簡単なことを難しく言うのは
頭の悪い証拠である、
・・・とよく言われます。
確かにそうだなぁ、と
よく思います。
物事は本当に目を凝らしてよく観察すれば、
ほとんどのことが、シンプルです。
本質とは、シンプルです。
シンプルなのが、本質です。
私達の真本音は、
何も迷っていません。
すべての答えを
最初から知っています。
しかし私達は迷います。
わかっているのに、なぜ迷うのか?
そこにはシンプルな答えが
あります。
新規事業プロジェクトリーダーの木村さんは、
あるコーチングの冒頭で私に
次のように言われました。
「たけうちさん、
私、プロジェクトリーダーを辞めようと
思います。」
「えぇ? どうされたんですか?」
「なんか、もういいかなぁ・・・、と思って。」
そう言って彼は、ガックリと肩を落としました。
私は彼の話を詳しく聴きました。
要約をすると、・・・
プロジェクトメンバーの中に
弓江さん(仮名)という女性社員さんがいます。
20代後半の落ち着いた雰囲気の人です。
弓江さんはいつもはっきりと
意見を言うそうです。
その意見のほとんどは「正論」で、
確かに正しいのですが、時には正論過ぎて
他の社員さんの反発を買ってしまうことも
過去には何度かあったようです。
行動力はあるし、ブレないし、
仕事の能力もあるので、
木村さんとしてもかなり信頼しているのですが、
「何しろ、ちょっとキツイんです」
と、よく苦笑いされていました。
新規事業自体は順調に推移し、
売上も実際に立ち始めており、
このまま行けば、あと2〜3ヶ月もすれば
利益も出始めるだろう、という目処が立っていました。
そんな中で、あるお客様からの
クレームが入りました。
その対応は木村さん自身が行ないました。
その対応によってお客様は納得されたのですが、
弓江さんは、木村さんのその対応について
「甘い」と言われたそうです。
それが始まりでした。
それ以降、木村さんの様々な判断や言動に対して
弓江さんは意見を言うようになったそうです。
最初は木村さんは、できるだけ丁寧に向き合い、
弓江さんの意見を聴き、自分の意見も言い、
しっかりとコミュニケーションをとってきたのですが、
新規事業が軌道に乗り、かなり忙しくなってきた時点で、
そういったことが時間的に難しくなってきたそうです。
ところが、弓江さんから木村さんへの
「攻撃」は、さらに頻度と強度を増していきます。
「攻撃」とは、木村さんの言葉です。
木村さんはある時から、弓江さんからの意見を
「攻撃」であると感じるようになったのです。
そして、ある出来事が起こります。
会社のある飲み会で、
木村さんはプロジェクトメンバーの若手社員を
叱らなければならない状態となりました。
その飲み会では、
一緒にパートナーを組んでいる関係会社の人達も
参加されていたのですが、
その若手社員さんの関係会社の人への態度が悪く、
それを木村さんは叱ったのです。
「いくら飲み会の席だと言っても、礼節をわきまえろ!」
と。
ところが、その若手社員さんが少し反論をしました。
それに対して、木村さんはかなり強く
言葉を発したようです。
その場面を、弓江さんは見ていました。
そして、次の日に弓江さんは、
木村さんの上司である平井さんのところへ行き、
「あれはパワハラである」
と訴えたのです。
「あのような人間性のリーダーのもとで
働くことはできません」
とまで言われたそうです。
もちろん平井さんは直接、木村さんからも
事情を聴きましたし、
実際にお叱りを受けた若手社員さんからも
話を聴きました。
若手社員さん自身は、
「自分がいけなかったです」と反省していたようです。
話によると、
弓江さんは新規事業プロジェクトチームに入るまでは
このように強く意見や不満を言うことはなかったそうです。
しかしなぜか、
木村さんの部下になってから、彼女のそういった特性が
顕著に出始めたようです。
会社は、弓江さんにとても期待をしています。
次世代の経営幹部だという見方もしていました。
だから新規事業プロジェクトメンバーに抜擢されましたし、
それは木村さん自身もよくわかっていました。
「確かに彼女は有能です。
間違いなく私より仕事はできるでしょう。
しかも、本来は不満を言うような人ではありません。
でもなぜか私といると、彼女はキツくなります。
本来の彼女ではない反応本音の彼女が出てしまうんです。
であれば、いっそのこと、私が引いた方がいいかな、と
思いまして。」
この言葉を聴いた時、
私は心の中で、「あぁここで、出たか・・・」
と思いました。
そうです。
木村さんの、心のクセです。
これは、木村さんの心のクセを浮上させ、
それを超えていくチャンスであると
思いました。
なぜ弓江さんは、
木村さんと一緒に仕事をすると、
そんなにキツくなるのか?
その答えは、
実にシンプルなのです。
つづく