チームパフォーマンスコーチ

完全に意図を手放せば、素晴らしい展開が待っている

私はいつも、かなり綿密に

コーチングの準備をします。

 

今回のコーチングは、何の目的のために

何をすればよいか?

 

私は、どのような問いを投げ、

どのようなメッセージをプレゼントするか?

 

Aさんのコーチングがある前の日に、

私は以上のことを頭だけで考えるのではなく、

実際にシミュレーションします。

 

まるで目の前にAさんがいるかのようにして

前の日にAさんのコーチングを自分の中で

完了させてしまうのです。

 

それはイメージトレーニングに近いものが

あるかもしれませんが、

実はこれは、イメージトレーニングとは

本質的には異なります。

私はそれを、『実在コミュニケーション』と

呼んでいますが、

これについてはいずれ詳しく書かせていただくことに

なると思います。

 

なぜ、これほどまでに綿密な準備を

するのか?

 

その理由はたった一つです。

 

私の中から、すべての意図を手放すため

です。

 

これだけ綿密な準備をして行なったことを

私は、実際のAさんのコーチング時には

すべて手放します。

 

実は、準備をしっかりすればするほど、

簡単に、そして完全に、

手放すことができるのです。

 

意図を手放すために

準備するのです。

 

すると、実際のコーチングの場は

必ずと言ってよいほど、

私の意図を超えた、想像を超えた

素晴らしい展開になります。

 

意図を手放すということは、

完全に自由な状態になります。

 

私は、何物にも捕らわれない

完全に自由な状態として

クライアントさんと向き合うのです。

 

ですから、様々なことをキャッチしたり

クライアントさんと「一つ」になることも

できます。

 

これは私だけが持っている能力ではなく、

すべての人が私と同じようにすれば

同じ能力を発揮することができるでしょう。

 

木村さんと弓江さんの二人コーチングは、

そういった意味で、

完全に私の想定外の展開になっています。

しかしそれはつまり、

私が望んでいた展開です。

(→前回記事)

 

コーチングは、想定外になってこそ

コーチングです。

 

コーチの意図の範疇でのやりとりは、

コーチングとは言いません。

 

自分の意図の範疇でコーチングする人のことを

コーチとは言いません。

 

想定外の展開の中でようやく私は、

今回の木村さんと弓江さんの二人コーチングの

本当の目的に気づくことができました。

 

すべての雲が晴れた

感覚でした。

 

で、またもや思ったのです。

ここからが、この二人コーチングの

本番の始まりだ、と。

 

私はお二人に申しました。

 

「このままでは、新規事業プロジェクトが

成功しない、と3人ともが思っている

真の理由がわかりましたよ。」

 

「何ですか?」

弓江さんと木村さんの目が輝きました。

 

「新規事業プロジェクトは

ここまで順調だったということです。

実は、何の問題もなかったのです。

そして、ここまで順調だったからこそ、

この場があるのです。」

 

「・・・???」

 

つづく

 

一つになることで、すべてがどんどん晴れ渡っていく

木村さんと弓江さんの二人コーチング。

このままでは新規事業プロジェクトはダメになる、

という二人の危機感が

実は、根底にあることが明らかになりました。

そして、それを打開するためには、

根本的改革よりも、もっと簡単な何かを変えることが

重要である、

ということがわかりました。

(→前回記事)

 

「で、その方策は、

そろそろ弓江さんの中から

出てきそうですよ。」

 

「えぇ? 私からですか?」

 

私達は「一つ」になっていました。

そうなるともう、次に誰から発想が出るか?が

手に取るようにわかるのです。

 

私は弓江さんから、

「答えがわかりました」という空気感を

受け取っていました。

だから弓江さんに振ったのです。

 

「弓江さん、まずは表面的なことでよいです。

新規事業プロジェクトチームに関して、

何に違和感がありますか?」

 

「そういうことでしたら、

さっき木村リーダーが言われたことが

とてもしっくりきます。

つまり、真剣な人とそうでない人の差が

出始めているということです。」

 

「それは、弓江さんも感じるのですね。」

 

「はい、感じます。

さきほど木村リーダーがそう言われて

その通りだ、と思ったんです。」

 

「ではなぜ、真剣な人とそうでない人の差が

広がっているのでしょうか?

木村リーダーのリーダーシップに問題あり、

ということではなく、もっと表面的な問題は

ありませんか?」

 

しばらく弓江さんはじっと考えていました。

そして、ハッと頭を上げました。

 

「ペアが良くないです。」

 

弓江さんの説明によると、

新規事業プロジェクトは多くの場合、

二人ずつのペアを組んで

仕事に取り組んでいるようです。

 

その組み合わせが良くない、と

弓江さんは言っているわけです。

 

「今のペアは木村さんが

お考えになったのですか?」

 

「はい、そうです。」

 

「どのような視点から考えられたのですか?」

 

「2点から考えました。

一つは、能力面でお互いに補完し合えるかどうか?

ということ。

もう一つは、お互いに気が合いそうかどうか?

ということです。

私は、ベストの組み合わせだと思っていたのですが・・・。」

 

すると弓江さんが言いました。

「確かに私も、いい組み合わせだなと

思っていました。

でも、今ふと、違和感が出たんです。

なぜでしょうか。」

 

私は問いました。

「木村さん、今ここで改めてペアの組み方について

考えると、どんな感覚がします?」

 

「不思議なことに、

私も違和感しか出てきません。

なんででしょう?

理由がわかりません。」

 

この一言で私は

合点がいきました。

 

すべての意味がわかった気が

したのです。

そして、今回のこの二人コーチングの

真の意味もわかりました。

 

ようやく私の心の中が

スッキリと晴れ渡りました。

 

「なるほど、そういうことなんですね!」

 

と、今度は私が叫びました。

 

二人はキョトンとしました。

 

つづく

 

自分の反省点をとても嬉しそうに喋るようになる

「弓江さん、

これまでの木村さんは、リーダーとして

何をし続けてきたと思いますか?」

 

この私の問いかけに、弓江さんは

 

「あぁそうか。

木村リーダーは必死に、

火消しをし続けていたのですね。

大火事にならないように。」

 

と答えました。

(→前回記事)

 

それを聴いた瞬間に、

「なるほど!!」

と木村さんは叫んだのです。

 

弓江さんがびっくりして

木村さんを見つめます。

 

木村さんは、目を爛々とさせ

私を見つめました。

そして言いました。

 

「たけうちさん、

私は何かとんでもない勘違いを

していたようです。」

 

「どういうことですか?」

 

「私はチームのメンバーに成長してほしいと

心から思っています。」

 

「はい。」

 

「そのために、私なりに考えて

あらゆることをしてきました。

もちろん、間違ったこともしちゃいました。

良かったこともありました。

しかし、成果が出たかどうかは別として、

根元がおかしかったということに

今気づきました。」

 

「根元? それは何ですか?」

 

「はい。私は、

私が皆を育ててやる!

と思っていたんです。」

 

「あぁ、なるほど!」

と、今度は弓江さんが言いました。

「それ、すごくわかります。

そこです。私が違和感を感じてたのは。」

 

「そうなんです。

先ほどこのコーチングの場で、

プロジェクトのミーティングの司会を弓江にしてもらう、

ということを決めたじゃないですか。」

 

「はい。」

 

「実は、あの瞬間から、私の頭のどこかでは、

では、どのように弓江を司会者として育てようか?

という思考が始まっていたのです。」

 

「なるほど。それは疲れますね。」

 

「その通りです。

私がすべての人を育てなければならないと

思っていた。

そして私なりにそれをしていた。

そして私なりに、その責任を負おうとしていた。

責任感そのものは大事だと思いますけどね。

で、皆がまずい行動をすると、

・・・いや、まずい行動をとる前から、

火消しに走っていた。

それが私のリーダーシップだったんです。」

 

「なるほど、そういうことですか。」

 

ここで弓江さんが入ります。

「一見、木村リーダーは

みんなを引っ張って行っているように見えますが、

私から見ると、全然進んでいる感じがしなかったんです。

なんか、火消しばっかりしているようで。

問題が起こる前に問題を消す。

それ自体はいいんですけど。

でも、それって本当に木村リーダーのやりたい

チームなのかな?って。

私の知っている、ロックバンドの木村リーダーは

火消しどころか、みんなに油を注いでいる、

というか。笑」

 

「確かに、ロックバンドの時とは

真逆の私ですね。

さっき弓江は、チームメンバーが活きていない理由は

私のリーダーシップとは別の原因があるのでは、

と言ってくれましたが、

やはり私が原因のようですね。」

 

「いや、でも木村さん。

その件に関しては、そうでもないかもしれませんよ。」

 

「どういうことですか?」

 

「木村さんのリーダーシップを根本的に変える

ということよりも、もっと単純で現実的なことを

ちょっとだけ変えるだけで、

一気に好転するような感覚がありますが、

弓江さん、どう思います?」

 

「私も、なんかそう思えます。

答えはわかりませんけど。」

 

「何となく今回のこの二人コーチングは

弓江さんが責め、木村さんが反省する、

みたいな流れが多いですが(笑)、

そんなに深刻にならなくてもいいような

気がしてきましたよ。

木村さんは、メンバーを育てたいのでしょ?」

 

「はい。」

 

「それは大事にしましょうよ。

ただの手法の問題だと思いますよ。」

 

「そういうものですか。」

 

「チームの真本音は、

『全員がチームの代表として

お客様と向き合う』

でしょ?」

 

「はい。」

 

「そういった木村さんの想いを

もっともっと成果として結びつけるために

何をどう変えるか?を見つけるだけでは

ありませんか?」

 

「なるほど。」

 

「で、その方策は、

そろそろ弓江さんの中から

出てきそうですよ。」

 

「えぇ? 私からですか?」

 

つづく

 

自律のないところに、調和は生まれない

弓江さんの直観的な問い、

「新規事業プロジェクトチームは、

このまま行けば、成功すると思われますか?」

 

これに私は直観的に

「成功しないですね。」

と答えました。

 

その答えを聴いて、弓江さんも木村さんも

何かが腑に落ちました。

(→前回記事)

 

この瞬間、私達3人は

本当に「一つ」になったと

私は実感しました。

 

実はこういった実感は

よくあることです。

こんな時私はいつも、

「すべては自分である」

という言葉に、とても納得します。

 

これは人数の問題ではありません。

 

クライアントさんが一人であろうと二人であろうと、

10人であろうと、100人であろうと、

「一つ」になるときには、本当に「一つ」になれます。

 

しかし、「一つ」になることで

皆がまったく同じ思考や意見を言うようになる

わけではありません。

 

「一つ」だからこそ、

各々の個性がさらに際立ちます。

そして、様々な意見が出ます。

 

しかしそれらの意見が「反発」や「争い」を生み出すことは

ありません。

すべてが「調和」という結果に繋がるための

意見です。

 

「調和」には、「迎合」や「妥協」は

一切ありません。

 

「強制」も「独裁」もありません。

 

本当に皆が納得する、「最善の答え」が

そこにあります。

 

個人個人から「最善の答え」が生み出されるのと同様に

チームにも「最善の答え」が必ずあります。

 

その答えに行き着くための、

最善の「試行錯誤」と「意見交換」が

「一つ」になることで行われます。

 

これは、各々の真本音度合いが高くないと

決して起きない現象です。

 

私はこの状態を

『自律調和』

と呼んでいます。

 

私がチームコーチングをする目的の一つが

この『自律調和』の状態を創ること

です。

 

そしてこの状態に入ると、

物事はさらに加速して進んでいきます。

しかもその時間は各々にとって

幸福感に満ち足りたものとなります。

 

それは例えば、オーケストラが

「一つ」になって最高の演奏をするときの状態と

本質的には同じでしょう。

 

私は弓江さんに問いました。

 

「なぜこのままでは、

新規事業プロジェクトは成功しないのでしょう?」

 

すぐに答えが返ってきました。

 

「今のチームは、

チームとしてまとまっていますが、

悪いまとまり方をしているからだと思います。」

 

「それは、どういうことですか?」

 

と問うと、今度は木村さんが答えました。

 

「人が活きていない。

誰も、最大のパフォーマンスを発揮していません。

というよりもむしろ、

みんな、死んでます。

お互いの力を打ち消し合っています。」

 

「その原因は?」

 

すると弓江さんが、ハッとしたような表情をされ、

次のように言われました。

 

「私はこれまで、原因をすべて木村リーダーの

リーダーシップにあると決めつけていました。

もちろん広義の意味ではそうだと思いますが、

もっと別の原因がありますね。」

 

その一言は、

私にとても伝わってきました。

 

すると、私の中に、別の視点からの問いが

浮かんできました。

私はそれを投げてみました。

 

「弓江さん、

これまでの木村さんは、リーダーとして

何をし続けてきたと思いますか?」

 

弓江さんは少し考えてから

言いました。

 

「あぁそうか。

木村リーダーは必死に、

火消しをし続けていたのですね。

大火事にならないように。」

 

つづく

 

一つになるからこそ、生まれる展開がある

木村さんは、

西畑さんのエンティティを

簡単に浄化できました。

(→前回記事)

 

それにより木村さんの真本音度合いは

さらにアップし、場の次元も高まったのを

私は感じ取りました。

 

であれば、この場を

さらに活用しよう、と思いました。

 

ただし、

私はもう、二人には何も具体的な問いは

投げません。

その必要はないからです。

 

「西畑さんのエンティティの件が完了したところで、

いかがですか、また何か喋りたくなっていることは

ありませんか?」

 

またしても、

弓江さんから「喋りたい空気感」が

伝わって来ました。

 

「弓江さん、まだ喋りたいことが

ありそうですね。」

 

弓江さんは笑いました。

 

「まだあります?

