人やチームが脱皮する時に
大切にすべき原理原則の3つ目は、
『物事を深く考えない。
表面上のことだけに目を向ける』
・・・ということでした。
(→前回記事)
私は弓江さんに問いました。
「その原理原則を大切にすると、
これから新規事業プロジェクトが脱皮を
きちんと完了するために、
何が必要だと思いますか?
表面上のことで良いですよ。」
う〜ん、と弓江さんは考え込みました。
すると、木村さんが口を挟みました。
「そういうことで言えば、
さっき弓江が言っていた、
ペアが良くない、
ペアを変えるべき、
ということのような気がします。」
「あぁ、なるほど!」
もともと、新規事業プロジェクトチームが
脱皮をしようとしていることに
気づけたきっかけは、
「ペアを変えるべきではないか」
という検討課題が出されたからでした。
(→【一つになることで、すべてがどんどん晴れ渡っていく】)
新規事業プロジェクトチームは
基本的には二人一組で活動をするそうです。
そのペアの組み合わせが良くないと
弓江さんが直観的に指摘しました。
しかし、二人ともこれまでは
今のペアの組み合わせが最善であると
思っていたのです。
しかしこの二人コーチングの場で考えると、
今のペアに違和感ばかりが出る、
ということでした。
私はその二人の話を聴いて、
なるほど、今のこのプロジェクトチームは
脱皮をしようとしているのだ、
これまで最善だと思っていたことが、
最善ではなくなるんだ、
だから、脱皮のために必要な変化を
ここで起こさなければならないんだ、
ということに気づいたのでした。
そうするとやはり、
「ペアの組み合わせを変える」
というのは、
脱皮のためにも必要なことのように
思えます。
「では、一度、
ペアの組み方を発想してみましょうか。」
「はい、まずは。
それをしないと次の発想が出ない気が
します。」
「これまでのペアというのは、
・お互いの能力が補完できること
・相性がいいこと
を基準にして組んでいたのでしたね?」
「はい。」
「では、これからの基準はどうします?」
しばらく木村さんは
無言でいました。
そして私に何とも言えない不思議な
目を向けてきました。
「たけうちさん、・・・
ちょっとわけがわからないのですが・・・。」
「どうしました?」
「ペアをどう変えようか?と考えようとすると、
富士山が噴火しているイメージばかりが
頭の中に出てくるんです。」
それを聴いて、
弓江さんの目が、
キラッと楽しそうに輝きました。
その二人の様子を見て、
あぁこれは「実在」だな、と私は思いました。
「木村さん、いい傾向ですね。
それは単なるイメージではなく、
木村さんの真本音発想がカタチになった
ものですよ、きっと。
私の言うところの、実在、というやつです。
だいぶ、発想が柔らかくなりましたね。」
木村さんは少し
照れ臭そうに笑いながら言いました。
「でも、イメージは鮮明ですが、
意味がよくわからないのです。」
「じゃあ面白いので、
意味がわからないままで
ペアを組み直してみましょうか。」
「そんなことができるんですか?」
つづく
人や組織が「脱皮」をする時、
平常時とは真逆の原理原則が
働くことがあります。
その一つが、
『不安定をどんどん自分に与え、
しかも無茶をするとよい』
ということでした。
(→前回記事)
さらに、原理原則をご紹介しましょう。
それは、
『未来のことは考えない。
刹那的になるとよい。』
ということです。
脱皮時に、未来のことを発想をしても、
真本音の発想は、
一つも出てきません。
一つも、です。
たとえその時に「これは良いアイデアだ」と
思ったとしても、
脱皮を終えた後で振り返れば、
ほぼ間違いなく、
「どうでもいいこと」に思えてきます。
脱皮の時というのは、
私達は、脱皮そのものに対して
必死になります。
それ以外のことには、
エネルギーをかけないようになります。
ある意味の、省エネです。
特に、未来の発想に関してのエネルギーは
ほぼ、ゼロになります。
そんな状態での発想は、
それこそ悪い意味での刹那的な発想に
過ぎなくなります。
むしろ私は、
脱皮時における未来発想は、
すべて「捨てるべき発想です」と
断言してしまうことも多いです。
ですので、そういったことはやめて、
「今この場をこなすこと」
のみを考えればよいのです。
前回、私は
「脱皮時こそ、自由発想しよう」
ということを書かせていただきましたが、
その自由発想とはあくまでも、
「今、どうするか?」
ということに関する自由発想である
ということになります。
要するに、
「今」
に集中するのですね。
「今のみ」
に集中するのです。
これが、脱皮時における原理原則の
二つ目です。
さて、
原理原則の3つ目をご紹介します。
これについては、
木村さんと弓江さんの二人コーチングの場面に
戻りましょう。
私はお二人に脱皮についての解説を
しました。
その上で、次のように問いました。
「この二人コーチングの真の目的は、
これから脱皮を迎えようとしている
新規事業プロジェクトチームに対して、
何ができるか?
何をしてはならないか?
を発想することだとわかりました。
そんな視点で、
お二人から何かアイデアはありますか?」
二人はじーっと考えていましたが、
弓江さんが口を開きました。
「せっかくですので、
私は脱皮をするならとことん脱皮をした方が
よいと思うのです。
ですので、新規事業プロジェクトの理念とか
方向性とか、改めてゼロベースで考え直すというのも
面白いと思います。」
これは非常に素晴らしい意見ですが、
実は、
「ゼロベースで考え直す」
というのは、平常時にこそすべきことだと
私は思っています。
私は、本当のリーダーとは、
常に、あらゆることをゼロベースで発想し直す人である
と思っています。
ゼロベースからの発想は
非常に意義深いものが多いです。
しかしそれは
平常時にこそ、毎日続けることです。
では、脱皮時はどうでしょう?
脱皮時の原理原則の3つ目は、
『物事を深く考えない。
表面上のことだけに目を向ける』
ということなのです。
つづく
木村さんと弓江さんの二人コーチング。
このままでは新規事業プロジェクトはダメになる、
という二人の危機感が
実は、根底にあることが明らかになりました。
そして、それを打開するためには、
根本的改革よりも、もっと簡単な何かを変えることが
重要である、
ということがわかりました。
(→前回記事)
「で、その方策は、
そろそろ弓江さんの中から
出てきそうですよ。」
「えぇ? 私からですか?」
私達は「一つ」になっていました。
そうなるともう、次に誰から発想が出るか?が
手に取るようにわかるのです。
私は弓江さんから、
「答えがわかりました」という空気感を
受け取っていました。
だから弓江さんに振ったのです。
「弓江さん、まずは表面的なことでよいです。
新規事業プロジェクトチームに関して、
何に違和感がありますか?」
「そういうことでしたら、
さっき木村リーダーが言われたことが
とてもしっくりきます。
つまり、真剣な人とそうでない人の差が
出始めているということです。」
「それは、弓江さんも感じるのですね。」
「はい、感じます。
さきほど木村リーダーがそう言われて
その通りだ、と思ったんです。」
「ではなぜ、真剣な人とそうでない人の差が
広がっているのでしょうか?
