死ぬだろうな、と悟りかけた時

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大荒れの
海を
船が
漂っている。

今にも
転覆しそうだ。

あぁあれに
私は
乗っているのだな。

生きるか死ぬか
という
状況にいるのだな。


よくわかる。

近づいてみると、
そこにいる私は
もはや
船の操縦は
諦めたようだ。

それどころか
立っていることすら
できない。

必死に船に
しがみついて
いる。

自力では
どうしようもない。

人事を超えた
状態。

なるように
しかならない
状態。

そうか
だから私は今、
ここから
すべてを眺める
ようになれたのか。

自分を真に
客観的に眺める
ためには、
これほどまでに
追い込まれないと
いけないのか?

しかしせっかくの
機会なので、
私は私を
よく観察してやろう。

もしこの後、
奇跡的に
生き延びることが
できたとして、

今のこの状態を
記憶している
可能性は少ないが。

この航海は
最初から
難しいものだと
わかっていた。

誰も理解して
くれなかった。

それでも私は
何かに
取り憑かれたように
この航海に
出発した。

そして案の定、
こんな目に
遭っている。

自業自得だな、
と思う。

他の誰をも
連れてこなくて
よかった。

犠牲は
私一人でいい。

しかしこの
自己満足とも言える
航海で、
自業自得で
死んだとして、

いったいそれに
何の意味が
あるのだろう?

誰も
喜ばないし、
私自身も
これで本当に
後悔なく人生を
終えることができるのか?

いったい何を
やっているんだろう?

どうしてここまで?

と、
必死に船にしがみついている
私に私は
問うた。

するとなんと、
必死のはずの
私が
私の方を向いた。

意識してか
無意識にか、

まっすぐ
私の方に
目を向けるのだ。

何を
信じているのだ?
この男は。。。

と、
私は呆然と
した。

ここにいるのは
誰だ?

本当に
私なのか?

私は
何者なのか?

お前、
そのまま
見ていろ。

・・・と
その目は
語っていた。

自力の作用
しない状況。

もう何も
できない状況。

委ねるしか
ない状況。

その中で
まっすぐに
何かを見つめている。

その時、私は
初めて、

自分を
信じる気持ちに
なれたんだ。

つづく

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