ちょっと待ってください。」

・・・と、心の中を探っています。

 

「喋りたいこと、というよりも、

たけうちさんにお訊きしたいことがあります。」

 

「何です?」

 

「新規事業プロジェクトチームは、

このまま行けば、成功すると思われますか?」

 

その瞬間、私に直観がありました。

私はそれをそのまま口に出しました。

 

「成功しないですね。」

 

その答えを受けて弓江さんは

言われました。

 

「なぜかすごく納得します。」

 

「弓江さん自身も、まずい、と

思ってるんでしょ?」

 

「はい。どうやら思っているようです。」

 

そこで、木村さんも入って来ました。

 

「実は私も、何となくそう思っていた、

ということに今、気がつきました。」

 

「恐らく、3人ともが本当はそう感じていて、

そのために、今日のこの場があるのでは

ありませんか?

今、自覚しましたけど。」

と私が言うと、

二人とも、大きく頷きました。

 

どうやら、ここまでが準備段階だった

ようです。

 

ここからが本当の本題だったようです。

 

しかし、このような展開になることは

二人はおろか、私も想定していたわけでは

ありません。

 

しかし、このような展開は

よくあることです。

 

お互いがしっかりと向き合い、

真本音度合いを高め合うことによって初めて

「ここにいる」本当の意味がわかるのです。

 

「どうやらここからの話こそが、

今日の目的のようですね。」

 

二人はまた大きく

頷きました。

 

私達はこの時、

完全に「一つ」になっていました。

 

コーチングやチームコーチングの場において

よく私が感じることなのですが、

目の前の二人は、

私そのものでした。

 

姿と個性と人生経験と能力の違う

私そのものでした。

 

3人の私がこれから

対話をするのです。

 

つづく

 

なぜ苦しい? その答えは、進まない、から

「進む人」と「進まない人」。

 

今、私達人間の傾向は、

この二つにクッキリと分かれています。

 

どれだけ意識の次元が高くても、

進まなくなってしまった人がいます。

 

逆に、どれだけ意識の次元が低く未熟でも

前に進もうとする人もいます。

 

今の自分がどのレベルにいるか?

ではなく、

進むか? 進まないか?

それこそが、とてつもなく重要であると

私は最近、強く実感しています。

 

人は、進む生き物です。

 

「進む」ということを一つの形として

現したものが、人であるとも言えます。

 

逆に言えば、

進まなくなった人は、もう人ではない、

人としての本質を捨ててしまっている、

と言っても、本当は言い過ぎではありません。

 

それを最もよく理解しているのが

私達の「本能」です。

 

私達の「本能」は、進むために存在しています。

ところが、

進むことを放棄してしまうことで、

私達は、本能的に、自分自身のことを

嫌います。

 

自分のことを嫌うことで

大量発生するのが

エンティティです。

 

「進む」と言ってもそれは

苦しいことではありません。

 

私達人間は、

川の流れに身を委ねているような

存在です。

 

流れに身を委ねれば、

自然に進んで行くのです。

 

むしろ、進むのを放棄するということは、

川の流れに逆らいながら、

その場に必死に留まろうとする行為です。

その方が間違いなく不自然ですし、

苦しいのです。

 

しかし、にも関わらず

止まってしまう人がいます。

 

本当は、進むことこそが気持ちが良いのに、

今の自分に執着しすぎてしまっているのです。

 

流れに逆らうことによって

大量発生するのが

エンティティです。

 

エンティティを大量発生させてしまった人は

そのエンティティが気持ち悪く、

エンティティを消そうとします。

 

自らのエンティティと戦うのです。

 

しかしエンティティとは、

消そうとしたり、戦おうとすることで

逆に反発するかのように増大します。

 

その負の循環から

抜け出せなくなります。

 

西畑さんはその状態にあり、

その西畑さんのエンティティを

木村さんは受け取ってしまっていました。

 

エンティティから解放されるための手段は

ただ一つ。

そのエンティティを、愛することです。

 

それにより、

エンティティは浄化されます。

 

以前にこのブログでも書かせていただきましたが、

「愛」とは行為ではありません。

 

「愛」とは、エネルギーそのものです。

 

分離しているものが、

一つになろうとするときに自然発生する

エネルギーです。

 

そのエネルギーは誰もが

持ち合わせています。

 

しかしそのエネルギーを実際に

発揮できるかどうかは、

その人が「進む」かどうか?によります。

 

進むのを放棄している人からは

愛というエネルギーは発せられません。

 

進む人は、それだけで

愛のエネルギーは出ます。

そして、

次元を高めれば高めるほど、

そのパワーは2次曲線的に増大します。

 

私は木村さんに、

「木村さん、

その西畑さんのエンティティを

愛せますか?」

と問いました。

(→前々回記事)

 

恐らく、二人コーチングの開始直後の木村さんなら

嫌がっていたでしょう。

 

しかし、弓江さんとの二人コーチングの時間を

過ごすことにより、

木村さんの真本音度合いは一気に

高まっていました。

 

ですから木村さんは何の躊躇もなく

言われました。

「愛せますよ」と。

 

であれば、あとは簡単です。

 

「木村さん、

木村さんの愛は、どこから出やすいと

思いますか?」

 

「・・・そうですね。

右手かな?」

 

「であれば、右手を背中か肩か、

最も苦しい部分に当てることはできますか?」

 

木村さんは左肩の辺りに右手を

当てました。

 

「ここだと思います。」

 

「では、右手から

愛のエネルギーをエンティティに

注いであげてください。」

 

「はい。」

 

ほんの20秒くらいでしょうか、

ふっと、木村さんの全身が軽くなった感覚が

私に伝わって来ました。

と同時に、

「もう終わった気がします」

と木村さん。

 

これでもう、エンティティは

浄化されました。

 

「木村さん、

気分はいかがですか?」

 

「なんか、

すごく全身が軽くなりました。

自由になれた感じがします。」

 

これにより、

木村さんの真本音度合いは

さらにアップしました。

 

つづく

 

今、生まれ変わろうとしている人が、実に多いのです

人生には節目があります。

 

生まれ変わる、という言葉がありますが、

実は私達の人生には、何度も

その「生まれ変わり」の瞬間が訪れます。

 

一度、これまでの自分をすべて「リセット」し、

まったく新たな自分として、

人生を再スタートさせる。

 

そのように、自分自身の真本音が決めている

瞬間であり、

それは人生において、何度もあることではないのですが、

何度かは、必ず訪れます。

 

その節目において、

しっかりと、生まれ変わることができるかどうか?

 

つまりは、

これまでの自分を一度、リセットできるかどうか?

 

それがその後の人生の展開を

大きく左右します。

 

ただしリセットと言っても、

それは現象レベル(現実レベル)の話では

ありません。

 

今の職を辞めなさいとか、

離婚しなさいとか、

友達付き合いを変えなさいとか、

そういった現実レベルのことではありません。

 

あくまでも、心の問題です。

私の言葉で言えば、

「心の中の実在を変える」

ということです。

 

ところが、この生まれ変わる瞬間を

逃してしまう人が多いのです。

 

これまでの自分に執着してしまうのです。

 

これまでの私はこうだった。

このようにすれば上手くいった。

だから、これからもその通りでいたい。

・・・と。

 

せっかく、生まれ変わるチャンスが来ているのに、

それを自覚しないどころか、

執着をすることで、何も変わらない、

という人が多いのです。

 

そうなると、どうなるか?

 

人生の「苦しみ」の度合いが

一気に深まります。

 

そしてそれが、現象化(現実化)します。

 

これまで、何となく上手くいっていたことが、

突然、上手くいかなくなった。

 

これまで、誤魔化し誤魔化しできたことが

まったく通用しなくなった。

 

これまで、後回し後回しにしてきたことが

どうにも逃げ道がなくなった。

 

そのような現実が目の前に現れる場合は、

自分がこれまでの自分に執着してしまい、

生まれ変わりのチャンスを逸しようとしている

わかりやすい合図です。

 

もしそういった現実が目の前に

あるのであれば、

今からでも遅くはありません。

「生まれ変わろう」と決めることが

とても重要です。

 

なぜこのようなことを書くかと言いますと、

今その「生まれ変わり」のチャンスに

恵まれている人が、

かつて私が経験したことのないくらいに

多いからです。

 

みんなが同時に生まれ変わろうとしているのかな、

と強く実感します。

 

恐らくですが、

この2017年の内に生まれ変わり、

2018年から、新たな自分として再出発しようと

真本音レベルで決めている人が

多いのではないでしょうか。

 

ですから、ここのところの私のコーチングは、

生まれ変わろうとしている人が、

きちんとこれまでの自分を手放せるように

サポートすることが主になっています。

 

これまでの自分を

手放すのです。

 

これまでの自分のパターンを

手放すということです。

 

心の中で強く

決めるだけでも良いのです。

 

「私は生まれ変わる」と。

 

そして、

これまでの自分の経験やパターンに捕らわれず、

ただただ、目の前に展開する「現実」に

ありのままに向かい合ってみてください。

 

自分の思考によって

物事の判断をすれば、これまでの自分に

捕らわれてしまいます。

 

そうではなく、

「現実」と向かい合おうと決めた上で、

自分の中から生まれる直観を大事にしてください。

 

その直観は、

「え〜っ? そんなことできないよ」

と思われるものかもしれません。

 

これまでの自分のパターンからは

考えられない行動の取り方かもしれません。

 

でも、その直観に素直に

なってください。

 

それが、生まれ変わる、ということです。

 

今回はちょっと

木村さん、弓江さんの二人コーチングのお話は

お休みです。

 

どうしても今、書かねばと思いましたので、

生まれ変わりについて

書かせていただきました。

 

明日からまた、

木村さんストーリーに戻ります。

 

つづく

 

無理に夢は描かない方がいい

「夢を持つといい」

とよく言われます。

 

「夢を持ち、それに向かう人生が

素晴らしい」と。

 

確かにそうかも知れません。

 

しかしその「夢」とは

真本音であることが重要です。

 

反応本音レベルの「夢」であれば、

それを大事にし、

それに向かう努力をすればするほど、

ストレスが発生します。

 

そして、「夢」に生真面目に

向かう人であればあるほど、

そのストレスは密度を増し、

いつの間にか、エンティティが発生します。

 

つまりその場合、

夢を持つことで、その人は

苦しみの人生を歩むことになるのです。

 

ですから私はいつも

申し上げます。

 

「無理な夢は描かない方がいい」と。

 

「夢」というものは、

真本音で「今日を生きる」ことの連続により、

自然に「顕在化」します。

 

「顕在化」と書いたのには

理由があります。

 

「夢」とは、もともと私達の中に

私達の真本音の中に、

確かに存在しているものだからです。

 

存在しているのに、自分で気づいていない。

・・・それが多くの人の状態です。

 

逆に言えば、

存在しているのだから、

それを掘り起こせばいい、

ということになります。

 

そして、掘り起こすためには、

今この瞬間を、

今日というこの一日を

真本音で生きることです。

 

これをする人は、

普通に、当たり前に、自然に

夢がわかります。

夢に向かう人生となります。

 

それは決して

力こぶを入れるような

「がんばり」を必要とするものではなく、

ただただ単純に、純粋に、淡々と

そこに向かっていくだけのことです。

 

ただし、

そんな毎日に入れば、

人の心は、常に満たされた状態となります。

 

本当の夢とは、

それを実現できたかどうかよりも、

それに向かう一歩一歩こそが

幸せだからです。

 

しかしそれが真本音の夢であるならば、

それは必ず実現しますけどね。

 

真本音で今を生きれば、

真本音の夢が見つかり、

真本音の夢が見つかれば、

今を、満ち足りた自分として

自然に生きることができる。

 

要するに、そういうことになります。

 

私は、

それこそが「普通の人生」であると

思います。

 

「普通の人間の姿」であると

思います。

 

その「普通」を

すべての人がすればいいのに、

と思うのです。

 

そんな「普通」を取り戻すことが

私のコーチングの目的の

重要な一つです。

 

さて、

エンティティのお話に戻りますが、

エンティティとは、

そういった「普通」ではない状態の時に

発生します。

 

ほとんどの人から私はエンティティを

受け取るのですが、

ということは、ほとんどの人が

「普通の人生」を生きていない

ということでもありますね。

 

西畑さんという人は、

そういった意味で、

「普通の人生」の真逆を行っている

のかも知れません。

(→前回記事)

 

そして木村さんも、

真本音度合いが下がってしまう時は、

「普通の人生」の真逆を

行ってしまう傾向にあります。

 

しかもその二人の「傾向」が

似通っていたために、

悪い意味での「共感」をしてしまい、

西畑さんのエンティティが

木村さんに乗り移る、ということが

どうやら起きているようです。

 

以前に西畑さんと面談した時、

彼は木村さんのことを

「同志です」

と言いました。

 

しかし、木村さんに張り付いた

西畑さんのエンティティに意識を向けると、

木村さんは、

「お前を引きずり落としてやる。

そう西畑のエンティティは言っています。」

と言われました。

 

西畑さんが嘘を言っているわけでは

ありません。

彼は、顕在意識では本当に

「同志である」

と思っているのです。

 

しかし、彼自身が「普通ではない生き方」を

してしまっているために、

「普通の生き方をしよう」としている木村さん、

・・・つまりは、真本音度合いを高めている木村さんに対して

「羨ましい」というところから、

「引きずり落としてやる」

というエンティティを生んでしまっているのでしょう。

 

実はこのパターン、

非常に多いです。

 

組織においては、

このパターンのエンティティを除去するだけで、

チームの雰囲気が大きく変わる、

ということが、これまでは何度もありました。

 

さぁ、ではまずは、

木村さんを西畑さんのエンティティから

解放させてあげなければなりません。

 

私は木村さんに言いました。

 

「木村さん、

その西畑さんのエンティティを

愛せますか?」

 

つづく

 

自分のことは決してわからない、・・・それが人間かも

人は、

自分のことを理解していません。

 

それは、本当に多くの人達と向き合い続けた中での

私の現場での実感です。

 

いえ、私だって、自分のことを

理解できていません。

 

私は、「セルフコーチング」というものについて

本当に探究をし続けてきました。

ある意味、毎日24時間、セルフコーチングについて

考え、探究し続けている、と言っても

決して言い過ぎではありません。

 

セルフコーチングとは

自分と向き合うことです。

 

自分としっかり向き合うことによって

自分の中にある「本当の答え」を

見出します。

 

そのセルフコーチング力を、

いかにすれば高めることができるか?