木村リーダーのリーダーシップに問題あり、
ということではなく、もっと表面的な問題は
ありませんか?」
しばらく弓江さんはじっと考えていました。
そして、ハッと頭を上げました。
「ペアが良くないです。」
弓江さんの説明によると、
新規事業プロジェクトは多くの場合、
二人ずつのペアを組んで
仕事に取り組んでいるようです。
その組み合わせが良くない、と
弓江さんは言っているわけです。
「今のペアは木村さんが
お考えになったのですか?」
「はい、そうです。」
「どのような視点から考えられたのですか?」
「2点から考えました。
一つは、能力面でお互いに補完し合えるかどうか?
ということ。
もう一つは、お互いに気が合いそうかどうか?
ということです。
私は、ベストの組み合わせだと思っていたのですが・・・。」
すると弓江さんが言いました。
「確かに私も、いい組み合わせだなと
思っていました。
でも、今ふと、違和感が出たんです。
なぜでしょうか。」
私は問いました。
「木村さん、今ここで改めてペアの組み方について
考えると、どんな感覚がします?」
「不思議なことに、
私も違和感しか出てきません。
なんででしょう?
理由がわかりません。」
この一言で私は
合点がいきました。
すべての意味がわかった気が
したのです。
そして、今回のこの二人コーチングの
真の意味もわかりました。
ようやく私の心の中が
スッキリと晴れ渡りました。
「なるほど、そういうことなんですね!」
と、今度は私が叫びました。
二人はキョトンとしました。
つづく
「弓江さん、
これまでの木村さんは、リーダーとして
何をし続けてきたと思いますか?」
この私の問いかけに、弓江さんは
「あぁそうか。
木村リーダーは必死に、
火消しをし続けていたのですね。
大火事にならないように。」
と答えました。
(→前回記事)
それを聴いた瞬間に、
「なるほど!!」
と木村さんは叫んだのです。
弓江さんがびっくりして
木村さんを見つめます。
木村さんは、目を爛々とさせ
私を見つめました。
そして言いました。
「たけうちさん、
私は何かとんでもない勘違いを
していたようです。」
「どういうことですか?」
「私はチームのメンバーに成長してほしいと
心から思っています。」
「はい。」
「そのために、私なりに考えて
あらゆることをしてきました。
もちろん、間違ったこともしちゃいました。
良かったこともありました。
しかし、成果が出たかどうかは別として、
根元がおかしかったということに
今気づきました。」
「根元? それは何ですか?」
「はい。私は、
私が皆を育ててやる!
と思っていたんです。」
「あぁ、なるほど!」
と、今度は弓江さんが言いました。
「それ、すごくわかります。
そこです。私が違和感を感じてたのは。」
「そうなんです。
先ほどこのコーチングの場で、
プロジェクトのミーティングの司会を弓江にしてもらう、
ということを決めたじゃないですか。」
「はい。」
「実は、あの瞬間から、私の頭のどこかでは、
では、どのように弓江を司会者として育てようか?
という思考が始まっていたのです。」
「なるほど。それは疲れますね。」
「その通りです。
私がすべての人を育てなければならないと
思っていた。
そして私なりにそれをしていた。
そして私なりに、その責任を負おうとしていた。
責任感そのものは大事だと思いますけどね。
で、皆がまずい行動をすると、
・・・いや、まずい行動をとる前から、
火消しに走っていた。
それが私のリーダーシップだったんです。」
「なるほど、そういうことですか。」
ここで弓江さんが入ります。
「一見、木村リーダーは
みんなを引っ張って行っているように見えますが、
私から見ると、全然進んでいる感じがしなかったんです。
なんか、火消しばっかりしているようで。
問題が起こる前に問題を消す。
それ自体はいいんですけど。
でも、それって本当に木村リーダーのやりたい
チームなのかな?って。
私の知っている、ロックバンドの木村リーダーは
火消しどころか、みんなに油を注いでいる、
というか。笑」
「確かに、ロックバンドの時とは
真逆の私ですね。
さっき弓江は、チームメンバーが活きていない理由は
私のリーダーシップとは別の原因があるのでは、
と言ってくれましたが、
やはり私が原因のようですね。」
「いや、でも木村さん。
その件に関しては、そうでもないかもしれませんよ。」
「どういうことですか?」
「木村さんのリーダーシップを根本的に変える
ということよりも、もっと単純で現実的なことを
ちょっとだけ変えるだけで、
一気に好転するような感覚がありますが、
弓江さん、どう思います?」
「私も、なんかそう思えます。
答えはわかりませんけど。」
「何となく今回のこの二人コーチングは
弓江さんが責め、木村さんが反省する、
みたいな流れが多いですが(笑)、
そんなに深刻にならなくてもいいような
気がしてきましたよ。
木村さんは、メンバーを育てたいのでしょ?」
「はい。」
「それは大事にしましょうよ。
ただの手法の問題だと思いますよ。」
「そういうものですか。」
「チームの真本音は、
『全員がチームの代表として
お客様と向き合う』
でしょ?」
「はい。」
「そういった木村さんの想いを
もっともっと成果として結びつけるために
何をどう変えるか?を見つけるだけでは
ありませんか?」
「なるほど。」
「で、その方策は、
そろそろ弓江さんの中から
出てきそうですよ。」
「えぇ? 私からですか?」
つづく
弓江さんの直観的な問い、
「新規事業プロジェクトチームは、
このまま行けば、成功すると思われますか?」
これに私は直観的に
「成功しないですね。」
と答えました。
その答えを聴いて、弓江さんも木村さんも
何かが腑に落ちました。
(→前回記事)
この瞬間、私達3人は
本当に「一つ」になったと
私は実感しました。
実はこういった実感は
よくあることです。
こんな時私はいつも、
「すべては自分である」
という言葉に、とても納得します。
これは人数の問題ではありません。
クライアントさんが一人であろうと二人であろうと、
10人であろうと、100人であろうと、
「一つ」になるときには、本当に「一つ」になれます。
しかし、「一つ」になることで
皆がまったく同じ思考や意見を言うようになる
わけではありません。
