未来に向かうのではなく

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スーッと
一本だけ
ロープが
垂れている。

ここを
登るしか
ない。

他は
何もないのだ。

ここから
脱け出す
には。

であれば、
躊躇している
暇はない。

すぐにでも
ロープに
飛びつく。

しかし
たった一本の
細いロープを
腕力だけで
登るのは
キツい。

どう考えても
あんな高さの
出口に
たどり着けるとは
思えない。

でも
他に方法が
ないのだ。

迷っている
暇はない。

勢いで
ロープに
飛びついた。

強引に
登っていく。

本当に
強引だ。

案の定、
すぐに
疲れ果てた。

せっかく
いくらかは
登ったのに、

ズズズッと
ずり落ちる。

しまいには
地面まで
落ちた。

結局
最初にいた
場所、
地面に。

もう
体力は
残っていない。

でも
出口に行く
には
このロープしか
ない。

どうする、
俺?

何か
知恵は?

・・・ない。

知恵が
出ないなら
行くしかない。

もう一度、
ロープに
飛びつく。

しかし
先ほどよりも
もっと早く
落ちた。

もはや
体力は
残っていない。

時間は
ない。

諦めるか?

・・・

普通であれば
もう
間に合わない。

間に合わせる
のは
あきらめて、

それでも
何度も
何度も
挑戦する。

期限には
間に合わずとも
それでもずっと
挑戦しているうちに、

随分と
日にちはかかったが
ついに
ロープを
登り切ることが
できる。

・・・これが
通常の
人生だ。

私達は
何度も
期限に間に合わない
という
体験を続けた。

それでも
登り続ける
うちに
力をつけた。

この地道さが
人生だった。

・・・

・・・が、

ロープを
登らずに、

あの
高い場所にある
出口を
こちらに
引き寄せる、

吸引する、

という
方法が
実は
あったのだ。

もちろん
普通では
ない。

反則技
かも
しれない。

それでも
あったのだ。

未来に
向かうのでは
なく、

未来を
ここまで
吸引する
唯一の
方法が。

もう、
間に合わなかった、
では
済まされない。

それが
今。

ならば、
吸引するしか
ないでは
ないか。

つづく

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