を探究し続けてきました。

 

そんな私でも、

何日も答えの見出せなかったことを、

私以外の別の人と5分くらい話すだけで

えっ?とびっくりするくらい意外な答えを

見つけることが、今だにあります。

 

私自身が見つけられなかった答えを

人から指摘されることもあります。

 

その度に思うのです。

 

本当に人っていうのは、

自分のことがわからないのだな、と。

 

いえ、ひょっとすると

「自分のことをわからないように、

わざと創られている」のが

私達人間ではないか、

それは、私達人間にとって、

とても大事な要素なのではないか、

とさえ思います。

 

ですから私はよくお伝えします。

「自分のことをわかったつもりに

ならない方がよいですよ」

と。

 

「自分のことは自分が一番理解できない」

くらいに思っていた方がいいですよ、

と。

 

しかしそれを受け入れた途端に、

人生は、より楽しいものになります。

 

「自分」という理解不能な存在と

ずっと寄り添い続けるのが人生。

その、面白さを実感できるように

なるのではないでしょうか。

 

エンティティとは、

自分のことを理解できない、という意味では

最後まで理解不能のものの一つ

かも知れません。

 

エンティティは

誰にでも、あります。

 

私はコーチングをしていて、

クライアントさんからエンティティを受け取らない

日は、ほぼありません。

 

例えば、

もの凄く、人を大事にされている人の

コーチングをすると、決まって、

人に対する恨みや憎しみや

人を陥れてやろう、という意図に基づいた

エンティティを受け取ります。

 

かと言って、

その人の「人を大事にする」というのが

嘘である、ということではありません。

その人は、本当に

人を大事にされているのです。

 

でも、エンティティは

その真逆のものが発生したりします。

 

これがある意味、

私達人間の面白さなのかも知れません。

 

木村さんと弓江さんの二人コーチング。

その場で、

木村さんが、西畑さんからもらったエンティティと

向き合っている場面に戻りましょう。

(→前回記事)

 

どうやら、木村さんの肩から背中にかけて

西畑さんのエンティティが

張り付いているようです。

 

そのエンティティに意識を向けた時、

木村さんはそれを

「西畑が私にしがみついている」

と表現しました。

 

「その、しがみついている西畑さんは

何か喋っていますか?」

 

と私が問うと、

木村さんは言われました。

 

「お前を引きずり落としてやる。

そう西畑のエンティティは言っています。」

 

つづく

 

これを「幽霊」と言うのかも知れません

エンティティは、多かれ少なかれ、

必ず誰もが持っています。

まったく持っていないという人は

恐らく1%もいないでしょう。

(→【取り憑いているものとは何か】)

 

しかもエンティティとは、

人から人へ伝染する、まるで

風邪のウィルスのようなものです。

「物質である」と言ってもよいでしょう。

 

霊感の強い人は、

これを「幽霊である」と認識するかもしれません。

 

でもその「幽霊」は、

どこかしこに、存在しています。

あって当たり前のものです。

 

そして、何かの「共鳴」が起こることで、

かなり強烈なエンティティが

人から人に乗り移ります。

 

西畑さんから木村さんには

何か強烈なエンティティが移動しやすい、

という傾向にあるわけです。

(→前回記事)

 

その「共鳴」とは恐らく、

反応本音レベルでの二人の共通の

パターンによって引き起こされています。

 

私は以前に西畑さんと一度、

面談をしました。

(→【この人のことは、あきらめよう】)

 

そこで感じたのは、

西畑さんの心の中にある強烈な

「面倒臭い」という反応本音の塊です。

 

それは、

「人生は面倒臭い」とか

「生きることが面倒臭い」という

かなり根本的な面倒臭さでした。

 

こういった人は、

無意識レベルで、「現実逃避」に入ります。

 

常に、「現実逃避」した状態で

生き続けます。

 

それにより、真本音度合いを著しく

減退させます。

 

西畑さんと面談した時、

私はその傾向があまりに強く感じられたので、

西畑さんそのものを何とかしようという方向性を

あきらめたのです。

それよりも、

木村さんをもっと強くすることで結果として

西畑さんに好影響を与えようと

判断しました。

 

一方の木村さんも、

彼の反応本音レベルのクセが強く出ると、

彼は、イケイケどんどんになるか、

逆に、ウジウジした引きこもり的になるか、

その両極端を行き来していました。

そうなっている時の彼は

「現実逃避」の塊であると言ってもよいでしょう。

 

つまりその「現実逃避」の生き方に関して

西畑さんと木村さんは「共鳴」をしてしまい、

西畑さんの生み出したエンティティは

木村さんに乗り移っていく、

という現実を引き起こしていたのでしょう。

 

私はこういったこともすべて

この二人コーチングの場で、

木村さんにご説明しました。

 

「かなり納得します」

と木村さんは言われました。

 

西畑さんの「現実逃避ぶり」を

ある意味最もよくわかっていたのは、

木村さんだったかも知れません。

 

そして今、

木村さんの背中に、わずかですが

西畑さんから移ってきたエンティティが

張り付いているようです。

 

彼はそこに意識を向けました。

 

「どうですか?

そこに意識を向けると、

何か見えますか?」

 

しばらく木村さんは黙っていましたが、

「なんか、西畑が私に

しがみついている姿が見えます」

と答えました。

 

それはかなり的確な表現でした。

 

実は私にも、

西畑さんが木村さんにしがみついているような

感覚が伝わってきていたからです。

 

「その、しがみついている西畑さんは

何か喋っていますか?」

 

と私が問うと、

木村さんは恐ろしい一言を

言いました。

 

つづく

 

「一つ」になれば、質問すら要らなくなる

これからは弓江さんが

新規事業プロジェクトチームのミーティングの司会を

「コーチ」として行なうことが決まりました。

(→前回記事)

 

木村さんと弓江さんの二人コーチングは

さらに続きます。

 

もうこの頃になると、

私達3人は完全に「一つ」になっています。

 

もちろんそれは感覚的なものです。

 

でも私は、二人の呼吸が

手に取るようにわかるようになっていました。

 

そんな時、私はいつも

あえて私が「問い」を創ることをやめてしまいます。

そして、

次のように言葉をかけたりします。

 

「ここまでの流れとまったく関係なくてもよいので、

何か喋りたいことはありますか?」

 

・・・と、二人に投げます。

 

すると、自然に「喋りたい空気感」が

どちらかから伝わってきます。

 

今回は弓江さんから伝わってきました。

 

「弓江さん、

何か喋りたいことがあるのでは?」

 

そう言われて弓江さんは最初、

「え〜、何か私、喋りたがってます?」

と言いましたが、ふと、思い出したように、

「あっ、あります!」

と答えました。

 

「全然関係のないことなのですが、

それでもいいですか?」

 

「はい、大丈夫ですよ。」

 

「木村リーダーって、西畑さんとお話しすると、

いつも何かおかしくなりません?

何かに取り憑かれたようになる、というか・・・。」

 

そうでした。

 

私が、木村さんと弓江さんの二人コーチングを

しようと思った直接のきっかけは、

西畑さんからの「エンティティ」でした。

(→【取り憑かれるのは普通のこと】)

 

どうやら木村さんが西畑さんから

強烈なエンティティを受け取っているらしい、ということを

弓江さんの「観察」によって私は知ったのです。

 

私は、エンティティについて、

二人に詳しく説明をしました。

 

その話を聴いて木村さんは、

「とてもよくわかります」

と言われました。

 

「西畑と喋った後は、なぜがいつも

すごく疲れるんです。

私は彼とは仲がいいし、気も合うと思っているのですが、

なぜか時々、すごく疲れるんです。

まぁ、何かの偶然なんだろうな、と思っていました。」

 

「いつも、体のどの辺りが

疲れますか?」

 

「・・・そうですね。

肩から背中にかけて、ドーンと重くなると言うか。

鉛が乗っかっていると言うか。」

 

「今はどうですか?

その感覚はあります?」

 

木村さんは、ジーッと肩や背中に

意識を向けているようでした。

 

「何となくですが、

ちょっとだけ重い感じがします。」

 

「あぁじゃあ、今も少しだけ

エンティティが憑いているかも知れませんね。」

 

「ホントですか?」

 

「はい、ちょっと見てみますか?」

 

つづく

 

確信を持った指示は、押しつけでもいい

木村さんは、新規事業プロジェクトチームの

真本音を「理念」として言語化することが

できました。

 

それが、

『全員がチームの代表として

お客様と向き合う』

です。

(→前回記事)

 

言語化することで、

自分自身がこの理念に外れる行動をとっていたことを

木村さんは自覚しました。

 

彼は、とても清々しい表情で

「自分は間違っていた」

と言いました。

自分が正しいとか間違っているとか、そんなことよりも

真本音の理念を見つけ出した喜びの方が

大きかったのでしょう。

 

もちろん、弓江さんも喜びました。

 

木村さんが「間違っていた」と言った時、

弓江さんは、「そうでしょう!」と相づち。

そして二人で笑い合いました。

 

いい感じです。

 

すかさず私は次の問いを投げました。

 

「弓江さん、

弓江さんは木村さんをサポートするために

何をすればよいですか?」

 

「えっ?」

 

「今ならわかるのではありませんか?」

 

弓江さんは少し目を瞑って考えました。

 

そしてこう言ったのです。

 

「木村リーダー、

私は木村リーダーに何をすれば

サポートになりますか?」

 

この一言。

 

これは本当に木村さんには嬉しかった

ようです。

 

「えっ、そう言われてもなぁ・・・。」

と言いながら、とても嬉しそうな表情。

 

「木村さん、

ここはしっかり考えて、弓江さんに

指示を出してください。

真本音の指示を。」

 

しばらく木村さんは考え、

言いました。

 

「私と一緒にミーティングの場を

創ってください。

弓江さんにミーティングの司会を

お願いします。」

 

これには弓江さんが驚きました。

 

「えっ? 私が司会ですか?

いや、私は司会の経験はありませんし、

向いていないと思います。」

 

「いや、私は弓江さんに司会をしてもらいたい。

それが、とてもいい気がする。

たけうちさん、どうです?」

 

私は大賛成でした。

 

「実はね、木村さん。

弓江さんにはコーチの才能があるんですよ。」

 

「そうですか!

実は今、私も何となくそんな気がして。

私は以前、自分がプロのコーチになるなんてことを

言っていましたが、私なんかよりも

弓江の方がいいかな、って思ったんです。」

 

さすが木村さんです。

 

「弓江さん、私が弓江さんに司会のやり方を

教えますので、やってみませんか?

司会というよりも、チームコーチングのコーチ役

ですよ。」

 

最初、弓江さんは「え〜っ?」と言いながら

拒んでいましたが、

木村さんが、「これはリーダーとしての指示です」

の一言で、あきらめました。笑

 

「そのかわり、しっかりと事前準備をしましょう。

ミーティングの目的と、

そこでどのような問いを投げるか?を

しっかり準備しましょう。

その上で、あとはアドリブでやればいいんです。

コツはすべて私が教えます。」

 

ということで、弓江さんは司会をやることに

なりました。

 

今思えば、これが本当に

運命の分かれ道でした。

 

司会をすることで弓江さんは、

本来彼女が持っていた天性の力を

ぐんぐん発揮することになります。

 

彼女こそ、

プロのコーチと言ってもよいくらいの

力を持っていたのです。

 

つづく

 

チームの理念は、できあがってから言語化する

「たけうちさん、

私はどうやら間違っていたようです。」

 

木村さんは、そう言われました。

(→前回記事)

そう言いながらも、その彼のあまりの清々しい表情に

一瞬私は惹き込まれました。

 

彼は続けました。

 

「弓江はいつも、このチームの真本音の視点から

意見を言い続けてくれていたんです。

それがようやく今、わかりました。」

 

チームの真本音

『全員がチームの代表として

お客様と向き合う』

 

弓江さんは常に、この視点を持ち続けた

唯一のチーム員であると、

木村さんは言われたのです。

 

これには弓江さんも納得されました。

 

「そうです。

言われてみれば、私はいつも

それを大切にしていました。

このチームの真本音と別の行動を見る度に

苛立っている自分がいました。

特に、木村リーダーが外れた行動をとると

イライラが止まりませんでした。」

 

このチームの真本音は木村さんが

表現した言葉です。

しかしそれは木村さんの「解釈」の言葉

ではありません。

 

つまり、木村さんの言葉でありながら、

木村さん一人の言葉ではありません。

 

こういったことが、真本音度合いが高まりますと

当たり前のように起こります。

 

チームの真本音というのは、

そのチーム員全員が自然に生み出します。

それは最初は言葉にはなりません。

しかしチームが真本音度合いを高めながら

一つになっていくと、自然にそれが

言語化されるようになります。

 

それこそが、そのチームにとっての

本当の「理念」です。

 

木村さんのチームには、その理念が

言葉ではなく、すでに「何となく」できあがっていました。

それはそれだけチームが一体化した証拠です。

 