「一つ」だからこそ、
各々の個性がさらに際立ちます。
そして、様々な意見が出ます。
しかしそれらの意見が「反発」や「争い」を生み出すことは
ありません。
すべてが「調和」という結果に繋がるための
意見です。
「調和」には、「迎合」や「妥協」は
一切ありません。
「強制」も「独裁」もありません。
本当に皆が納得する、「最善の答え」が
そこにあります。
個人個人から「最善の答え」が生み出されるのと同様に
チームにも「最善の答え」が必ずあります。
その答えに行き着くための、
最善の「試行錯誤」と「意見交換」が
「一つ」になることで行われます。
これは、各々の真本音度合いが高くないと
決して起きない現象です。
私はこの状態を
『自律調和』
と呼んでいます。
私がチームコーチングをする目的の一つが
この『自律調和』の状態を創ること
です。
そしてこの状態に入ると、
物事はさらに加速して進んでいきます。
しかもその時間は各々にとって
幸福感に満ち足りたものとなります。
それは例えば、オーケストラが
「一つ」になって最高の演奏をするときの状態と
本質的には同じでしょう。
私は弓江さんに問いました。
「なぜこのままでは、
新規事業プロジェクトは成功しないのでしょう?」
すぐに答えが返ってきました。
「今のチームは、
チームとしてまとまっていますが、
悪いまとまり方をしているからだと思います。」
「それは、どういうことですか?」
と問うと、今度は木村さんが答えました。
「人が活きていない。
誰も、最大のパフォーマンスを発揮していません。
というよりもむしろ、
みんな、死んでます。
お互いの力を打ち消し合っています。」
「その原因は?」
すると弓江さんが、ハッとしたような表情をされ、
次のように言われました。
「私はこれまで、原因をすべて木村リーダーの
リーダーシップにあると決めつけていました。
もちろん広義の意味ではそうだと思いますが、
もっと別の原因がありますね。」
その一言は、
私にとても伝わってきました。
すると、私の中に、別の視点からの問いが
浮かんできました。
私はそれを投げてみました。
「弓江さん、
これまでの木村さんは、リーダーとして
何をし続けてきたと思いますか?」
弓江さんは少し考えてから
言いました。
「あぁそうか。
木村リーダーは必死に、
火消しをし続けていたのですね。
大火事にならないように。」
つづく
人生には節目があります。
生まれ変わる、という言葉がありますが、
実は私達の人生には、何度も
その「生まれ変わり」の瞬間が訪れます。
一度、これまでの自分をすべて「リセット」し、
まったく新たな自分として、
人生を再スタートさせる。
そのように、自分自身の真本音が決めている
瞬間であり、
それは人生において、何度もあることではないのですが、
何度かは、必ず訪れます。
その節目において、
しっかりと、生まれ変わることができるかどうか?
つまりは、
これまでの自分を一度、リセットできるかどうか?
それがその後の人生の展開を
大きく左右します。
ただしリセットと言っても、
それは現象レベル(現実レベル)の話では
ありません。
今の職を辞めなさいとか、
離婚しなさいとか、
友達付き合いを変えなさいとか、
そういった現実レベルのことではありません。
あくまでも、心の問題です。
私の言葉で言えば、
「心の中の実在を変える」
ということです。
ところが、この生まれ変わる瞬間を
逃してしまう人が多いのです。
これまでの自分に執着してしまうのです。
これまでの私はこうだった。
このようにすれば上手くいった。
だから、これからもその通りでいたい。
・・・と。
せっかく、生まれ変わるチャンスが来ているのに、
それを自覚しないどころか、
執着をすることで、何も変わらない、
という人が多いのです。
そうなると、どうなるか?
人生の「苦しみ」の度合いが
一気に深まります。
そしてそれが、現象化(現実化)します。
これまで、何となく上手くいっていたことが、
突然、上手くいかなくなった。
これまで、誤魔化し誤魔化しできたことが
まったく通用しなくなった。
これまで、後回し後回しにしてきたことが
どうにも逃げ道がなくなった。
そのような現実が目の前に現れる場合は、
自分がこれまでの自分に執着してしまい、
生まれ変わりのチャンスを逸しようとしている
わかりやすい合図です。
もしそういった現実が目の前に
あるのであれば、
今からでも遅くはありません。
「生まれ変わろう」と決めることが
とても重要です。
なぜこのようなことを書くかと言いますと、
今その「生まれ変わり」のチャンスに
恵まれている人が、
かつて私が経験したことのないくらいに
多いからです。
みんなが同時に生まれ変わろうとしているのかな、
と強く実感します。
恐らくですが、
この2017年の内に生まれ変わり、
2018年から、新たな自分として再出発しようと
真本音レベルで決めている人が
多いのではないでしょうか。
ですから、ここのところの私のコーチングは、
生まれ変わろうとしている人が、
きちんとこれまでの自分を手放せるように
サポートすることが主になっています。
これまでの自分を
手放すのです。
これまでの自分のパターンを
手放すということです。
心の中で強く
決めるだけでも良いのです。
「私は生まれ変わる」と。
そして、
これまでの自分の経験やパターンに捕らわれず、
ただただ、目の前に展開する「現実」に
ありのままに向かい合ってみてください。
自分の思考によって
物事の判断をすれば、これまでの自分に
捕らわれてしまいます。
そうではなく、
「現実」と向かい合おうと決めた上で、
自分の中から生まれる直観を大事にしてください。
その直観は、
「え〜っ? そんなことできないよ」
と思われるものかもしれません。
これまでの自分のパターンからは
考えられない行動の取り方かもしれません。
でも、その直観に素直に
なってください。
それが、生まれ変わる、ということです。
今回はちょっと
木村さん、弓江さんの二人コーチングのお話は
お休みです。
どうしても今、書かねばと思いましたので、
生まれ変わりについて
書かせていただきました。
明日からまた、
木村さんストーリーに戻ります。
つづく
「夢を持つといい」
とよく言われます。
「夢を持ち、それに向かう人生が
素晴らしい」と。
