ある中小企業の経営幹部の中原さん(女性)。
彼女の生まれ持った強みを掘り起こすために、
私は中原さんに「自己中心に振る舞うこと」を
ご提案しました。
いつも周りのことを思いやり、
自分の意見よりも、周りの人達の気持ちを尊重しながら
会社を切りもりしてきた中原さん。
そんな彼女にとって「自己中心になる」ことは
非常に不慣れなことであり、難易度の高いことでした。
・・・はずだったのです。
ところが、2週間後にお会いした中原さんは開口一番
「たけうちさん、案外、いい感じでした。」
とニッコリ。
話を聴くと、彼女は次のように報告してくださいました。
最初から完全に自己中心になることは難しかったので、
まずは自分の意見を、ほんの少しだけ
自分の伝えたいように伝えてみたそうです。
すると、社長も社員もみんなが、何の抵抗もなく
聴いてくれたそうです。
次に、これまでは相手の顔色を伺いながら、
自分の対応の仕方を変えていたのですが、
相手の状態に構わずに、自分のその時やりたい
振る舞いをする、というのを試してみたそうです。
ところがそれをやっても、誰からも何の文句も
返ってこない。
それどころか、自分の言うことを素直に
受け取ってくれる。
あれ?と思いながらも彼女は徐々に、
自分の感情を素直に表現するようにしてみました。
例えば、ちょっと腹が立った時には、
「ちょっと怒ってるよ」と伝えてみたそうです。
それでも皆は素直に受け止めてくれる。
だんだんと中原さんは
自分のストレスが減っていくのを感じたそうです。
と同時に、逆にこれまで
いかに自分がストレスを生じさせながら
社員さん達と関わってきたかに気づいたようです。
「でも・・・」
と中原さんは少し表情を曇らせながら言いました。
「でもこのままで本当に大丈夫でしょうか?」
私は、尋ねました。
「今の中原さんの自己中心の度合いは
何%くらいだと思いますか?」
「そうですねぇ。
30%くらいは自己中心でいると思います。」
「それ、何%くらいまで上げたいですか?」
「えっ?さらに上げても大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。
もっともっと良い関わりができるようになりますよ。」
「・・・では思い切って、
60%くらいにしてみようかな。」
そして、・・・
さらにまたその2週間後のコーチング。
そこでお会いした中原さんは
明らかにこれまでとは雰囲気が違っていました。
ピンと筋が通ったような、毅然とした雰囲気。
しかも表情が明るい。
彼女は言いました。
「たけうちさん、私もう100%自己中心かも
知れません。」
つづく
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