その「何となく」できあがっていた理念を

木村さんは、あるがままにキャッチし

言語化したのです。

それが

『全員がチームの代表として

お客様と向き合う』

ということでした。

 

ですので、これは木村さん一人のものでは

ありません。

「みんなのもの」を木村さんがキャッチしただけ

ですので、弓江さんが共感するのは当然なのです。

 

今回は、木村さんのチームを例にして

お話しさせていただいていますが、

私は常に、このような理念の創り方を

大切にしています。

 

チームに理念が醸成される前に無理に

理念を言語化して創るのではなく、

無意識レベルで、チームに真本音の理念が

醸成されるのを促し、

それができた時点で言語化する、という

ステップです。

 

それをすれば、本物の理念になります。

皆の魂が入ります。

 

そして、やはり私は

チーム(組織)の理念は、言語化することを

お勧めします。

 

なぜなら、

言語化することで、簡単に意識を向けることが

できるからです。

そして言語化することで、

それが、本当に真本音によるものならば、

私達の心は非常にスッキリします。

これまでの迷いやモヤモヤが

払拭されるからです。

 

この時の木村さんが

まさしくそうでした。

 

チームの理念を言語化することで、

彼は、自分の中の淀みに気づいたのです。

 

そして、チーム員の中で、

最も理念に対して淀みない心で向き合っていのが

弓江さんであるということに気づいたのです。

 

『全員がチームの代表として

お客様と向き合う』

 

「私はこれと真逆のことをしていたかも

知れません。」

 

と木村さんは呟きました。

 

つづく

 

覚悟を持てば、すべてが観える

「覚悟」という言葉があります。

 

辞書をひきますと、

いろんな意味が書かれていますが、その中に

 

「迷いを脱し、真理を悟ること」

 

とあります。

 

私はこれまでコーチングの場面で、

クライアントさんの「覚悟の目線」というのを

数多く拝見してきました。

 

その人が覚悟を持った瞬間に現れる

独特の目線です。

 

独特の目の輝きもあります。

 

覚悟を持った目(目線)は非常に清々しく、

私は、その目(目線)と向き合うたびに、

人の本質的な強さと素晴らしさを

体感します。

 

そういった意味で言えば、

毎日当たり前のように

覚悟の目(目線)を持ちながら生きている人も

います。

 

そんな人とは

一緒にいるだけで、癒されます。

 

人は、「覚悟」を持つと

楽になります。

人生を生きることそのものの根源的な

「楽」を得るのです。

 

逆に言えば、覚悟を持たないからこそ

悩み苦しむと言ってもよいでしょう。

 

覚悟を持てない状態から、

覚悟を持てる状態へ。

それが、私のコーチングの重要な一つの

目的です。

 

木村さんと弓江さんの二人コーチング。

(→前回記事)

 

その中で、ついに木村さんが

覚悟の目(目線)を見せました。

 

新規事業プロジェクトチームの真本音は

 

『全員がチームの代表として

お客様と向き合う』

 

・・・と、木村さん自らが見出した瞬間にです。

 

その時の彼の目を見たときに、私は

彼を覆っていた何物かが壊れた、

もしくは、取り払われたことを知りました。

 

木村さんの発する空気感と言いますか、

エネルギーと言いますか。

そういったものがグワッと私に向かってきました。

 

それはとても心地良いものでした。

 

と、次の瞬間、

木村さんは、フッと肩の力を抜きました。

 

彼は、微笑みました。

 

そして言ったのです。

 

「なるほど。弓江の言う通りです。

弓江さん、君はやっぱり凄いよ。

君の凄さが今、ようやくわかったよ。」

 

弓江さんは、目を白黒させました。

 

「たけうちさん、

私はどうやら間違っていたようです。」

 

そう言って彼は

びっくりするような素敵な笑顔を見せました。

 

あぁ、本当の木村さんが開放されたな、と

私は直観しました。

 

つづく

 

次元を高めなければ、見出せないものがある

皆さんは、「次元が上がる」という体験を

されたことがあるでしょうか?

 

企業現場でも

「なんか、今回の会議、いつもと次元が

違ったよな」

とか

「この事業部は絶対次元が高いよな」

とか、

本当に時折ですが、社員さん達が自然に

「次元」という言葉を使っているのを

聴くことがあります。

 

チームコーチングをやっていますと、

実は、毎度のように私は次元の高まる瞬間を

体験しています。

 

あまりにも急激な高まりの場合は、

私の体全体がフワッと無重力状態のように

浮き上がる感じさえします。

 

実際にある時の研修では、

私は講義中に一瞬倒れそうになりました。

それくらいに、

一気にそこにいる皆さんの次元が

上がったのです。

 

次元が上がると、

心が開放されるのと同時に、

そこにいる他の皆さんとの繋がり感が

一気に深まります。

 

わかりやすい体験で言えば、

コンサートやライブで

演奏者(ミュージシャン)とお客さんとが

一つになることがあります。

演奏者同士が完全に一つに繋がってしまうことも

あるそうです。

 

それに近いです。

 

が、そのような特殊な空間や、何かに熱狂しないと

訪れないもの、でもありません。

 

単純に言えば、

真本音度合いの高い人と向き合っていると

自然に次元は上がって行きます。

 

次元が上がれば、

発想が変わります。

 

それにより、これまでずっと答えの出なかった難問の

答えが突然見出せたりします。

 

例えば、

AかBか?で悩んでいたことがあったとしても、

次元が高まると、

「そんなのはどちらでもいいじゃん」

という気持ちになり、

AかBか?から解放され、

その結果、これまででは及びもつかなかった答えに

行き着きます。

 

迷いが迷いではなくなります。

葛藤がなくなります。

 

真本音度合いの高まりは、

自然に次元を高め、

それにより、これまでとは全く別次元の

発想と行動を生み出します。

 

それを組織やチームで起こしていくのが

チームコーチングの本質です。

 

ちなみに、

次元にはいくつかの階層があります。

その具体的な解説も、いつかこのブログで

書かせていただくつもりです。

 

さて。

 

木村さんと弓江さんの二人コーチング。

 

弓江さんが真本音の想いを

静かに語ったことで、

場の次元が一気に高まりました。

(→前回記事)

 

ここからがチームコーチングの

本番です。

 

弓江さんが言われた想いについて、

私はあえて木村さんにその返事を

促しませんでした。

 

あれだけの想いを弓江さんは語ったのですから、

それについてしっかりと返事をすることが

礼儀であり、かつ、誠実さであると

「一般的には」

思いますが、

次元の高まった状態では、それよりも

大切なことがあるのです。

 

弓江さんの言葉により、

明らかに木村さんの心の扉が開きました。

それを感じ取った私は、

すかさず、木村さんに問うたのです。

 

「木村さん、

新規事業プロジェクトチームの真本音

は何だと思いますか?」

 

「チームの真本音、ですか?

それは、チームの方針ということですか?」

 

「いえ、すでに決まったいる方針のことを

今は言っているのではありません。

一人一人の個人と同じように、

チームや組織そのものにも、真本音はあります。

正確に言えば、

個人の真本音は最初からありますが、

チームの真本音は、最初はありません。

しかしそのチームを構成する人達が

自然発生的に生み出すことができるのです。

どうでしょうか?

もう新規事業プロジェクトチームには

真本音が生み出されたのではありませんか?」

 

すると木村さんは

直観的に答えました。

この直観が、ほしかったのです。

 

「いえ、もうすぐ生み出せると思いますが、

まだその直前にいます。

まだ、このチームに真本音はできあがっていません。」

 

「でも、それが何か?はわかるのでは?

チームの真本音を言語化すると、どうなりますか?」

 

木村さんは少し目をつぶりました。

そしておもむろに開け、

 

『全員がチームの代表として

お客様と向き合う』

です。

 

と答えました。

 

その瞬間、木村さんは私をまっすぐに見つめました。

その彼の目の輝きを見て、

危うく私は涙をこぼしそうになりました。

 

つづく

 

心を開き合うだけでは足りません

木村さんと弓江さんの二人コーチング。

(→前回記事)

 

二人とも短時間でオープンマインドと

なりました。

場の空気があたたかくなってきました。

 

ここで私は一気に場の次元を上げることを

しました。

普通では、なかなか投げない質問を

あえて弓江さんに投げました。

弓江さんの真本音の高まりを感じ取った

からです。

 

「弓江さんの人生の目的は何ですか?」

 

虚を衝かれた弓江さんは

一瞬、フリーズしました。

 

しかしさすが弓江さんです。

これまでの私のやりとりの中で、

私の無茶振りに慣れてきていたようです。

こういった時は何も考えず

ただ口を動かせばいい、というコツを

すでに掴んでいました。

 

彼女はとっさに答えたのです。

 

「リーダーのサポートです。」

 

答えながらも、弓江さん自身が

その答えに驚いていたようでした。

 

「どんな意味かわかります?」

 

と私が問うと、

 

「私はずっと探してるんです。

自分が全力でサポートしようとするリーダーを。

それは仕事の上、だけでもない気がします。

例えば私の人生のパートナーとなる人とか。

私は、自分がサポートしたい人を見つけ、

その人を全力でサポートしたいのだと思います。」

 

考えて言葉にしているわけではありません。

言葉が溢れ出ている感じです。

自分で答えながら、自分で驚いている、

という状態です。

 

実はこれは日常茶飯事です。

特別なことではありません。

自分自身が抑えていた想いや願いは、

ほんのちょっとしたきっかけでフタを開け、

一気に溢れ出ることがあるのです。

 

ただしそれができるのは、

真本音度合いが高まっている時に

限ります。

 

「弓江さん、

目の前にいる木村リーダーは、

弓江さんが全力でサポートしたいリーダーですか?」

 

私は単刀直入に訊きました。

 

「はい、そうです。」

 

と答えながら、

弓江さんは目に涙を浮かべました。

 

「でも、今の私には、それをするだけの力が

ありません。」

 

木村さんは茫然とその様子を

見ていました。

 

「木村さん、

実はこれが、弓江さんの真本音です。

弓江さんは真本音で木村さんをサポートしたいと

思ってるんですよ。」

 

「は、はぁ・・・。」

 

「でもね、弓江さん。

木村さんに言いたいことがあるのでしょ?

せっかくなので、全部言っちゃいましょうよ。」

 

弓江さんは、肚を決めたように

喋り出しました。

 

「今の木村リーダーは、全然木村リーダーらしく

ないんです。

私は、木村リーダーがロックバンドをしているのを

ライブで見たことがあります。

あぁこれが、この人の本当の姿なんだと感動しました。

でもそれが全く仕事では出ていません。

特に、新規事業プロジェクトが始まってからは。

いい子ちゃんリーダーになってしまっている感じが

するんです。

でも、私は木村リーダーを尊敬しています。

木村リーダーがあのロックバンドのような姿を見せれば、

みんなついてくると思うんです。

私は、そんな木村リーダーになってほしい。

そのために私ができることがあるなら、

何でもしたいと思ってるんです。」

 

涙を流しながら、

しかし静かに彼女は語りました。

 

その瞬間、

私は、その場の次元が一気に高まったのを

感じました。

 

これは私独自の感覚なのかも知れませんが、

次元が一気に高まると、

私はその場全体がまるで霧がかかったように

真っ白に見えるのです。

と同時に、何かが開放された感覚がします。

 

弓江さんの顔も、木村さんの顔も

何か憑き物が落ちたような自然さが

漂いました。

 

さぁ、実はここまでが準備段階です。

 

私はこの状態にしたいのです。

 

次元が高まることで、

私だけでなく、その場にいる全員が

真本音コミュニケーションを

自然にできる状態です。

 

ここからが

チームコーチングの本当の意味での

スタートなのです。

 

つづく

 

素直になるだけで、物事はどんどん進みます

木村さんと弓江さんの二人コーチングを

しています。

(→前回記事)

 

私が木村さんに、

最近の新規事業プロジェクトの様子を訊くと、

彼は

「実績が上がって来たのは順調だと思いますが、

本当に真剣な人とそうでない人の差が

出始めていますね」

と答えました。

 

これは非常に面白い視点です。

 

私はさらに木村さんに問いました。

「例えば、真剣な人はどなたですか?」

 

すぐさま彼が答えました。

「弓江です。」

 

目の前の弓江さんが

びっくりしたような表情をされました。

 

この素直さ。

 

ここまでの段階で結構、

弓江さんから責められていた木村さんでしたが、

素直に彼の答えが、ポンっと出ました。

 

間違っても、これは彼のその場しのぎの答え

ではありません。

本当に素直に出たのです。

これが、

真本音度合いの高まった人同士の会話の

特徴です。

 

「弓江さんの、どんなところが真剣ですか?」

 

「目的を忘れないところです。

何のために今、これをしているのか?をいつも

大事にしています。

そしてそのための意見を私に言ってくれます。」

 

どうやらこれは、弓江さん自身が本当に

大事にされていたことのようです。

彼女の表情が一気に柔らかくなったのが

わかりました。

 

何度も言いますが、

もしこの言葉を木村さんが建前で言っていたとしたら、

それはすぐに感覚としてわかってしまいます。

二人コーチングの場は、

「向き合っている場」だからです。

 

木村さんの素直な言葉であるからこそ、

弓江さんの表情は柔らかくなりました。

 

「では、木村さんの言われる真剣さ、というのを

別の言葉で表現するとどうなりますか?」

 

「主体的であることです。

自分で考え、自分で行動する、ということです。」

 

「弓江さんは主体的なんだ。」

 

「そうです。ですから、ありがたいです。

弓江の存在は。」

 

これも本当に心の底からのつぶやきでした。

 

もともと、私が弓江さんのコーチングを行なうきっかけと

なったのは、木村さんが弓江さんの存在を

「疎ましい」と思い、いっそのこと自分がリーダーを辞めよう

とまで思ったのがきっかけでした。

 

そんな木村さんだったのに、真本音状態になれば

まったく別の顔を覗かせます。

 

実はこれもよくあることです。

 

「弓江さん以外の人は、

その点、どうですか?」

 

「はい。人によって主体性は異なります。

主体性の高い人はいます。

でも残念ながら、そうでない人も出てきました。

私は、悩みました。

主体性のない人に主体性を取り戻してもらうために

どうすればいいか?と。」

 

「もともとは主体性のある人達だったんですよね?」

 

「はい。そういったメンバーが集まってますから。

でも恐らく、プロジェクトが発想段階から実行段階に

移ることで、未経験なことに向かうことに対して

恐怖感が出てしまっているのでしょうね。」

 

「なるほど。」

 

「そこで私が私なりに出した答えが、

まずは、皆が自信を持てるようにすることでした。

そのために、自分が指示を出し、実践してもらい、

何らかの成果を上げる。

そういった経験が彼らに必要だと思いました。」

 

「あぁそれで、木村さんがすべてを決めて

皆を動かしているわけですね。」

 

「実はそうなんです。」

 

ここで、弓江さんに振ります。

 

「弓江さん、

この木村さんのお話を聴いていかがですか?」

 

「本当に失礼な言い方になってしまいますが、

あぁそこまで考えていらしたんだ、と思い

ちょっと嬉しくなりました。」

 

この言葉は、言葉だけを見ると

かなり上から目線の失礼な言い回しなのですが、

これを口にしている弓江さんは

本当に嬉しそうな表情でしたので、

思わず場はホッコリとしました。

 

しかし弓江さんは続けます。

 

「木村リーダーの意図はわかりました。

ある意味、私もそれが大事かな、とも思います。

でも本当に、それだけで良いでしょうか?