確かにそうかも知れません。
しかしその「夢」とは
真本音であることが重要です。
反応本音レベルの「夢」であれば、
それを大事にし、
それに向かう努力をすればするほど、
ストレスが発生します。
そして、「夢」に生真面目に
向かう人であればあるほど、
そのストレスは密度を増し、
いつの間にか、エンティティが発生します。
つまりその場合、
夢を持つことで、その人は
苦しみの人生を歩むことになるのです。
ですから私はいつも
申し上げます。
「無理な夢は描かない方がいい」と。
「夢」というものは、
真本音で「今日を生きる」ことの連続により、
自然に「顕在化」します。
「顕在化」と書いたのには
理由があります。
「夢」とは、もともと私達の中に
私達の真本音の中に、
確かに存在しているものだからです。
存在しているのに、自分で気づいていない。
・・・それが多くの人の状態です。
逆に言えば、
存在しているのだから、
それを掘り起こせばいい、
ということになります。
そして、掘り起こすためには、
今この瞬間を、
今日というこの一日を
真本音で生きることです。
これをする人は、
普通に、当たり前に、自然に
夢がわかります。
夢に向かう人生となります。
それは決して
力こぶを入れるような
「がんばり」を必要とするものではなく、
ただただ単純に、純粋に、淡々と
そこに向かっていくだけのことです。
ただし、
そんな毎日に入れば、
人の心は、常に満たされた状態となります。
本当の夢とは、
それを実現できたかどうかよりも、
それに向かう一歩一歩こそが
幸せだからです。
しかしそれが真本音の夢であるならば、
それは必ず実現しますけどね。
真本音で今を生きれば、
真本音の夢が見つかり、
真本音の夢が見つかれば、
今を、満ち足りた自分として
自然に生きることができる。
要するに、そういうことになります。
私は、
それこそが「普通の人生」であると
思います。
「普通の人間の姿」であると
思います。
その「普通」を
すべての人がすればいいのに、
と思うのです。
そんな「普通」を取り戻すことが
私のコーチングの目的の
重要な一つです。
さて、
エンティティのお話に戻りますが、
エンティティとは、
そういった「普通」ではない状態の時に
発生します。
ほとんどの人から私はエンティティを
受け取るのですが、
ということは、ほとんどの人が
「普通の人生」を生きていない
ということでもありますね。
西畑さんという人は、
そういった意味で、
「普通の人生」の真逆を行っている
のかも知れません。
(→前回記事)
そして木村さんも、
真本音度合いが下がってしまう時は、
「普通の人生」の真逆を
行ってしまう傾向にあります。
しかもその二人の「傾向」が
似通っていたために、
悪い意味での「共感」をしてしまい、
西畑さんのエンティティが
木村さんに乗り移る、ということが
どうやら起きているようです。
以前に西畑さんと面談した時、
彼は木村さんのことを
「同志です」
と言いました。
しかし、木村さんに張り付いた
西畑さんのエンティティに意識を向けると、
木村さんは、
「お前を引きずり落としてやる。
そう西畑のエンティティは言っています。」
と言われました。
西畑さんが嘘を言っているわけでは
ありません。
彼は、顕在意識では本当に
「同志である」
と思っているのです。
しかし、彼自身が「普通ではない生き方」を
してしまっているために、
「普通の生き方をしよう」としている木村さん、
・・・つまりは、真本音度合いを高めている木村さんに対して
「羨ましい」というところから、
「引きずり落としてやる」
というエンティティを生んでしまっているのでしょう。
実はこのパターン、
非常に多いです。
組織においては、
このパターンのエンティティを除去するだけで、
チームの雰囲気が大きく変わる、
ということが、これまでは何度もありました。
さぁ、ではまずは、
木村さんを西畑さんのエンティティから
解放させてあげなければなりません。
私は木村さんに言いました。
「木村さん、
その西畑さんのエンティティを
愛せますか?」
つづく
これからは弓江さんが
新規事業プロジェクトチームのミーティングの司会を
「コーチ」として行なうことが決まりました。
(→前回記事)
木村さんと弓江さんの二人コーチングは
さらに続きます。
もうこの頃になると、
私達3人は完全に「一つ」になっています。
もちろんそれは感覚的なものです。
でも私は、二人の呼吸が
手に取るようにわかるようになっていました。
そんな時、私はいつも
あえて私が「問い」を創ることをやめてしまいます。
そして、
次のように言葉をかけたりします。
「ここまでの流れとまったく関係なくてもよいので、
何か喋りたいことはありますか?」
・・・と、二人に投げます。
すると、自然に「喋りたい空気感」が
どちらかから伝わってきます。
今回は弓江さんから伝わってきました。
「弓江さん、
何か喋りたいことがあるのでは?」
そう言われて弓江さんは最初、
「え〜、何か私、喋りたがってます?」
と言いましたが、ふと、思い出したように、
「あっ、あります!」
と答えました。
「全然関係のないことなのですが、
それでもいいですか?」
「はい、大丈夫ですよ。」
「木村リーダーって、西畑さんとお話しすると、
いつも何かおかしくなりません?
何かに取り憑かれたようになる、というか・・・。」
そうでした。
私が、木村さんと弓江さんの二人コーチングを
しようと思った直接のきっかけは、
西畑さんからの「エンティティ」でした。
(→【取り憑かれるのは普通のこと】)
どうやら木村さんが西畑さんから
強烈なエンティティを受け取っているらしい、ということを
弓江さんの「観察」によって私は知ったのです。
私は、エンティティについて、
二人に詳しく説明をしました。
その話を聴いて木村さんは、
「とてもよくわかります」
と言われました。
「西畑と喋った後は、なぜがいつも
すごく疲れるんです。
私は彼とは仲がいいし、気も合うと思っているのですが、
なぜか時々、すごく疲れるんです。
まぁ、何かの偶然なんだろうな、と思っていました。」
「いつも、体のどの辺りが
疲れますか?」
「・・・そうですね。
肩から背中にかけて、ドーンと重くなると言うか。
鉛が乗っかっていると言うか。」
「今はどうですか?
