木村さんと弓江さんの二人コーチングに
話を戻しましょう。
弓江さんは、
脱皮を果たしました。
弓江さんが脱ぎ捨てた古い皮は、
「正義」
でした。
そしてそれを手放した直後に彼女は
「私が皆を引っ張る」
という覚悟を持ちました。
彼女は言いました。
「私にしかできないことが
ある気がします」と。
その一言を聴いた瞬間に、
今度は木村さんの脱皮が
一気に進んだのを私は感じ取りました。
「木村さんも今、
もうほぼ脱皮を完了したようですね。」
「あぁ、そうですよね。
何となくわかります。」
「木村さんが脱ぎ捨てようとしている
古い皮は、今、実在レベルでは
どのような状態だと思いますか?」
「ほとんど脱げましたが、
私の右腕に脱いだ皮がまだ
こびり付いています。
右腕がとても重いです。」
「木村さん、よく観察してください。
その右腕についている皮は
いったい何でしょうか?」
木村さんは目を閉じて
右腕に集中しました。
そして、
「あの、・・・これでしょうか。
“我が想い”という言葉が浮かんできますが。」
「へぇ、面白いですね。
“我が想い”を脱ぎ捨てるのですか。
“我が想い”というと、真っ先に思い出すことは
何ですか?」
「売上を当初の目標の1.5倍上げてやろう、
という私の気持ちを思い出します。」
「木村さんは今、
それを手放そうとしているんですね。」
「いや、・・・それはまずいと思います。
それを手放してしまったら、
目標達成できなくなる気がします。
今のモチベーションも消えてしまう気がします。」
「本当にそうですか?
一度、手放してみてはいかがですか?」
「いや、しかし・・・」と、
しばらくの時間、
木村さんは拒んでいました。
しかしどうにも右腕が
重くなってきました。
「いやぁ、もう右腕が不快で
しょうがないです。」
「やはり木村さんは、その“我が想い”を
手放したいのでしょ?」
「そうなんでしょうか。
・・・いやぁ。でも、もう嫌だなこの感じ。」
「思い切って手放してしまっては?」
「ちょっと怖いですが、
どうもそうするしかないようです。
わかりました、手放します。」
「どのように手放します?」
「・・・自分でやります。」
そう言って木村さんは、
自身の左手で、右腕にこびり付いているものを
ベリッと引き剥がすようにしました。
その瞬間、
フッと私も、体が軽くなった感覚を得ました。
「できたような気がします。」
「そうですね。できましたね。
どうですか?
“我が想い”を手放した感じは?」
「いや、なんか、いたって普通です。」
「売上1.5倍については、
いかがです?
どう思いますか?」
「あぁ・・・、不思議です。
さっきまで、結構、自分は自然体で
売上1.5倍をやろう、と思えていたつもりでした。
でも今、さらに力が抜けました。
いや、力が抜けるというよりも
力を入れようが入れまいが、どうでもいいような・・・。
だって、達成するのは当たり前のような
気がするんです。
やることをやるだけ。
達成するのが普通のこと。
そんな感じがします。」
その時私は感じました。
木村さんはニュートラルに淡々とした
表情になっていたのですが、
その奥に、とてつもないパワーが
宿っていることを。
あぁこれは、
本当に物事を成し遂げる人の空気感だ
と思いました。
何の気負いもなく
淡々と凄いことを成し遂げていく
深いパワー。
これこそが、
木村さん本来の空気感であると
私は確信しました。
つづく
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