私は、一度受け身になってしまった人は

そのクセが抜けなくなってしまうと思うんです。」

 

「なるほど。

では、どうでしょう?

弓江さんには、何か良いアイデアはありますか?」

 

「う〜ん。

それがわかればいいんですが。

私は木村にはいつも文句を言うのですが、

だからと言って対策を提案できるわけではないんです。

ただの評論家になっています。

それが、もどかしいんです。」

 

今度は、弓江さんが少し素直になってきました。

 

木村さんの表情が柔らかくなりました。

 

場が良くなってきました。

二人ともがオープンマインド状態です。

真本音度合いが高い人同士ですと、

この状態になるまでが早いのです。

 

ですから私は、まずは

一人一人の真本音度合いを高めることを

大切にしています。

あくまでもその上での

チームコーチングです。

 

さて、ここからが本番です。

 

場が良くなってきたところで、

私は、少し強めの刺激を二人に与えることにました。

 

ここからが

本当のコーチの腕の見せ所です。

 

つづく

 

その二人でしかできないコーチングがある

木村さんと弓江さんの

二人コーチング。

(→前回記事)

 

一人のコーチ(つまり私)が、

二人を同時にコーチングします。

 

これがチームコーチングの

基本です。

 

私はまず、あえて弓江さんに問いました。

 

「弓江さん、

最近の新規事業プロジェクトの様子は

いかがですか?」

 

思った通り、即座に答えが返って来ました。

 

「止まってます。」

 

えっ?という意外な表情を

木村さんがされました。

 

スタートから面白い展開になりました。

 

面白いので私はあえて

木村さんに振りました。

 

「止まってるんですか?」

 

「えっ? いや、あの・・・。」

 

木村さんは動揺を隠しませんでした。

 

実は、新規事業プロジェクト自体は

順調に進んでいることは私も聴いていました。

 

ですが、弓江さんがそのように答えるということは

それとはまた違った視点からの

見え方があるのでしょう。

 

それをそのまま弓江さんに質問すればよいのですが、

ここがチームコーチングの面白いところ。

あえて、木村さんに振ったのです。

 

それにより、

一人一人の個別コーチングとはまた違った

展開が生まれます。

その展開こそが、

個別コーチングでは決してたどり着けない

何らかの気づきや答えに行き着きます。

 

「私は止まっているように思えないのですが、

なに、・・・今止まってるの? どこが?」

と木村さんは弓江さんに問いました。

 

すでに二人の会話が始まりました。

 

弓江:「えっ? 止まってますよぉ。」

 

木村:「どこが?」

 

弓江:「わからないんですか?」

 

木村:「・・・わからないよ。進んでるでしょ。」

 

弓江:「じゃあ逆に訊きますが、

何が進んでいるのですか?」

 

木村:「実績も出始めているし、

決めたことはみんなやるし。」

 

弓江:「誰が決めてるんですか?」

 

木村:「えっ? そりゃ俺が決めてるよ。」

 

弓江:「でしょ?

木村リーダーが決めていることを

みんなやってるだけじゃないですか。

それのどこが進んでるんですか?」

 

木村:「どこって・・・。」

 

やはり予想通り、

弓江さんが木村さんを責める状態となりました。

 

恐らく、木村さんが最も嫌な展開なのでしょう。

 

ここで私が割って入りました。

 

「弓江さん、

弓江さんにとって、進まない、というのは

どういうことですか?」

 

「進歩がない、ということです。

同じレベルのことを、ただダラダラとやり続けることです。」

 

「今は、そう見えると?」

 

「はい。

みんな、木村が言う通りのことしか行なっていません。」

 

ここで木村さんが何かを話そうとされましたが、

あえて私はそれを止めました。

 

「もう少し、詳しく教えていただけますか?」

 

「はい。以前はみんなでいろいろな意見を

出し合ってたんです。

もちろんすべてが手探り状態でしたから、

意見を出し合わなければ進めないという

ところもありました。

でも今は、いろんなことが軌道に乗り始めて、

会議をしても、木村リーダーがほぼすべてを決めて、

メンバーはそれを実行するだけ、になっています。」

 

「それはあまり良いことではないと?」

 

「だって、木村さんはそういうチームを創りたいのでは

ないでしょう?

みんなが主役になって引っ張っていくチームにしたいって

言われていたじゃありませんか。

今はみんな受け身です。」

 

ここで木村さんに振りました。

 

「木村さん、いかがですか?

今の弓江さんの見方については?」

 

「う〜ん、確かにそうかもしれないが、

今はみんなで発想するよりも、

決めたことを確実に実行することが

大事だと思っていますし・・・。」

 

どうも木村さんは、弓江さんを前にすると

発言が弱腰になります。

 

この弓江さんからの発言は、恐らく

今の木村さんや新規事業プロジェクトにとって

本質的な提言でしょう。

テーマとしては重要だと感じました。

 

が、あえてここで、

展開を大きく変えます。

 

「では、この件はとても重要そうなので、

後でゆっくり話し合ってみましょう。

もう一度、最初の質問に戻りますが、

木村さん、

木村さんから見た最近の新規事業プロジェクトの

様子はいかがですか?」

 

「はい。

実績が上がって来たのは順調だと思いますが、

本当に真剣な人とそうでない人の差が

出始めていますね。」

 

この言葉を聴いて、

これは面白い! と私は思いました。

 

恐らく、ここまでの弓江さんとのやりとりがなければ

出てこなかった発言かもしれません。

 

しかもこの彼の着眼点は、

弓江さんの提言と後々に統合しそうです。

 

これこそ、チームコーチングの

醍醐味です。

 

つづく

 

それは本当に必要な厳しさなの?

厳しさ、

とは何でしょうか?

 

学生の頃、私は登山をやっており、

一人の登山仲間にこの質問を投げてみました。

 

彼は答えました。

 

厳しさとは、

やさしさである。

 

これは今でもかなり

本質をついた答えだなぁ、と

私は思います。

 

本当の厳しさを自分に向けることは、

自分自身への本当のやさしさです。

 

しかし、

本当の厳しさを自分に向けている人が

どれだけいるでしょうか?

 

自己満足の厳しさ

の人はたくさんいます。

 

つまり、

厳しくする必要のないところで自分に厳しくし、

それを乗り越えることで

自己満足しています。

 

そういった人は、

真本音度合いが著しく減少します。

 

こんなに厳しくしているのだから

いいじゃないか。

・・・そんな言い訳をしながら生きています。

 

自分を誤魔化しています。

 

だから人とも向き合えなくなります。

 

自己満足の厳しさを自分に与えているうちは

どんな人と向き合っても

調和は起こりません。

 

ですから私は

本当の厳しさを自分自身に向けることが

できる状態になるまでを、

まずは一人一人サポートします。

 

本当の厳しさとは、

「本当は今、自分は、どんな現実(課題)に

向き合えばいいか?」

をきちんと明確にすること。

 

そして、自分の状態がどのようなものであっても

毎日真摯にその現実(課題)に

立ち向かうことです。

 

こうやって書くと、

それは本当に厳しい感じがするでしょうが、

実は、これをすると私達人間の心は

明らかにパワーが溢れます。

 

内側から力が湧いてきて、

いつも満ち足りた状態になります。

つまり、

幸せなのです。

 

ですから、

本当の厳しさを自分に与えることのできる人は

本当に純粋に

「楽しい」

と実感します。

 

それこそが、自分にやさしくする

ということではないでしょうか。

 

厳しさとは

気持ちよいものなのです。

 

これが、

真本音で生きる、ということでもあります。

(→前回記事)

 

木村さんは最初、

本当の厳しさと自己満足の厳しさの区別が

ついていませんでした。

ですから、

「プロコーチになる」などという

自己満足のビジョンに向かったりしました。

 

でも徐々に

「自己満足は気持ち悪い」

ということが、感覚としてわかるようになりました。

 

そこまで来れば、

充分に人と調和することができます。

 

一方の弓江さん。

彼女が今、向き合うべき現実(課題)は

木村さんだったのです。

 

彼をサポートすること。

それが弓江さんの最重要課題です。

 

ようやくこの二人が

向き合える状態となりました。

 

私はワクワクしながら、

二人コーチングの場に臨みました。

 

つづく

 

人は愚かだ、ということを受け入れよう

時々、私は

「たけうちさんは性善説ですよね?」

と訊かれます。

 

私がいつも真本音の話ばかりを

しているからでしょう。

 

いえ、私は性善説では

ありません。

 

人は、愚かです。

 

私は断言します。

 

人は、愚かです。

 

自分自身を含めて、私は人の愚かさを

嫌というほど、見たり、体験してきました。

 

愚かさということで言えば、

私ほど愚かな人間はいないのではないか、と

本気で思ってもいます。

 

しかしそれは

「すべて」ではない。

 

それは、自分の一部です。

 

人の一部です。

 

人には、素晴らしい部分も

愚かな部分も、

あらゆるものが詰まっています。

 

それらをすべて、あるがままに

受け取ることのできる人こそが、

真の強さを手に入れることができます。

 

いえ、「強さ」と言うと

だいぶ本質から離れてしまうかな。

 

自分がどうであろうと、

環境がどうであろうと、

希望を持とうが、

絶望に打ち拉がれようが、

関係なく、

次の一歩を淡々と、

自分の本当にすべきことを、

し続ける。

 

自分の本当にしたいことを、

し続ける。

 

それが、

真本音で生きる

ということです。

 

愚かでもいいではないか。

 

私には私のすることがある。

 

だからそれをする。

 

・・・このシンプルさ。

 

これが、

真本音で生きる

ということです。

 

すべての人が悲しみを

抱えています。

 

すべての人が怒りを

抱えています。

 

それをそのまま人にぶつけてしまう、

そんな生き方もあります。

 

でもそういった悲しみや怒りを

そのまま受け止めて、

何も否定せずに受け止めて、

しかしそれに捕らわれることもなく

次にすべきことをする、

という生き方もできるのです、

我々人間は。

 

それができている人は、

常に、心も魂も満たされています。

 

そういった生き方ができるといいな、

そういった生き方をサポートしたいな、

・・・それが私の想いです。

 

人はもっともっと

人間らしく生きられるはずです。

 

人間らしく生きる、とは

真本音で生きる、ということです。

 

真本音で生きる、とは

特別な人生を生きることではありません。

真に自分らしく

真に人間らしく

生きるということです。

 

それができれば、

すべてが調和します。

 

組織は調和し、

社会も調和します。

 

「調和させよう」と思いながら生きても

調和はしません。

 

「真の自分として生きよう」

とすることで、調和は

自然発生するのです。

 

私は、「チームコーチング」というサポート手法を

使います。

 

それは、これまでの企業現場の中で

自然に培われてきた手法です。

 

私にとっては当たり前のように使ってきた

手法なのですが、

どうも、世の中にはそういった手法が存在していないのだ、

ということに気づき始めました。

 

なぜこの当たり前のやり方が

世の中には存在していないのか?が

不思議でなりません。

 

しかし存在していないのであれば、

多くの人にお伝えした方がよいですね。

 

単純に今は、そう考えています。

 

チームコーチングの基本は、

「二人コーチング」

です。

(→前回記事)

 

二人を同時にコーチングする

のです。

 

これができるようになれば、

もっと多勢でのチームコーチングも

可能になります。

 

ただし、

二人コーチングは、いつでもどこでも

できるわけではありません。

 

二人の準備が

必要です。

 

つまりは、二人がそれぞれ

自分の真本音の人生を歩み始めること。

それがなければ

本当の調和は訪れないからです。

 

木村さんと弓江さんの話に戻せば、

私は二人の調和性は抜群であると、

認識していました。

 

しかし、それは二人共の

準備ができる

ことが前提です。

 

準備ができる前に二人を同時にコーチングしても

二人ともを打ち消し合ってしまうでしょう。

 

ですからチームコーチングとは

「始めるタイミング」

が命です。

 

ここが、コーチとしての腕の

見せ所です。

 

私は、「今」が

木村さんと弓江さんの「二人コーチング」の

始まりの時だと確信しました。

 

私は二人を呼び出しました。

 

木村さん、

弓江さん、

私。

 

3人でテーブルを囲みました。

 

「準備完了」。

二人の真本音からは

そんなメッセージを受け取った

気がしました。

 

つづく

 

すべての人が本当は、自分自身のリーダーである

チームを創るにしても、

会社を創るにしても、

「この人にはかなわない」

と思える人を、

チーム員に迎え入れることのできるリーダー(トップ)は

本当のリーダーであると私は思います。

 

「このチームでは私が一番凄い」

という枠の中でしかチームを創れないリーダーには

必然的に限界が訪れます。

 

リーダーとは、

役割にしか過ぎません。

 

そのリーダーが一番偉いわけでは

ありません。

 

そんなことは当然、頭ではわかっている人は

多いのですが、

いざ自分がリーダーになろうとすると、

なかなかそれができません。

 

リーダーである自分は一番素晴らしくなくては、と

真面目な人ほど思います。

そしてそのプレッシャーに負けそうになります。

 

そんなリーダーを数多く

拝見してきました。

 

私は思います。

 

リーダーとはもっと

自由であったほうがいい。

 

もっと

自分らしくあった方がいい、と。

 

リーダーらしい自分ではなく、

自分らしいリーダーをすればいい、と。

 

チーム(組織)とは

人の集まりです。

 

人には、心があります。

 

一人一人の心は価値観も違いますし、

これまでの人生経験も違います。

すべての人が、

「この人は完璧だ。素晴らしいリーダーだ」

と思えることは、ほぼありません。

もしあるとすれば、

それは「不自然」です。

 

人が、

その人の持っている本来の魅力を

発揮できれば、

私は、すべての人が「その人らしいリーダー」に

なれると、ある時から確信しました。

 

リーダーに向き、不向きは

ないのです。

 

大切なのは、

「本来の」その人らしさを

出せるかどうか?