その感覚はあります?」
木村さんは、ジーッと肩や背中に
意識を向けているようでした。
「何となくですが、
ちょっとだけ重い感じがします。」
「あぁじゃあ、今も少しだけ
エンティティが憑いているかも知れませんね。」
「ホントですか?」
「はい、ちょっと見てみますか?」
つづく
木村さんは、新規事業プロジェクトチームの
真本音を「理念」として言語化することが
できました。
それが、
『全員がチームの代表として
お客様と向き合う』
です。
(→前回記事)
言語化することで、
自分自身がこの理念に外れる行動をとっていたことを
木村さんは自覚しました。
彼は、とても清々しい表情で
「自分は間違っていた」
と言いました。
自分が正しいとか間違っているとか、そんなことよりも
真本音の理念を見つけ出した喜びの方が
大きかったのでしょう。
もちろん、弓江さんも喜びました。
木村さんが「間違っていた」と言った時、
弓江さんは、「そうでしょう!」と相づち。
そして二人で笑い合いました。
いい感じです。
すかさず私は次の問いを投げました。
「弓江さん、
弓江さんは木村さんをサポートするために
何をすればよいですか?」
「えっ?」
「今ならわかるのではありませんか?」
弓江さんは少し目を瞑って考えました。
そしてこう言ったのです。
「木村リーダー、
私は木村リーダーに何をすれば
サポートになりますか?」
この一言。
これは本当に木村さんには嬉しかった
ようです。
「えっ、そう言われてもなぁ・・・。」
と言いながら、とても嬉しそうな表情。
「木村さん、
ここはしっかり考えて、弓江さんに
指示を出してください。
真本音の指示を。」
しばらく木村さんは考え、
言いました。
「私と一緒にミーティングの場を
創ってください。
弓江さんにミーティングの司会を
お願いします。」
これには弓江さんが驚きました。
「えっ? 私が司会ですか?
いや、私は司会の経験はありませんし、
向いていないと思います。」
「いや、私は弓江さんに司会をしてもらいたい。
それが、とてもいい気がする。
たけうちさん、どうです?」
私は大賛成でした。
「実はね、木村さん。
弓江さんにはコーチの才能があるんですよ。」
「そうですか!
実は今、私も何となくそんな気がして。
私は以前、自分がプロのコーチになるなんてことを
言っていましたが、私なんかよりも
弓江の方がいいかな、って思ったんです。」
さすが木村さんです。
「弓江さん、私が弓江さんに司会のやり方を
教えますので、やってみませんか?
司会というよりも、チームコーチングのコーチ役
ですよ。」
最初、弓江さんは「え〜っ?」と言いながら
拒んでいましたが、
木村さんが、「これはリーダーとしての指示です」
の一言で、あきらめました。笑
「そのかわり、しっかりと事前準備をしましょう。
ミーティングの目的と、
そこでどのような問いを投げるか?を
しっかり準備しましょう。
その上で、あとはアドリブでやればいいんです。
コツはすべて私が教えます。」
ということで、弓江さんは司会をやることに
なりました。
今思えば、これが本当に
運命の分かれ道でした。
司会をすることで弓江さんは、
本来彼女が持っていた天性の力を
ぐんぐん発揮することになります。
彼女こそ、
プロのコーチと言ってもよいくらいの
力を持っていたのです。
つづく
「たけうちさん、
私はどうやら間違っていたようです。」
木村さんは、そう言われました。
(→前回記事)
そう言いながらも、その彼のあまりの清々しい表情に
一瞬私は惹き込まれました。
彼は続けました。
「弓江はいつも、このチームの真本音の視点から
意見を言い続けてくれていたんです。
それがようやく今、わかりました。」
チームの真本音
『全員がチームの代表として
お客様と向き合う』
弓江さんは常に、この視点を持ち続けた
唯一のチーム員であると、
木村さんは言われたのです。
これには弓江さんも納得されました。
「そうです。
言われてみれば、私はいつも
それを大切にしていました。
このチームの真本音と別の行動を見る度に
苛立っている自分がいました。
特に、木村リーダーが外れた行動をとると
イライラが止まりませんでした。」
このチームの真本音は木村さんが
表現した言葉です。
しかしそれは木村さんの「解釈」の言葉
ではありません。
つまり、木村さんの言葉でありながら、
木村さん一人の言葉ではありません。
こういったことが、真本音度合いが高まりますと
当たり前のように起こります。
チームの真本音というのは、
そのチーム員全員が自然に生み出します。
それは最初は言葉にはなりません。
しかしチームが真本音度合いを高めながら
一つになっていくと、自然にそれが
言語化されるようになります。
それこそが、そのチームにとっての
本当の「理念」です。
木村さんのチームには、その理念が
言葉ではなく、すでに「何となく」できあがっていました。
それはそれだけチームが一体化した証拠です。
その「何となく」できあがっていた理念を
木村さんは、あるがままにキャッチし
言語化したのです。
それが
『全員がチームの代表として
お客様と向き合う』
ということでした。
ですので、これは木村さん一人のものでは
ありません。
「みんなのもの」を木村さんがキャッチしただけ
ですので、弓江さんが共感するのは当然なのです。
今回は、木村さんのチームを例にして
お話しさせていただいていますが、
私は常に、このような理念の創り方を
大切にしています。
チームに理念が醸成される前に無理に
理念を言語化して創るのではなく、
無意識レベルで、チームに真本音の理念が
醸成されるのを促し、
それができた時点で言語化する、という
ステップです。
それをすれば、本物の理念になります。
皆の魂が入ります。
そして、やはり私は
チーム(組織)の理念は、言語化することを
お勧めします。
なぜなら、
言語化することで、簡単に意識を向けることが
できるからです。
そして言語化することで、
それが、本当に真本音によるものならば、
私達の心は非常にスッキリします。
これまでの迷いやモヤモヤが
払拭されるからです。
この時の木村さんが
まさしくそうでした。
チームの理念を言語化することで、
彼は、自分の中の淀みに気づいたのです。
そして、チーム員の中で、
最も理念に対して淀みない心で向き合っていのが
弓江さんであるということに気づいたのです。
『全員がチームの代表として
お客様と向き合う』
「私はこれと真逆のことをしていたかも
知れません。」
と木村さんは呟きました。
つづく
皆さんは、「次元が上がる」という体験を
されたことがあるでしょうか?
