に
耳を貸さない。

頑なに
自分を閉ざす。

いじけ虫。

・・・

いじけ虫の
世界の中に
入ると、

何となく
守られている
感覚がある。

なるほど、

これがあるからこそ
出られなく
なるんだな。

しかも世界は
奥に奥に
続いているから、

外部から強引に
近づけば、

さらに奥へ
奥へと
逃げてしまう。

逃げることのみ
俊敏だ。

・・・

これまで
何度も何度も
私自身が
いじけ虫になった。

その都度、
何度も
自分の中では
我が人生を
捨てた。

捨てたのに
なぜだか
今は
ここにいる。

なぜあの世界から
抜け出せたかは、
わからない。

誰かに
救ってもらえたのか
とも思うのだが、

ちょっと
違うようだ。

・・・

ある時から
私は、

いじけようと
思っても
いじけられなく
なった。

その
寂しかったこと!

その
不安だったこと!

まるで
逃げる場所を
失ったように。

夢の中で、
かつてのいじけ虫の
私と会った。

彼は
何も見ていなかった。

目の前に
私がいるのに、
それに
気づいていなかった。

私は彼の
背中に
手を当てたのだが、

無反応だった。

・・・

心の中に
台風があった。

凄まじい勢いで、
心のすべてを
壊そうとしていた。

台風に呑まれ、
必死に
逃げた。

逃げることに
俊敏ないじけ虫も、

台風には
かなわなかった。

その台風は
自ら起こしたもの
だったから。

他者が与えた
ものではなく。

・・・

いじけ虫。

今、
私の目の前で
いじけているあなたを
見ていて、

やっと
わかったよ。

台風とは
唯一の
救いだった。

あなたは
台風を創り出そうと
しているのだな。

それは
キツいことだが、

それしか
ないのだな。

私に
あなたの台風を
創ることは
できないが、

台風の創り方
なら
わかるよ。

必要なら、
教えようか?

つづく

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