 

それができれば、

すべての人がリーダーとなれます。

 

それができていない人が多いので、

現時点ではリーダーになれない人が多い、

というだけのことです。

 

本当は、

すべての人がリーダーです。

まずは、

自分自身を引っ張るリーダーです。

 

そして、

自分自身を引っ張ることができれば、

人を引っ張ることができるようになります。

 

それを一言で言えば

『自律』

となります。

 

そして、

自律した人が集まれば、

そこには

『調和』

が生まれます。

 

つまり、

本質的なリーダーが集まれば、

調和は自然に生まれるのです。

 

ですから私は、

すべての人がリーダーになればいい、

と思います。

 

エンティティは、

リーダーになれていない人にこそ

多く発生します。

 

自分の人生は自分が進むものなのに、

自分で自分をリードするものなのに、

それを放棄することで

エンティティは大量発生します。

 

エンティティが発生すれば、

まずは、その本人がとても苦しみます。

 

しかもエンティティは周りに

伝染します。

周りの人にも、苦しみを与えるのです。

 

その自覚がないままに

生きている人がいかに多いことか。

 

私は様々な組織と向き合ってきましたが、

この組織からエンティティがなくなれば

それだけですべてが解決するのに・・・、

と思える組織がとても多かったです。

 

木村さんも

エンティティに悩まされていた一人と

言えるでしょう。

(→前回記事)

 

本来の木村さんには

強い想いがあります。

それは、

真本音の想いです。

 

木村さんの想いをあえて私が表現すると、

「すべてのチーム員がリーダーとなって

活躍するチームを創りたい」

ということになると思います。

 

だから彼は、コーチング力を高めようとしましたし、

自分自身がプロのコーチになりたい、とまで

思いました。

 

その彼の想いは、

上司である平井さんの想いとも一致します。

 

平井さんからしてみれば、

木村さんがその真本音の想いを実践してくれればくれるほど、

平井さんの望む理想の組織になっていくのです。

 

だから平井さんは木村さんを

新規事業プロジェクトのリーダーに抜擢しました。

 

しかし一方で、

木村さんのこれまでの反応本音のパターンは、

「俺が一番だ!」

という状態を創り出す、というものでした。

 

その彼の反応本音のパターンを

彼自身の真本音の想いで超えていく。

 

これが、今回のプロジェクトにおける

木村さん自身の本質的テーマです。

 

しかし彼のこのテーマ達成を阻むものが

ありました。

それが、西畑さんのエンティティです。

 

果たして、木村さんは

西畑さんのエンティティを超えて、

自分のパターンを変えることができるのか?

 

それを今、突きつけられているのです。

 

ここは、

木村さんが自力で乗り越えるべきところです。

 

しかしそこにはサポートが必要です。

 

では、どのようなサポートをすればよいのか?

 

木村さんが木村さんの力で

現実を切り開くこと。

そのための、サポート。

 

ヘルプ(助ける)ではありません。

 

あくまでも、サポート。

 

サポートとして私は

何をすればよいのか?

 

そこで私が取った

「渾身の一手」

が、木村・弓江の二人同時コーチングだったのです。

 

つづく

 

この人のことは、あきらめよう

木村さんは、西畑さんのエンティティを

受けていた。

(→前回記事)

 

それがわかった私は西畑さんと面談

しました。

 

彼としっかり向き合うのは初めてでした。

 

向き合った瞬間、

「あぁこれは、ダメだ」

と思いました。

 

彼は、エンティティの塊でした。

 

しかし以前に、彼を遠くから見たときには

このような印象はありませんでした。

 

恐らく、彼自身に何かが起こり、

エンティティを大量発生させる彼に

なってしまったのでしょう。

 

彼の目は澄んでいました。

 

まっすぐに私を見てきます。

 

その姿勢は、一見、

とてもまっすぐで、素直で、前向きです。

 

しかし、エンティティいっぱいの人は

それらがすべて、どことなく、

ウソっぽい

のです。

 

残念ながら、一般の人はその区別が

なかなかつかないようです。

この区別がつくようになれば、

どんなに良いだろうか、と私は思います。

 

私は西畑さんに、

普段はどのような役割をされているのか?

何を大事にお仕事をされているのか?

などを訊きました。

 

とても前向きな返事が返ってきました。

 

木村さんのことをどう思います?

西畑さんにとっての木村さんはどういった存在です?

とも訊きました。

 

「同志だと思っています。」

 

そう言った西畑さんは、

木村さんの素晴らしさを並べ立てました。

 

しかし、私の心には

彼の言葉のたった一つも

入ってきませんでした。

 

「これは、いかん。」

 

と私は思いました。

 

と同時に、本当にすべての合点が

いきました。

 

木村さんが真本音度合いを高めつつも、

どうしてもある一線を超えられない理由は、

西畑さんでした。

 

彼が、木村さんの足を

引っ張っていたのです。

 

西畑さん自身は、

その自覚がありません。

 

彼のエンティティが

それをしていたのです。

 

実は、

こういった例が、本当に本当に

多いです。

 

とても言葉は悪いのですが、

西畑さんから私は

「進化する意欲」

を、まったく感じませんでした。

 

進化、とは人の本能の根本にあるものです。

それを彼は、

打ち消しています。

 

進化する気持ちをすべて打ち消し、

進化しているフリをする。

前向きなフリをする。

素直なフリをする。

協調するフリをする。

 

それが彼でした。

 

本当に言葉が汚くて申し訳ないのですが、

それが事実でした。

 

残念ながら、現時点では

私は西畑さんを変えることはほぼ無理である

と感じました。

 

もちろん、すべての人には可能性があります。

きちんと真本音度合いを高めれば、

進化への道を歩み始めるでしょう。

 

しかし、彼に対して無理にそれをするよりも

もっと効果的な道があるように思いました。

 

西畑さん自身を変えようとするよりも、

木村さん自身をもっと強くする。

木村さんの次元をもっと高める。

 

その結果、その影響によって

西畑さんが変わっていく。

 

それが、最も自然な順番であり、

最も楽な道であると

私は思いました。

 

コーチとは、このように

最も楽な道を見出し示す存在

だと私は思っています。

 

ですから私は、現時点では、

西畑さんのことを

「あきらめました」。

 

この、「あきらめる」ことも

とても重要です。

 

何を「あきらめて」

何にパワーを注ぐか?

 

その選択こそが命です。

 

私はすべてを木村さんと弓江さんに

お話しすることにしました。

 

二人を同時にコーチングする

道を選んだのです。

 

つづく

 

見えないところで何が起きているか?

人の意識とは、

・顕在意識が1%、

・潜在意識が99%、

と言われています。

 

つまり、

自分の見えていない(把握していない)自分の心が

99%を占めるということです。

 

私は、人と人のコミュニケーションも

同じことが言えるのではないかと

実感しています。

 

表面上に見えているコミュニケーションのやりとりは

たったの1%。

見えないところでこそ、

何が起きているか?

 

それを把握することは

とてつもなく重要であり、

その、すべて、とは言わないまでも、

見えない部分の何割かを、きちんと把握できることが

コーチの役割の一つであると思っています。

 

エンティティのやりとり、

などはその典型です。

(→前回記事)

 

信じられないことかも知れませんが、

以前に、次のようなことがありました。

 

ある会社での出来事。

 

その会社は、20数名の中小企業さんでした。

 

まるで家族のように、

ずっと社内の雰囲気の良い会社でした。

 

ところがある時を境に、急激に社内の雰囲気が

悪化しました。

 

これまでずっと一致団結してきた社員さん達が、

突然、派閥を作り、争いを始め、

同じ事務所にいるにも関わらず、

一日中、口もきかない状態となりました。

 

当然それはすぐに業績に反映されました。

 

なぜそうなってしまったのか?

その本当の原因がずっとわからない

という状態が続いていました。

 

私は、その会社の社長から

管理職社員のコーチングのご依頼を

受けました。

そのため、まずは社長と面談をしたのですが、

どうも何かがおかしい、と感じました。

 

そこで、

「社内の雰囲気が悪くなってしまう直前に

入社した人はいませんか?」

と社長に確認しました。

 

すると、3名の中途入社社員さんがいました。

 

私は、その3名と面談しました。

 

結果、そのうちの一名が

とてつもなく濃いエンティティを持っていることが

わかりました。

 

それは女性社員さんだったのですが、

そのエンティティは、その人のものでは

ありませんでした。

 

その人の旦那さんのものでした。

 

つまり、その女性社員さんが

旦那さんの非常に濃いエンティティを受け取り、

それを、毎日、社内に持ち込んでいたのです。

 

それにより、皆さんの関係が

おかしくなっていた。

 

それを確信した私は、

その女性社員さんの旦那さんともお会い

しました。

一緒にランチをする、という形で。

 

そこで旦那さんと繋がり、

彼のエンティティを浄化することを

続けました。

 

そのエンティティは、彼自身が発生させている

ものでした。

 

彼は、自分の生き方に本当はとても

こだわりのある人だったのですが、

彼自身がその生き方を裏切るような感じで、

本来、自分の望む人生とは真逆の人生を

歩んでいました。

 

私は、彼の真本音度合いを上げるコーチングをし、

結果、彼はエンティティを発生させなくなり、

結果、女性社員さんもエンティティを

社内に持ち込まなくなりました。

 

その途端に、社内の雰囲気が

元に戻りました。

 

元に戻るまでの期間は、

わずか、3ヶ月。

 

ウソのような話に思われるかも知れませんが、

本当のことです。

 

そういったことが

実は、たくさんあります。

どこにでも、あるのです。

 

さて、木村さんと弓江さんのお話に戻ります。

 

木村さんがどうしても真本音の自分に脱皮できず、

どうしても、反応本音のパターンが抜け切らない理由が

西畑さんかもらっているエンティティであることが

わかりました。

 

であれば、

西畑さんのエンティティに負けないくらいに

木村さんを強くするか?

それとも、西畑さんを何とかするか?

