掴みたい

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川の下流に
光が見える。

泳いでそれを
掴もうとする。

しかし
光は逃げる。
さらに下流に。

それをまた
必死に追いかける。

泳ぎに泳ぐ。

その内に
泳ぎ方が
板についてきた。

最小限の労力で
最大のスピードを
出す泳ぎ方が
わかってきた。

にも関わらず
光には
追いつけないのだ。

泳いでも
泳いでも
追いつかない。

それでも
光に
真一文字に
ついていく。

で、
ふと気がつくと

海に出ていた。

大海原。

上流も下流も
ない。

どこに行くのも
自由。

あまりに
広々とした
世界なので、

逆に
恐怖に襲われる。

でも、
泳ぐ力は
それなりについた。

もちろん
川での泳ぎ方と
海での泳ぎ方は
異なるだろう。

でも
泳ぐ、という行為
そのものについては

その本質は
もう
身についている
実感がある。

これまでの泳ぎが
通用しなくなる
かもしれないが、

でもやはり
私はさらに
先に行こう。

光はまだ
見えるのだ。

どこに行くのも
自由だが、

やはり私は
あの光を
掴みたい。

この気持ちが
続くうちは。

光は
どこに行くのか?

わからないが、
ただわかるのは

私はあの
光を掴みたい。

光は先に
進む。

私を導く
ように。

このまま私は
導かれようでは
ないか。

つづく

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