丘の上の風の中で

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丘の上に立って

街と海を

見降ろしている。

 

私の傍には

仲間達がいる。

 

今、初めて

この丘の上に立った

仲間も何人か。

 

初めての彼らは

皆、

茫然としている。

 

「こんなに

荒れていたんですね・・・。」

 

その現実を

受け止め切れない

ようだ。

しかし、

懸命に受け止めようと

している。

 

「そうなんだ。

びっくりした?」

 

「・・・・・。」

 

「どうする?

どうしたい?」

 

「・・・・・。」

 

「自分で決めれば

いいよ。」

 

「・・・・・。」

 

風は心地良い。

 

こんなに心地良いのに

随分と

荒れてしまったな。

 

「でもな、

これでも随分と

回復したんだよ。」

 

無言でいた

彼らが

やっとポツリと

呟く。

 

「・・・もっと早く

ここに立てば良かった。

私が不甲斐ない

ばかりに・・・。」

 

「まぁな・・・。

でも、今、ここに立てたぞ。

さぁ、立った以上は

決めるんだ。

どうする?」

 

「ここに立って

こうしてすべてを

見渡せた今、

これを見なかったことには

できません。

ここに立つ者としての

責任があります。

私は望んでここまで

来たのです。

時間はかかりましたが・・・。

ようやく辿り着いた

のです。

だからもちろん、

一緒に私もまいります。」

 

「もうわかってると

思うが、

大変だぞ。」

 

「はい。

わかっててここまで

来ましたから。」

 

「でも実際に見ると

怖気づくだろ。

正直なところ。」

 

「・・・はい。

ビビりました。

・・・でも、

行きます。」

 

「なんだかんだ言って、

強くなったな。」

 

私はもう一度、

海の方を見た。

 

「では、そろそろ

行こうと思うが、

その前に一つだけ

みんなに伝えておこうかな。」

 

私は次に

街を見た。

 

そして、

そこにいる

皆を見た。

 

「無茶をするな、

と言ってもみんなは

勝手に無茶をするんだろう。

自分の意思で

来たんだから、

これからも自分の意思で

やってもらえればいい。

だが・・・、」

 

「わかってますよ。」

 

と、

彼らが言葉を

引き継いだ。

 

「困ったときは

私を頼れ、でしょ。」

 

「ふっふっふ、違うな。

君らはもうちゃんと

私や仲間に頼ることも

できるじゃないか。

自分の命の意味を

わかっているじゃないか。

今さらそんなことは

言わんよ。」

 

皆、少しキョトンとした。

 

「私が言いたいのは

たった一つだ。

どうせやるなら、

もっと好きにやれ!

だ。

どうせ無茶するなら、

無茶を超えろ!

だ。

無茶のその先に

あるものを掴め!

だよ。

・・・あっ、3つも言っちゃった。」

 

皆がドッと笑った。

 

「君らはもう

無茶をするかしないか、

の次元にはいない。

その先にすでに

いる。

だからここまで来れた。

そんな自分を

祝福するといい。

そして、

自信を持って

行けばいい。」

 

彼らはニッコリ

笑い、

そして静かに

丘から去った。

 

私はしばらく一人で

風を楽しみ、

腰を上げた。

 

まだ私にも

すべきことがある。

 

もう一山も二山も

越えなければ

ならないが、

ゴールは見えてきた。

 

待ってろよ。

もうすぐ行くぞ、

呟くと、

 

風が静かに

微笑んだ。

 

つづく

 

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