雷鳴の方に

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真っ暗な

世界の中にいる。

 

私は地面に

胡座をかいている。

 

地面には

まるで雪のような

そして

鏡のように輝く

銀の草草が広がっている。

 

音は

何一つない。

 

まるで異次元空間に

迷い込んだようだ。

 

どうやらここは

丘のような場所らしい。

 

ふと、

 

遠くで稲妻が

輝いた。

 

音はないが

何度も輝き、

その激しさが伝わってくる。

 

ふと、

 

ここはブラックホールの

中ではないかと

いう気がした。

 

私はブラックホールに

吸い込まれてしまった

のだと。

 

それにしては私は

悠然としたもので、

 

ここがブラックホールの

中なら、

もう出られないかもなぁ、

 

などと

暢気に考えていた。

 

ここで

私は

自分自身が非常に

疲れていることに

気づいた。

 

実は動きたくても

動けないのだと。

 

まぁそうだようなぁ。

 

随分と大勢の人たちを

助けたもんなぁ。

 

ちょっと限界を

超えちまったかなぁ。

 

考えていると、

また稲妻が。

 

今度は近い。

 

しかも、

音のない世界だと

思っていたのに、

一瞬後に、

雷鳴が響いた。

 

全身に

ズンと来る。

 

これはいかんな。

 

行かなきゃな。

 

助けなきゃ。

 

私はよろよろと

立ち上がった。

 

まだ多少は

動けそうだった。

 

行かなきゃな。

 

私はトボトボと

歩き出した。

 

歩くたびに

また

体の奥から

力が漲ってくるのが

わかった。

 

おぉまだ

こんなに力が

残っているのか。

 

これなら

なんとかなりそうだ。

 

私はちょっと

走ることにした。

 

急がなきゃな。

 

私は駆けた。

 

雷鳴の方向に

向かって。

 

妙にリアルな

夢だったな。

 

つづく

 

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