企業現場でも
「なんか、今回の会議、いつもと次元が
違ったよな」
とか
「この事業部は絶対次元が高いよな」
とか、
本当に時折ですが、社員さん達が自然に
「次元」という言葉を使っているのを
聴くことがあります。
チームコーチングをやっていますと、
実は、毎度のように私は次元の高まる瞬間を
体験しています。
あまりにも急激な高まりの場合は、
私の体全体がフワッと無重力状態のように
浮き上がる感じさえします。
実際にある時の研修では、
私は講義中に一瞬倒れそうになりました。
それくらいに、
一気にそこにいる皆さんの次元が
上がったのです。
次元が上がると、
心が開放されるのと同時に、
そこにいる他の皆さんとの繋がり感が
一気に深まります。
わかりやすい体験で言えば、
コンサートやライブで
演奏者(ミュージシャン)とお客さんとが
一つになることがあります。
演奏者同士が完全に一つに繋がってしまうことも
あるそうです。
それに近いです。
が、そのような特殊な空間や、何かに熱狂しないと
訪れないもの、でもありません。
単純に言えば、
真本音度合いの高い人と向き合っていると
自然に次元は上がって行きます。
次元が上がれば、
発想が変わります。
それにより、これまでずっと答えの出なかった難問の
答えが突然見出せたりします。
例えば、
AかBか?で悩んでいたことがあったとしても、
次元が高まると、
「そんなのはどちらでもいいじゃん」
という気持ちになり、
AかBか?から解放され、
その結果、これまででは及びもつかなかった答えに
行き着きます。
迷いが迷いではなくなります。
葛藤がなくなります。
真本音度合いの高まりは、
自然に次元を高め、
それにより、これまでとは全く別次元の
発想と行動を生み出します。
それを組織やチームで起こしていくのが
チームコーチングの本質です。
ちなみに、
次元にはいくつかの階層があります。
その具体的な解説も、いつかこのブログで
書かせていただくつもりです。
さて。
木村さんと弓江さんの二人コーチング。
弓江さんが真本音の想いを
静かに語ったことで、
場の次元が一気に高まりました。
(→前回記事)
ここからがチームコーチングの
本番です。
弓江さんが言われた想いについて、
私はあえて木村さんにその返事を
促しませんでした。
あれだけの想いを弓江さんは語ったのですから、
それについてしっかりと返事をすることが
礼儀であり、かつ、誠実さであると
「一般的には」
思いますが、
次元の高まった状態では、それよりも
大切なことがあるのです。
弓江さんの言葉により、
明らかに木村さんの心の扉が開きました。
それを感じ取った私は、
すかさず、木村さんに問うたのです。
「木村さん、
新規事業プロジェクトチームの真本音
は何だと思いますか?」
「チームの真本音、ですか?
それは、チームの方針ということですか?」
「いえ、すでに決まったいる方針のことを
今は言っているのではありません。
一人一人の個人と同じように、
チームや組織そのものにも、真本音はあります。
正確に言えば、
個人の真本音は最初からありますが、
チームの真本音は、最初はありません。
しかしそのチームを構成する人達が
自然発生的に生み出すことができるのです。
どうでしょうか?
もう新規事業プロジェクトチームには
真本音が生み出されたのではありませんか?」
すると木村さんは
直観的に答えました。
この直観が、ほしかったのです。
「いえ、もうすぐ生み出せると思いますが、
まだその直前にいます。
まだ、このチームに真本音はできあがっていません。」
「でも、それが何か?はわかるのでは?
チームの真本音を言語化すると、どうなりますか?」
木村さんは少し目をつぶりました。
そしておもむろに開け、
『全員がチームの代表として
お客様と向き合う』
です。
と答えました。
その瞬間、木村さんは私をまっすぐに見つめました。
その彼の目の輝きを見て、
危うく私は涙をこぼしそうになりました。
つづく
木村さんと弓江さんの二人コーチング。
(→前回記事)
二人とも短時間でオープンマインドと
なりました。
場の空気があたたかくなってきました。
ここで私は一気に場の次元を上げることを
しました。
普通では、なかなか投げない質問を
あえて弓江さんに投げました。
弓江さんの真本音の高まりを感じ取った
からです。
「弓江さんの人生の目的は何ですか?」
虚を衝かれた弓江さんは
一瞬、フリーズしました。
しかしさすが弓江さんです。
これまでの私のやりとりの中で、
私の無茶振りに慣れてきていたようです。
こういった時は何も考えず
ただ口を動かせばいい、というコツを
すでに掴んでいました。
彼女はとっさに答えたのです。
「リーダーのサポートです。」
答えながらも、弓江さん自身が
その答えに驚いていたようでした。
「どんな意味かわかります?」
と私が問うと、
「私はずっと探してるんです。
自分が全力でサポートしようとするリーダーを。
それは仕事の上、だけでもない気がします。
例えば私の人生のパートナーとなる人とか。
私は、自分がサポートしたい人を見つけ、
その人を全力でサポートしたいのだと思います。」
考えて言葉にしているわけではありません。
言葉が溢れ出ている感じです。
自分で答えながら、自分で驚いている、
という状態です。
実はこれは日常茶飯事です。
特別なことではありません。
自分自身が抑えていた想いや願いは、
ほんのちょっとしたきっかけでフタを開け、
一気に溢れ出ることがあるのです。
ただしそれができるのは、
真本音度合いが高まっている時に
限ります。
「弓江さん、
目の前にいる木村リーダーは、
弓江さんが全力でサポートしたいリーダーですか?」
私は単刀直入に訊きました。
「はい、そうです。」
と答えながら、
弓江さんは目に涙を浮かべました。
「でも、今の私には、それをするだけの力が
ありません。」
木村さんは茫然とその様子を
見ていました。
「木村さん、
実はこれが、弓江さんの真本音です。
弓江さんは真本音で木村さんをサポートしたいと
思ってるんですよ。」
「は、はぁ・・・。」
「でもね、弓江さん。
木村さんに言いたいことがあるのでしょ?
