ずっとそばにいるんだよ

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少年が佇んで

川を見つめていた。

 

太陽が沈み、

日が翳り、

少年の表情も

もうすぐ

見えなくなるだろう。

 

だから私は

今のうちに

彼の横顔を

じっと見ることにした。

 

私は彼の

横顔が

好きだった。

 

少年は

私から見られているのを

まったく気にもせず、

 

ただ

川を見つめ続けた。

 

少年には

夕日の赤が

よく似合った。

 

これから

人生に繰り出して

行くはずなのに、

 

まだまだ

スタートラインから

それほど進んで

いないのに、

 

なぜか彼には

夕日の赤が

よく似合った。

 

悲しげな

表情が

似合っていた。

 

君はここまで

いったい

何を見てきたの?

 

そう

問いかけたく

なるのだが、

 

いつも私は

口をつぐんだ。

 

彼の悲しげな

顔の

その一枚奥には、

 

とてつもない

意志を

感じるからだ。

 

何をどう

話しかけても、

少年のその意志を

汚してしまう

気がした。

 

だから私は

じっと彼を

見つめるだけに

した。

 

少年は

佇んでいた。

 

夕日の赤が

とてもよく

似合っていた。

 

・・・・・・

 

彼はきっと

何も知らないのに、

すべてを

わかっていた。

 

これまでの

彼の歩みに

降りかかってきた

ことも。

 

これから彼の身に

起こるであろう

未来も。

 

自分だけでは

ない。

 

他人の痛みも

喜びも

すべてを

彼はわかっていた。

 

なぜ自分が

また

ここにいなければ

ならないのか。

 

それを見つめる時、

どうしても

その悲しげな顔に

なってしまう

という

その事実さえも

彼はよく

わかっていた。

 

少年の目に映る

その川と、

彼は自分の区別が

ついていないのだろう、

私は思った。

 

彼は

川であり、

そして

彼は彼で

あった。

 

その、

誰も感じることのない、

悲しさを

彼は確かに今、

感じているのだろう。

 

それがわかる分だけ、

私は彼に

何もできないでいた。

 

・・・・・・

 

少年の意志の

強さを、

私は恐らく

誰よりもよく

知っている。

 

だから私は

少年と共に

いる。

 

少年の隣に

立ち続けている。

 

私は彼を

支えるのだろうか?

 

いや、きっと

支えなくとも

彼は

歩んで行くのだろう。

 

私は

祈ればよいのか?

 

彼のために

祈り続けるだけで

よいのか?

 

恐らく彼は

それすらも

望んでいないだろう。

 

大人になった彼は

きっと

私の存在に

気がつき、

 

きっと笑顔で

私に言うのだろう。

 

ずっと

そこにいて

くれたんだね。

 

ありがとう、

と。

 

その日が来るまで

私は、

ただそっと

彼の隣に

立ち続けよう。

 

つづく

 

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