の対策が必要です。

 

私は、西畑さんにお会いすることに

しました。

 

つづく

 

取り憑いているものとは何か

『エンティティ』。

(→前回記事)

 

これは英語です。

直訳すると、実体、という意味の名詞です。

 

私はこの言葉を、

アメリカで、ある心理療法系のセミナーを受けた時に

初めて知りました。

 

以来、日本に帰ってから私は、このエンティティについて

2年半くらいをかけて独自に研究しました。

 

これは、一言で言えば、

「ストレスが実体化したもの」

と表現できます。

 

実体化するくらいに濃くなったストレス

ということです。

 

これを、「生き霊」と訳すことも

あるそうです。

ちょっと怖いですが、

ある意味、本質をついています。

 

このエンティティは、多かれ少なかれ

誰もが持っています。

 

そしてそれは、まるで風邪のウィルスのように

人から人へ伝染します。

 

自分自身が発生させるエンティティもありますが、

人から受け取ってしまうエンティティも

あるのです。

 

自分のエンティティと、

人のエンティティ。

それらを交換しながら私たちは生きている。

・・・ちょっと嫌な感じですが、そういうことになります。

 

エンティティは、

受け取りやすい人と、

受け取らずにすぐに流せる人が

います。

 

後者は、エンティティによるダメージは

ほとんど受けません。

しかし、前者は大変です。

 

実は私は、典型的な前者です。

恐らく、誰よりもエンティティを受け取りやすい体質です。

私以上に受け取りやすい人は

これまで出会ったことがありません。

 

ですので私は、私自身を実験体にしながら

存分に研究を重ねることができました。

2年半の間、毎日2〜4時間以上の時間を使い、

私はエンティティ処理の仕方を研究しました。

 

私が勉強したアメリカのセミナーでも

エンティティについてはまだよく解明されて

いなかったからです。

 

先ほど書きました通り、

エンティティは風邪のウィルスと同じように

実体化したものですので、

例えば、私がAさんからAさんのエンティティを受け取ると、

Aさんは元気になります。

濃〜いストレスが根こそぎなくなるわけですから

元気になるのは当然です。

 

しかし逆に私はとても苦しくなります。

 

具体的には、体が苦しみます。

ドーンと重くなり、腰とかお腹とか肩とか頭とか足とか、

その時その時で異なりますが、

何とも言えないような気持ち悪さと苦しみが

襲ってきます。

 

そしてそこに意識を向けると、

例えば、Aさんが何かにとても苛立っていた場合、

その苛立ちをそのまま感じます。

Aさんが何かに悲しんでいたとしたら、

その悲しみをそのまま感じます。

もちろん、

具体的に何に苛立っているのか、とか

具体的に何に悲しんでいるのか、などは

わかりません。

しかしどのような傾向のストレスで

Aさんは苦しんでいるのか?はわかります。

 

ですから私は、自分のこの体質のおかげで、

随分と、人のサポートの指針を立てることが

容易になりました。

 

しかし、

10人の受講生さんの研修を行えば10人分の

100人の研修を行えば100人分のエンティティが

きますので、正直言ってたまったものではありません。

 

12年ほど前に私は自律神経が少しおかしくなり、

体を壊してしまったことがありますが、

その原因がエンティティであったことを

後のそのアメリカのセミナーで知りました。

 

私は私の身を守るためにも

必死にエンティティを処理する方法を

編み出しました。

この仕事を続けたかったからです。

 

そして2年半かかり、ようやく

有効な方法を確立することができました。

 

それはともかく。

 

私は、木村さんが真本音度合いを著しく下げる要因は

エンティティではないか、と仮定していました。

 

木村さんは、それほどエンティティを受け取りやすい

体質ではありませんでした。

ですので、

彼自身がエンティティを発生させているのだと

思っていました。

 

しかしそうではないことが、

弓江さんの報告でわかったのです。

 

木村さんは、

西畑さんのエンティティを

受け取っていたのです。

しかも、

かなり強烈なものを。

 

つづく

 

取り憑かれるのは普通のこと

レベル3コミュニケーション。

(→前回記事)

 

その第一段階の実践をしていただいた弓江さんから

私は報告を受けています。

 

弓江さんは木村さんのことを

「器の大きい人だと感じた」

と報告されました。

 

しかし、その次に彼女が言われたのは、

「彼、何かに取り憑かれていませんか?」

という一言。

 

実はこれを聴いて一番びっくりしたのは

私でした。

 

えっ、そんなことまでわかったちゃったの?という

びっくりでした。

 

確かに木村さんは取り憑かれています。

 

「弓江さん、そんなことまで感じました?

取り憑かれている、というのはどういうことですか?」

 

「これも何となく感じたことです。

時々、木村は、木村の心ではないところで

ものを言っている感じがしたんです。」

 

「例えば、どんな場面がありました?」

 

う〜ん、としばらく弓江さんは

考え込みました。

 

「同じプロジェクトチームに

西畑という者がいます。」

 

西畑さん。

話したことはありませんが、もちろんお顔は私も

知っています。

確か、木村さんと同じくらいの年齢、30代半ばくらいの

男性社員さんです。

 

「木村は西畑と仲がいいので、よく二人で

冗談を言いながら喋っていることが多いのですが、

西畑と喋りながら時々木村が、疲れた表情を

することがあるんです。」

 

「はい。」

 

「で、その疲れた表情のまま、他の社員と木村が話している時、

すごく違和感を覚えることがあります。」

 

「どんな違和感ですか?」

 

「さっき言いました通り、

なんか木村の心ではない心が喋っているような。

木村の言葉なんですが、木村の言葉ではないような。」

 

「そんな時、木村さんはどんな言葉を

よく発しますか?」

 

「う〜ん、具体的な言葉までは思い出せませんが、

見ている私は、とても嫌な気持ちになります。

イライラします。」

 

あぁ、なるほど。

だいぶ、見えてきました。

 

「イライラの原因はわかります?」

 

「なんか、すごく変なことにこだわったり、

どうでもいいようなことで迷ったり。

私がイライラしてしまういつもの木村が

出るのだと思います。」

 

やはり。

 

「それは、本来の木村さんの器の大きさが

まったく出なくなってしまうということですね?」

 

「はい、その通りです。

私の最も嫌いな木村が出ます。」

 

「弓江さん、それね、

本当に取り憑かれてるんですよ。」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

弓江さんはびっくりした表情になりました。

 

「弓江さんの観察はなかなか本当に

凄いですね。」

 

私は感嘆しました。

 

弓江さんの報告で、

普段の木村さんに何が起きているのかが

ようやく見えてきました。

 

彼は本当に取り憑かれているのです。

 

こんな書き方をすると、怖いかもしれませんが、

こういったことは、どこにでも起こっています。

本当にどこにでも。

 

彼に取り憑いているもの。

 

それを、

『エンティティ』

と言います。

 

つづく

 

向き合い方一つで発想が変わる

人を主にすることで輝く人がいます。

(→前回記事)

 

そういったタイプの人は

コーチに非常に向いています。

 

要するに、

『コーチタイプ』

と言えます。

 

コーチタイプの人は

どのように人と関わればよいでしょうか?

 

その基本は

実にシンプルです。

 

それは、

「その人のことをあるがままに観察する」

ということです。

 

実は、

コーチタイプではない人がこれをやろうとしても、

「あるがまま」というのが結構難しいのです。

 

「あるがまま」観察しているつもりでも、

知らぬ間に自分の解釈のフィルターをかけて

その人のことを色眼鏡で捉えてしまう傾向があります。

 

そういった人はむしろ、

自分自身の願いと向かい合って進んだ方が

周りとの調和を起こしやすいのです。

 

コーチタイプの人は、

人をあるがままに観察することで

直観が非常に多く働くようになります。

 

その直観に素直に従って、その人と関わることで

その人にパワーを与えたり、

その人にとっての必要な気づきを喚起したり、

その人自身が自らの指針を見出すサポートを

することができます。

 

相手をあるがままに観察しながらコミュニケーションを

とっている状態を、私は

『レベル3コミュニケーション』

と呼んでいます。

 

コーチタイプの人は

このレベル3コミュニケーションが得意なのです。

 

まず私は、弓江さんに

レベル3コミュニケーションのコツを

お伝えしました。

そして2週間、それを実践していただきました。

 

実践の第一段階として、

「とにかく木村さんを、あるがままに観察する」

ことのみに集中していただきました。

それ以上のことは

「あえて何もしないでください」

とお願いしておきました。

 

すると、2週間後の弓江さんからの報告は

私の予想を超えるものでした。

 

「たけうちさん、

木村という人間は、かなり器が大きいのでは

ないでしょうか。」

 

コーチングの最初に弓江さんはいきなり

そう言われたのです。

 

私は少しびっくりしました。

 

「どうしてまた、そう思われたのですか?」

 

「いえ、何となくですが、

毎日できるだけ、あるがまま、を意識して木村を

観察し続けたら、日に日に彼が大きく見えるように

なったんです。」

 

「特に木村さんのどんな振る舞いを見たときに

そう思われました?」

 

「う〜ん、何か振る舞いがあったからそう思った

というわけではないんですよね。

木村の存在自体に大きさを感じたと言いますか。」

 

「その彼の存在の大きさと、彼の言動が

一致している瞬間というのはどんな時でした?」

 

「・・・あっ、そうそう。

彼が瞬時に決断する時です。

木村はよく思考に入ってしまうのですが、

時々直観的に決断を下す時があります。

その時の木村の表情はとても晴れやかで。

しかも、その場の空気感が安定します。

なんか、守ってもらっているような安心感です。

そんな時に、彼の大きさを感じました。」

 

「いや、すごいなぁ、弓江さんは。

なかなか最初からそこまでの観察は

できないですよ。」

 

「えっ、そうですか?

あるがまま、ということだけ意識すれば

普通にできますよ。」

 

やはりこの人はコーチタイプです。

 

「それ以外に、木村さんについて

何か気づいたことはありますか?」

 

「う〜ん、上手く言えないのですが、

彼、何かに取り憑かれてませんか?」

 

つづく

 

人をサポートすることで輝く人がいる

人には2タイプあります。

 

自分を主にすることで

力を発揮するタイプ。

 

そして、

人を主にすることで

力を発揮するタイプです。

 

自分を主にすることで

輝くタイプと、

人を主にすることで

輝くタイプ、

という言い方もできます。

 

コーチに向いている人というのは

後者です。

 

実は、木村さんは完全に前者でした。

ですので、

彼が「プロのコーチになりたい」と言われた時、

あぁこれは反応本音レベルの発想だなと

わかりました。

 

反対に、弓江さんは

後者のタイプです。

 

しかし恐らく、彼女はこれまでずっと

自分を主にして生きてきたはずです。

そのため、

自分の本来持っている力を発揮せずに

ここまで来てしまいました。

 

本来持っている力、それが

『尊重力』

です。

(→前回記事)

 

尊重力とは、

すべての人をあるがままに受け止め、

その人のすべてを尊重しながら育む力です。

 

尊重力のある人と関わると、

関わった人達は、本来の自分自身を

伸び伸びと出すことができ、かつ

本来の自分の力を発揮し、伸ばすことができます。

 

一言で言えば、

尊重力のある人と毎日関わると、

そこにいる人達は、日々、進化します。

 

そういった力を天性で持っている人がいます。

そういった人は、私は

コーチになることを本当にお勧めします。

プロのコーチになるという狭い意味ではなく、

コーチ的な立ち位置でコーチ的な関わりを持つことを

お勧めする、という意味です。

 

そういった人達にこそ私は

コーチングスキルをお伝えしたいのです。

 

弓江さんはまさに

その典型のような人でした。

 

弓江さんは間違いなく、

木村さんの本来の魅力を伸ばすサポート役として

活躍してくれることでしょう。

 

しかし逆に言えば、木村さんは

そんな宝物のような存在を、自分から

遠ざけようとしていたわけです。

 

私は、さらに弓江さんに

木村さんについての印象をお伺いしました。

 

「弓江さんからご覧になって、

木村さんの気になるところは他にありますか?」

 

「・・・木村は、どうでもいいところにこだわるんです。

そんなこと、どっちでもいいじゃん、ということに。」

 

「例えば、どんなことがありましたか?」

 

「・・・例えば、お客様のクレームの時でもそうでした。

クレームが入って、すぐに対応すればいいのに、

誰がクレーム処理をすべきか、を随分と悩んでました。

もちろん、それは大事なこともありますが、

でも、そのクレームには迅速さこそが最重要でした。

私がすぐに行けるって言ってるのに、

彼はしばらく思案していたんです。

何が大事か?を見失って、必要のないところで思案する、

というところが見ていてとてもイライラします。」

 

「よくあるのですか?」

 

「はい、よくあります。

もちろん、そうでない時もありますが。

そうでない時は、すがすがしいくらいに

パンパンパン、っと決断するんですが。

でも思案に入ってしまう時は、・・・まるで別人みたいです。」

 

恐らく、木村さんが真本音の決断をしている時は

弓江さんは「すがすがしい」と感じ、

そうでない時は、「イライラする」となるのでしょう。

ある意味、

とても本質をついた感覚です。

 

「木村さんが常に、すがすがしい木村さんで

いられるように彼をサポートしたいのですが、

弓江さん、手伝っていただけますか?」

 

「私にできることがありますか?」

 

「大いにあります。

弓江さんがコーチとして接するんですよ。」

 

「えぇ? それは無理だと思いますよ。」

 

「無理ではないですよ。

むしろ、絶対楽しめますよ。」

 

「なんか、そんな風に断定されると困りますが・・・。」

 

「具体的な接し方は、私がすべてお教えしますので、

やってみませんか?

楽しいですよ。」

 

「じゃあ、そんなに言われるなら

やってみましょうか。

・・・わかりました。

やるなら徹底的にやります。」

 

さすが弓江さんです。

こういったところに真本音度合いの高さが

現れます。

 

真本音度合いは高まれば高まるほど、

人は潔くなるのです。

 

つづく

 

説得しようとしないことが、思わぬ好展開を生む

弓江さんが変化することで、

木村さんが変化する。

その順番で、二人の真本音度合いを

一気に引き上げる。

 

それが今、私にできる最善のサポートであると

確信しました。

(→前回記事)

 

そんな流れの中での

「弓江さんはコーチに向いています」

というメッセージでした。

 

ところが、弓江さんはすぐにはそれを

受け止めてはくれませんでした。

「とてもとても信じられません」

と。

それはそうでしょう。

当然、そのような返事が返ってくると思っていました。

 

さぁ、真本音コミュニケーションを続けましょう。

 

こういった時ほど、相手の真本音に委ねます。

間違っても、

説得しようとか、納得してもらおうとかは

思わないことです。

 

「どうして、信じられないのですか?」

 

「だって、たけうちさんもわかりますでしょ?

私のこのコミュニケーションを見れば。

どう見ても、コーチ向きではないでしょ。」

 

「そうですねぇ。

コーチとは真逆のコミュニケーションですね。」

 

「でしょ!

こんな私にコーチング力があるとは思えません。」

 

「ありますよ。」

 

「ですから、どこがですか!」

 

彼女はついに怒り出しました。

大変申し訳ないのですが、私は内心

クスクスと笑いが止まらなくなりました。

 

「コミュニケーションの取り方は、なかなか

最悪ですね。」

 

「わかってますよ!

だから向いてないと言ってるんです。」

 

「でも、コミュニケーションの取り方以外は

すべてコーチに向いてますよ。」

 

一瞬、弓江さんは私の言っている意味を

把握できなかったようです。

しばらく目を白黒させていました。

 

「どういうことですか?