せっかくなので、全部言っちゃいましょうよ。」
弓江さんは、肚を決めたように
喋り出しました。
「今の木村リーダーは、全然木村リーダーらしく
ないんです。
私は、木村リーダーがロックバンドをしているのを
ライブで見たことがあります。
あぁこれが、この人の本当の姿なんだと感動しました。
でもそれが全く仕事では出ていません。
特に、新規事業プロジェクトが始まってからは。
いい子ちゃんリーダーになってしまっている感じが
するんです。
でも、私は木村リーダーを尊敬しています。
木村リーダーがあのロックバンドのような姿を見せれば、
みんなついてくると思うんです。
私は、そんな木村リーダーになってほしい。
そのために私ができることがあるなら、
何でもしたいと思ってるんです。」
涙を流しながら、
しかし静かに彼女は語りました。
その瞬間、
私は、その場の次元が一気に高まったのを
感じました。
これは私独自の感覚なのかも知れませんが、
次元が一気に高まると、
私はその場全体がまるで霧がかかったように
真っ白に見えるのです。
と同時に、何かが開放された感覚がします。
弓江さんの顔も、木村さんの顔も
何か憑き物が落ちたような自然さが
漂いました。
さぁ、実はここまでが準備段階です。
私はこの状態にしたいのです。
次元が高まることで、
私だけでなく、その場にいる全員が
真本音コミュニケーションを
自然にできる状態です。
ここからが
チームコーチングの本当の意味での
スタートなのです。
つづく
木村さんと弓江さんの二人コーチングを
しています。
(→前回記事)
私が木村さんに、
最近の新規事業プロジェクトの様子を訊くと、
彼は
「実績が上がって来たのは順調だと思いますが、
本当に真剣な人とそうでない人の差が
出始めていますね」
と答えました。
これは非常に面白い視点です。
私はさらに木村さんに問いました。
「例えば、真剣な人はどなたですか?」
すぐさま彼が答えました。
「弓江です。」
目の前の弓江さんが
びっくりしたような表情をされました。
この素直さ。
ここまでの段階で結構、
弓江さんから責められていた木村さんでしたが、
素直に彼の答えが、ポンっと出ました。
間違っても、これは彼のその場しのぎの答え
ではありません。
本当に素直に出たのです。
これが、
真本音度合いの高まった人同士の会話の
特徴です。
「弓江さんの、どんなところが真剣ですか?」
「目的を忘れないところです。
何のために今、これをしているのか?をいつも
大事にしています。
そしてそのための意見を私に言ってくれます。」
どうやらこれは、弓江さん自身が本当に
大事にされていたことのようです。
彼女の表情が一気に柔らかくなったのが
わかりました。
何度も言いますが、
もしこの言葉を木村さんが建前で言っていたとしたら、
それはすぐに感覚としてわかってしまいます。
二人コーチングの場は、
「向き合っている場」だからです。
木村さんの素直な言葉であるからこそ、
弓江さんの表情は柔らかくなりました。
「では、木村さんの言われる真剣さ、というのを
別の言葉で表現するとどうなりますか?」
「主体的であることです。
自分で考え、自分で行動する、ということです。」
「弓江さんは主体的なんだ。」
「そうです。ですから、ありがたいです。
弓江の存在は。」
これも本当に心の底からのつぶやきでした。
もともと、私が弓江さんのコーチングを行なうきっかけと
なったのは、木村さんが弓江さんの存在を
「疎ましい」と思い、いっそのこと自分がリーダーを辞めよう
とまで思ったのがきっかけでした。
そんな木村さんだったのに、真本音状態になれば
まったく別の顔を覗かせます。
実はこれもよくあることです。
「弓江さん以外の人は、
その点、どうですか?」
「はい。人によって主体性は異なります。
主体性の高い人はいます。
でも残念ながら、そうでない人も出てきました。
私は、悩みました。
主体性のない人に主体性を取り戻してもらうために
どうすればいいか?と。」
「もともとは主体性のある人達だったんですよね?」
「はい。そういったメンバーが集まってますから。
でも恐らく、プロジェクトが発想段階から実行段階に
移ることで、未経験なことに向かうことに対して
恐怖感が出てしまっているのでしょうね。」
「なるほど。」
「そこで私が私なりに出した答えが、
まずは、皆が自信を持てるようにすることでした。
そのために、自分が指示を出し、実践してもらい、
何らかの成果を上げる。
そういった経験が彼らに必要だと思いました。」
「あぁそれで、木村さんがすべてを決めて
皆を動かしているわけですね。」
「実はそうなんです。」
ここで、弓江さんに振ります。
「弓江さん、
この木村さんのお話を聴いていかがですか?」
「本当に失礼な言い方になってしまいますが、
あぁそこまで考えていらしたんだ、と思い
ちょっと嬉しくなりました。」
この言葉は、言葉だけを見ると
かなり上から目線の失礼な言い回しなのですが、
これを口にしている弓江さんは
本当に嬉しそうな表情でしたので、
思わず場はホッコリとしました。
しかし弓江さんは続けます。
「木村リーダーの意図はわかりました。
ある意味、私もそれが大事かな、とも思います。
でも本当に、それだけで良いでしょうか?
私は、一度受け身になってしまった人は
そのクセが抜けなくなってしまうと思うんです。」
「なるほど。
では、どうでしょう?
弓江さんには、何か良いアイデアはありますか?」
「う〜ん。
それがわかればいいんですが。
私は木村にはいつも文句を言うのですが、
だからと言って対策を提案できるわけではないんです。
ただの評論家になっています。
それが、もどかしいんです。」
今度は、弓江さんが少し素直になってきました。
木村さんの表情が柔らかくなりました。
場が良くなってきました。
二人ともがオープンマインド状態です。
真本音度合いが高い人同士ですと、
この状態になるまでが早いのです。
ですから私は、まずは
一人一人の真本音度合いを高めることを
大切にしています。
あくまでもその上での
チームコーチングです。
さて、ここからが本番です。
場が良くなってきたところで、
私は、少し強めの刺激を二人に与えることにました。
ここからが
本当のコーチの腕の見せ所です。
つづく
木村さんと弓江さんの
二人コーチング。
(→前回記事)
一人のコーチ(つまり私)が、
二人を同時にコーチングします。
これがチームコーチングの
基本です。
私はまず、あえて弓江さんに問いました。
「弓江さん、
最近の新規事業プロジェクトの様子は
いかがですか?」
思った通り、即座に答えが返って来ました。
「止まってます。」
えっ?という意外な表情を
木村さんがされました。
スタートから面白い展開になりました。
面白いので私はあえて
木村さんに振りました。
「止まってるんですか?」
「えっ? いや、あの・・・。」
木村さんは動揺を隠しませんでした。
実は、新規事業プロジェクト自体は
順調に進んでいることは私も聴いていました。
ですが、弓江さんがそのように答えるということは
それとはまた違った視点からの
見え方があるのでしょう。
それをそのまま弓江さんに質問すればよいのですが、
ここがチームコーチングの面白いところ。
あえて、木村さんに振ったのです。
それにより、
一人一人の個別コーチングとはまた違った
展開が生まれます。
その展開こそが、
個別コーチングでは決してたどり着けない
何らかの気づきや答えに行き着きます。
「私は止まっているように思えないのですが、
なに、・・・今止まってるの? どこが?」
と木村さんは弓江さんに問いました。
すでに二人の会話が始まりました。
弓江:「えっ? 止まってますよぉ。」
木村:「どこが?」
弓江:「わからないんですか?」
木村:「・・・わからないよ。進んでるでしょ。」
弓江:「じゃあ逆に訊きますが、
何が進んでいるのですか?」
木村:「実績も出始めているし、
決めたことはみんなやるし。」
弓江:「誰が決めてるんですか?」
木村:「えっ? そりゃ俺が決めてるよ。」
弓江:「でしょ?
