木村さんと弓江さんの
二人コーチング。
一人のコーチ(つまり私)が、
二人を同時にコーチングします。
これがチームコーチングの
基本です。
私はまず、あえて弓江さんに問いました。
「弓江さん、
最近の新規事業プロジェクトの様子は
いかがですか?」
思った通り、即座に答えが返って来ました。
「止まってます。」
えっ?という意外な表情を
木村さんがされました。
スタートから面白い展開になりました。
面白いので私はあえて
木村さんに振りました。
「止まってるんですか?」
「えっ? いや、あの・・・。」
木村さんは動揺を隠しませんでした。
実は、新規事業プロジェクト自体は
順調に進んでいることは私も聴いていました。
ですが、弓江さんがそのように答えるということは
それとはまた違った視点からの
見え方があるのでしょう。
それをそのまま弓江さんに質問すればよいのですが、
ここがチームコーチングの面白いところ。
あえて、木村さんに振ったのです。
それにより、
一人一人の個別コーチングとはまた違った
展開が生まれます。
その展開こそが、
個別コーチングでは決してたどり着けない
何らかの気づきや答えに行き着きます。
「私は止まっているように思えないのですが、
なに、・・・今止まってるの? どこが?」
と木村さんは弓江さんに問いました。
すでに二人の会話が始まりました。
弓江:「えっ? 止まってますよぉ。」
木村:「どこが?」
弓江:「わからないんですか?」
木村:「・・・わからないよ。進んでるでしょ。」
弓江:「じゃあ逆に訊きますが、
何が進んでいるのですか?」
木村:「実績も出始めているし、
決めたことはみんなやるし。」
弓江:「誰が決めてるんですか?」
木村:「えっ? そりゃ俺が決めてるよ。」
弓江:「でしょ?
木村リーダーが決めていることを
みんなやってるだけじゃないですか。
それのどこが進んでるんですか?」
木村:「どこって・・・。」
やはり予想通り、
弓江さんが木村さんを責める状態となりました。
恐らく、木村さんが最も嫌な展開なのでしょう。
ここで私が割って入りました。
「弓江さん、
弓江さんにとって、進まない、というのは
どういうことですか?」
「進歩がない、ということです。
同じレベルのことを、ただダラダラとやり続けることです。」
「今は、そう見えると?」
「はい。
みんな、木村が言う通りのことしか行なっていません。」
ここで木村さんが何かを話そうとされましたが、
あえて私はそれを止めました。
「もう少し、詳しく教えていただけますか?」
「はい。以前はみんなでいろいろな意見を
出し合ってたんです。
もちろんすべてが手探り状態でしたから、
意見を出し合わなければ進めないという
ところもありました。
でも今は、いろんなことが軌道に乗り始めて、
会議をしても、木村リーダーがほぼすべてを決めて、
メンバーはそれを実行するだけ、になっています。」
「それはあまり良いことではないと?」
「だって、木村さんはそういうチームを創りたいのでは
ないでしょう?
みんなが主役になって引っ張っていくチームにしたいって
言われていたじゃありませんか。
今はみんな受け身です。」
ここで木村さんに振りました。
「木村さん、いかがですか?
今の弓江さんの見方については?」
「う〜ん、確かにそうかもしれないが、
今はみんなで発想するよりも、
決めたことを確実に実行することが
大事だと思っていますし・・・。」
どうも木村さんは、弓江さんを前にすると
発言が弱腰になります。
この弓江さんからの発言は、恐らく
今の木村さんや新規事業プロジェクトにとって
本質的な提言でしょう。
テーマとしては重要だと感じました。
が、あえてここで、
展開を大きく変えます。
「では、この件はとても重要そうなので、
後でゆっくり話し合ってみましょう。
もう一度、最初の質問に戻りますが、
木村さん、
木村さんから見た最近の新規事業プロジェクトの
様子はいかがですか?」
「はい。
実績が上がって来たのは順調だと思いますが、
本当に真剣な人とそうでない人の差が
出始めていますね。」
この言葉を聴いて、
これは面白い! と私は思いました。
恐らく、ここまでの弓江さんとのやりとりがなければ
出てこなかった発言かもしれません。
しかもこの彼の着眼点は、
弓江さんの提言と後々に統合しそうです。
これこそ、チームコーチングの
醍醐味です。
つづく
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