ここから出たい

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ものを言わぬ

人。

 

じっとこちらを

見ている。

 

まるで亡霊の

ような。

 

しかしそれは

紛れもなく

その人の実在。

 

ただ寂しそうに

こちらを

見つめている。

 

私はその

無表情の中に

本当の表情を

探そうとする。

 

私の解釈は

すべて手放し、

 

ただその

無表情に

透明な意識を

向ける。

 

と同時に、

様々な想い、

つまりは

恐らくその人の

と見られる想い達が

 

ダイレクトに

伝わってくる。

 

それは最初

言葉にならぬもの

であるが、

 

こちらの感覚

にすらなる前に、

 

私の目から

ツーっと

涙がこぼれた。

 

その後だ。

 

この人は今、

とても苦しんでいる

認識したのは。

 

何か

苦しい目に遭った

のではない。

 

それであれば

むしろ

わかりやすいだろう。

 

その苦しみは

自らが

日々、着実に

招いているもの。

 

その苦しみは

自らを

小さな枠の中に

無理に、強引に

閉じ込めようとする

その生き方に

よるもの。

 

ということが

わかった。

 

あえてそれを

言葉として

表すならば、

 

「ここから出してくれ」

 

だろう。

 

人は

自分で自分を

閉じ込める。

 

そして実は

その苦しみが

ひょっとすると

私達にとって

最大のものかも

しれないのだ。

 

これは、

コーチングでは

ないな、と。

 

「サポート」の

範疇ではないな、と。

 

この人は

「ヘルプ」を

求めている。

 

無表情のまま

ヘルプを。

 

私はその

能面のような

顔の奥に、

 

阿鼻叫喚を

感じ取り、

 

またため息を

ついた。

 

こんな人が

今、

本当に

増えている。

 

つづく

 

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