木村リーダーが決めていることを
みんなやってるだけじゃないですか。
それのどこが進んでるんですか?」
木村:「どこって・・・。」
やはり予想通り、
弓江さんが木村さんを責める状態となりました。
恐らく、木村さんが最も嫌な展開なのでしょう。
ここで私が割って入りました。
「弓江さん、
弓江さんにとって、進まない、というのは
どういうことですか?」
「進歩がない、ということです。
同じレベルのことを、ただダラダラとやり続けることです。」
「今は、そう見えると?」
「はい。
みんな、木村が言う通りのことしか行なっていません。」
ここで木村さんが何かを話そうとされましたが、
あえて私はそれを止めました。
「もう少し、詳しく教えていただけますか?」
「はい。以前はみんなでいろいろな意見を
出し合ってたんです。
もちろんすべてが手探り状態でしたから、
意見を出し合わなければ進めないという
ところもありました。
でも今は、いろんなことが軌道に乗り始めて、
会議をしても、木村リーダーがほぼすべてを決めて、
メンバーはそれを実行するだけ、になっています。」
「それはあまり良いことではないと?」
「だって、木村さんはそういうチームを創りたいのでは
ないでしょう?
みんなが主役になって引っ張っていくチームにしたいって
言われていたじゃありませんか。
今はみんな受け身です。」
ここで木村さんに振りました。
「木村さん、いかがですか?
今の弓江さんの見方については?」
「う〜ん、確かにそうかもしれないが、
今はみんなで発想するよりも、
決めたことを確実に実行することが
大事だと思っていますし・・・。」
どうも木村さんは、弓江さんを前にすると
発言が弱腰になります。
この弓江さんからの発言は、恐らく
今の木村さんや新規事業プロジェクトにとって
本質的な提言でしょう。
テーマとしては重要だと感じました。
が、あえてここで、
展開を大きく変えます。
「では、この件はとても重要そうなので、
後でゆっくり話し合ってみましょう。
もう一度、最初の質問に戻りますが、
木村さん、
木村さんから見た最近の新規事業プロジェクトの
様子はいかがですか?」
「はい。
実績が上がって来たのは順調だと思いますが、
本当に真剣な人とそうでない人の差が
出始めていますね。」
この言葉を聴いて、
これは面白い! と私は思いました。
恐らく、ここまでの弓江さんとのやりとりがなければ
出てこなかった発言かもしれません。
しかもこの彼の着眼点は、
弓江さんの提言と後々に統合しそうです。
これこそ、チームコーチングの
醍醐味です。
つづく
時々、私は
「たけうちさんは性善説ですよね?」
と訊かれます。
私がいつも真本音の話ばかりを
しているからでしょう。
いえ、私は性善説では
ありません。
人は、愚かです。
私は断言します。
人は、愚かです。
自分自身を含めて、私は人の愚かさを
嫌というほど、見たり、体験してきました。
愚かさということで言えば、
私ほど愚かな人間はいないのではないか、と
本気で思ってもいます。
しかしそれは
「すべて」ではない。
それは、自分の一部です。
人の一部です。
人には、素晴らしい部分も
愚かな部分も、
あらゆるものが詰まっています。
それらをすべて、あるがままに
受け取ることのできる人こそが、
真の強さを手に入れることができます。
いえ、「強さ」と言うと
だいぶ本質から離れてしまうかな。
自分がどうであろうと、
環境がどうであろうと、
希望を持とうが、
絶望に打ち拉がれようが、
関係なく、
次の一歩を淡々と、
自分の本当にすべきことを、
し続ける。
自分の本当にしたいことを、
し続ける。
それが、
真本音で生きる
ということです。
愚かでもいいではないか。
私には私のすることがある。
だからそれをする。
・・・このシンプルさ。
これが、
真本音で生きる
ということです。
すべての人が悲しみを
抱えています。
すべての人が怒りを
抱えています。
それをそのまま人にぶつけてしまう、
そんな生き方もあります。
でもそういった悲しみや怒りを
そのまま受け止めて、
何も否定せずに受け止めて、
しかしそれに捕らわれることもなく
次にすべきことをする、
という生き方もできるのです、
我々人間は。
それができている人は、
常に、心も魂も満たされています。
そういった生き方ができるといいな、
そういった生き方をサポートしたいな、
・・・それが私の想いです。
人はもっともっと
人間らしく生きられるはずです。
人間らしく生きる、とは
真本音で生きる、ということです。
真本音で生きる、とは
特別な人生を生きることではありません。
真に自分らしく
真に人間らしく
生きるということです。
それができれば、
すべてが調和します。
組織は調和し、
社会も調和します。
「調和させよう」と思いながら生きても
調和はしません。
「真の自分として生きよう」
とすることで、調和は
自然発生するのです。
私は、「チームコーチング」というサポート手法を
使います。
それは、これまでの企業現場の中で
自然に培われてきた手法です。
私にとっては当たり前のように使ってきた
手法なのですが、
どうも、世の中にはそういった手法が存在していないのだ、
ということに気づき始めました。
なぜこの当たり前のやり方が
世の中には存在していないのか?が
不思議でなりません。
しかし存在していないのであれば、
多くの人にお伝えした方がよいですね。
単純に今は、そう考えています。
チームコーチングの基本は、
「二人コーチング」
です。
(→前回記事)
二人を同時にコーチングする
のです。
これができるようになれば、
もっと多勢でのチームコーチングも
可能になります。
ただし、
二人コーチングは、いつでもどこでも
できるわけではありません。
二人の準備が
必要です。
つまりは、二人がそれぞれ
自分の真本音の人生を歩み始めること。
それがなければ
本当の調和は訪れないからです。
木村さんと弓江さんの話に戻せば、
私は二人の調和性は抜群であると、
認識していました。
しかし、それは二人共の
準備ができる
ことが前提です。
準備ができる前に二人を同時にコーチングしても
二人ともを打ち消し合ってしまうでしょう。
ですからチームコーチングとは
「始めるタイミング」
が命です。
ここが、コーチとしての腕の
見せ所です。
私は、「今」が
木村さんと弓江さんの「二人コーチング」の
始まりの時だと確信しました。
私は二人を呼び出しました。
木村さん、
弓江さん、
私。
3人でテーブルを囲みました。
「準備完了」。
二人の真本音からは
そんなメッセージを受け取った
気がしました。
つづく