コーチって、コミュニケーションの取り方が

重要なんですよね。」

 

「コミュニケーションの取り方なんて、

表層的なことですよ。

現に、弓江さんと同じようにはっきりくっきり

物を言う人で、コーチング力のすごい人を

私は何人も知っていますよ。」

 

「えっ? じゃあコーチング力って何ですか?」

 

「今は教えません。」

 

「えっ? なに? どうしてですか。」

 

「教える必要がありませんから。」

 

「まったく意味がわかりません。」

 

「わからなくてもいいです。」

 

「たけうちさん、

私をからかってませんか?」

 

「全然からかってませんよ。

弓江さんとのコミュニケーションを楽しんでます。」

 

「それ、からかってるってことでしょう!」

 

そう言って彼女は笑い出しました。

この明るさ。

これが、弓江さんの本質です。

 

例えば、真本音度合いの低い人に

このようなコミュニケーションを取れば、

間違いなく深刻な展開となっているでしょう。

しかし弓江さんは笑い出しました。

 

私が意図してやっていることではありません。

真本音に委ねているだけのことです。

 

「弓江さんは、私がどんなコミュニケーションを取っても

そうやってまっすぐに向き合ってくれるじゃないですか。

私の一言一言をちゃんと聴いてくれる。」

 

「えっ? 私は聴き下手ですよ。

いつも、もっと人の話を聴きなさい、って

叱られます。」

 

「じっくり聴くことはしないと思いますが、

肝心なところをちゃんと受け取っています。

そしてそれに対して、まっすぐに考え、まっすぐに

返してくれます。

それがとても心地よいです。」

 

「う〜ん、確かに、まっすぐというのは

私らしいかもしれませんが。」

 

「弓江さんは、今私が弓江さんに

何を伝えようとしているかわかるんじゃないですか?」

 

「何を伝えようとしているか?

・・・私に『変われ!』ということですか?」

 

「どこを『変われ!』と言っていると思いますか?」

 

「・・・なんか、大したことを要求されている感じは

しません。

ちょっとしたところを変えた方がいい、と

言われている気がします。」

 

「さすがですね!

そこが、コーチに向いているところなんですよ。

本質を掴む力がピカイチです。」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「そうですよ。

例えば、木村さんの今の状況とか。

弓江さんが感じ取ることは非常に本質を

ついているんです。

最も肝心な部分を明確に言い当てています。

それができる人は、コーチに向いてるんですよ。」

 

「・・・そんなもんでしょうかね。」

 

「はい、そんなもんです。

弓江さんはちょっとだけご自分を変えれば

いいんです。」

 

「どこをですか?」

 

「コミュニケーションの取り方を、です。」

 

「えぇ? そんなこと言っても

今の私のコミュニケーションの取り方は長年ずっと

これでやってきたものです。

変えることなんてできませんよ。」

 

「そう思い込んでるだけのことです。

コミュニケーションなんて、最も簡単に変化させられる

ものなんです。

形を変化させるだけですから。

それは私が教えます。

でもこれは、本質を掴む力を持っている弓江さんだからこそ

有効なことなんです。

表面をちょっと変えるだけで、

劇的に物事の進展の仕方が変わりますよ。」

 

実はこの時点では弓江さんには伝えていなかったのですが、

弓江さんの力は、本質を掴む力、だけではなかったのです。

もう一つ、とても重要な力を持っていました。

それこそを、彼女はこれまで、恐らく一切、

使ってきませんでした。

 

それは、

相手を尊重する力

です。

 

私が、

『尊重力』

と呼んでいるものです。

 

つづく

 

自信過剰な人は、肝心なところで逃げてしまう

自分のことを小さく見る、

という人が時々います。

 

それは一見、謙虚、という姿勢とも言えますが、

私はそういった人を見ると反対に、

すごく傲慢だな、と思う時があります。

 

自分は小さい。

だから、できません。

 

と自分の小ささを理由に、

その人が真本音で望んでいることを

その人自身があきらめる。

 

・・・それは、自分自身の人生と真摯に向き合うことを

放棄してしまっている姿勢です。

 

自分は小さいと勝手に決めつけ、

結果、何もやらない。進まない。

なんと、傲慢な、・・・と思ってしまうのです。

 

もちろん、

自己過信する必要はありません。

 

自己過信する人も、その過信が故に、

本当に自分が真本音でやろうとしていることと

まったく別の方向に進んでしまうケースが

多いです。

 

そういった意味で、

自己過信する人も、自分を小さく見過ぎる人も、

本質は同じです。

 

傲慢であり、怠慢です。

 

ちょっときつい言い方かな、とも思いますが、

そういう人を見ると、本当にもったいないと

思うのです。

 

もっと淡々と、粛々と、

自分の望む道を進めばいいのに、と。

 

そうすれば、

そんなに荒れることもなく、

そんなに障害や妨害に合うこともなく、

自然に幸せな道が開くのに、と。

 

真本音の道。

 

こう書くと、何か特別な道のような

印象になってしまいますが、それは、

最も自然体で進む道、

ということです。

 

自分の胸の中にずっといつまでもあり続ける

その願いに素直に普通に進む道

ということです。

 

誰もがその道を進めば、

すべてが調和します。

 

なぜなら、私達人間の真本音は

深層心理ではすべてがつながっているからです。

 

自分の本当に望む道と、

人の本当に望む道は、

完全に調和するのです。

 

ですから私のコーチングサポートの目的は

実にシンプルです。

 

「いかにその人の真本音度合いを上げるか?」

 

この一点に尽きます。

 

このための、

あらゆる方策を行ないます。

 

逆に言えば、

そこにつながらないあらゆる方策は

一切行ないません。

 

木村さんから見えている世界。

それは、

「自分と一緒に仕事をすると、

弓江はとてもキツくなり、自分に当たってくる。

自分がいることで弓江がそうなるなら、

自分がいなくなった方がよい。

自分のためにも、弓江のためにも、

会社のためにも」

ということでした。

(→前回記事)

 

しかし真本音度合いを高めるという

視点から見れば、まったく別の世界が

見えます。

それは、

「木村さんのことを本当に好きな弓江さんは、

木村さんの真本音度合いを高めるために

彼女なりの行動をし続けた。

しかし木村さんは、それを拒絶し、

真本音度合いを高めるチャンスを

逸しようとしている」

というものです。

 

なぜ拒絶するのか?

 

そこに、木村さんの反応本音のクセが

出てしまっています。

 

木村さんの反応本音のクセで大きかったものは

二つです。

 

一つは、

自信過剰で、イケイケどんどんとなる

クセ。

つまり、自分のことを大きく見過ぎるのです。

 

もう一つは、

何かあるとすぐに自信を失い、消極的になる

クセ。

つまり、自分のことを小さく見過ぎるのです。

 

この2番目のクセが

今回は出ています。

 

ちなみに、この二つのクセは

作用・反作用の関係にあります。

 

つまりこれは、木村さんだけなく、

あらゆる人に起こりうる「セットのようなクセ」です。

 

作用・反作用が起こりやすいのが

反応本音のクセの特徴です。

 

一方が引っ込めば、

もう一方が顔を覗かせます。

 

ということで、私から見た今回の現象は

次のようになります。

 

「せっかく木村さんの真本音度合いを上げようと

弓江さんという人が近づいてきたのに、

そのまっすぐさ、が怖くて、

木村さんは逃げようとしている。」

 

もちろん、本当に逃げようとしているわけでは

ありません。

コーチングの場では、逃げたい、という気持ちを

出しますが、

彼は彼なりに何とかしようとしています。

 

ですので、

私がここでとる方策は、

「木村さんの真本音度合いも、

弓江さんの真本音度合いも、

共に一気に引き上げる」

という、そのための方策です。

 

そうなるためにはまず、

弓江さんに少し変化していただくことが

ベストだと直観しました。

 

弓江さんの変化が、

木村さんの変化を

呼び起こします。

 

その順番です。

 

こういった「順番」を見つけることも

コーチとしては重要な役割の一つです。

 

そこで出てきたメッセージが、

弓江さんへの

「あなたは、コーチに向いています」

という一言だったのです。

 

つづく

 

想いをカタチにできない人がとても多い

弓江さんとの初めてのコーチング。

 

彼女の真本音度合いを高さを直観した私は、

あえて通常では考えられない問いから

スタートしました。

 

「弓江さん、

木村さんのこと、嫌いですか?」

 

「はい、嫌いです」

 

すぐさま、まっすぐな答えが返ってきて、

私は笑い出しそうになりました。

(→前回記事)

 

この人は本当に面白い。

 

どうやら初っ端から真本音コミュニケーションが

できそうです。

 

しかも次の問いが非常に重要であると

私は直観しました。

次に私がどのような問いを投げるか?で

展開は大きく変わります。

 

こんな時はすべての意図を手放して、

ただただ相手の真本音に委ねます。

 

自然に私の口は開きました。

その結果、以下のような展開となりました。

 

「弓江さん、

木村さんのこと、嫌いですか?」

 

「はい、嫌いです」

 

「でも、本当は好きなんでしょ?」

 

「・・・そう言われると困りますが、

はい、私は木村のことが好きでした。

もちろん、人間として、ですよ。」

 

「どんなところが好きだったんですか?」

 

「木村がロックバンドやっているのを

ご存知ですか?」

 

「はい、存じ上げています。」

 

「以前に私、木村のライブに行ったことが

あるんです。

感動しました。

そこから好きです。」

 

う〜む。

なるほど、そうだったのか。

 

「どんなところに感動されたのですか?」

 

「彼の自由奔放さ、です。

仕事では絶対に見せないような無邪気な

顔をしていました。」

 

「そうですね。なかなか彼は、そういった自分を

仕事では見せないですよね。」

 

「はい。でも、時折、仕事でも顔を覗かせて

いたんですよ。あの自由奔放さが。」

 

「へぇ、そうなんでか。」

 

「ほんのちょっとですけどね。」

 

どうやら弓江さんは本当に木村さんのことが

好きなようです。

もちろんそれは、異性としてではなく、

人間として、だと思いますが、

それでも、木村さんのことをよく観察しています。

 

いや、ひょっとすると、木村さんだけでなく

すべての人をよく観察しているのかも知れません。

 

「でも、いつからそんな木村さんのことを

嫌いになってしまったんですか?」

 

「新規事業プロジェクトからです。」

 

「なぜまた?」

 

「・・・なぜかとてもイライラするんです。

木村の判断、行動、振る舞いのすべてに

イライラするんです。」

 

「特に、イライラした瞬間で思い出せる

場面はありますか?」

 

しばらく弓江さんは考えて、

 

「ミーティングでよく彼は、

みんなが主役だ、俺はコーチ役だ、

みたいなことを言うんです。

その度に、とてもイライラします。」

 

なるほど。

だいぶ見えてきました。

 

「あぁそれは、私がちょっと変な影響を

与えちゃってるかなぁ。

私がコーチングスキルなどを教えてしまって

いますから。」

 

「いえ、コーチングのやり方をとること自体は

いいんですよ。

みんなの意見や想いを自由に出し合って

進めること自体は私も賛成です。

でも、なぜか木村がそれをすると、

腹が立つんです。

なんか、猿真似、というか、形だけ、というか、

中身がない、というか。」

 

「そういえば、木村さんから聴いたのですが、

お客様のクレーム処理の時に、弓江さんは

木村さんに『甘いです』という意見を

言われたそうですね。」

 

「そうなんですよ。甘いんですよ。

あのクレームのお客様の担当は私だったんです。

だから私にクレーム処理を言いつければいいのに、

自分でやろうとして。」

 

「あっ、そういうことだったんですか?」

 

「そうです。

まぁ、私に任せておくとちゃんとクレーム処理

できないんじゃないか、って不安だったのだと

思います。

でも彼は、コーチの真似をしながらも、

肝心な部分は全部自分でやろうとします。

部下やメンバーを本当には信じていないし、

信じようとしていない。

信じているフリはしてますけどね。

そこが、甘い、と思うんです。

一緒にメンバーとしてやっていこうと思うなら、

もっと私達に厳しくしなければならないし、

もっと毅然としていてほしいんです。

あのロックバンドの時のように。」

 

「要するに、今の木村さんを一言で表現すると

どうなりますか?」

 

弓江さんは、しばらくじーっと考えていました。

そして、

 

「生ぬるい、ということでしょうか。」

 

この言葉が、私にゾワーッと伝わってきました。

つまりこれは、弓江さんから木村さんへの

真本音メッセージなのです。

 

弓江さんは、木村さんのことが本当は

好きです。

木村さんの「本来の魅力」をよくわかっています。

 

しかし新規事業プロジェクトリーダーの木村さんは

その魅力を出さないどころか、

「生ぬるい」

のです。

 

本来素晴らしいものを持っているのに

それを出さない木村さんに対して、

弓江さんは怒っているのです。

 

それは、「真本音の怒り」と言ってよいでしょう。

 

私が弓江さんのことを「面白い」と直観したのは

大当たりでした。

弓江さんという存在は、木村さんの真本音度合いを

高めるための力強いサポートとなるでしょう。

 

「そんな木村さんに、本来の彼の魅力や力を

発揮してもらうために、弓江さんには何ができますか?」

 

「う〜ん・・・。

私は私なりに言いたくもない意見を伝えていますが、

それが機能しているようには思えません。

むしろ木村を萎縮させているというか。

木村の行動を妨害してしまっているというか。

あまりよい結果は出ていないように思います。

でも、どうしたらよいか、自分にできることが他には

思いつきません。」

 

やはり。

弓江さんは弓江さんなりに、

木村さんの力になろうと思って、あえてきつい意見を

伝えていたようです。

 

さて、では、

弓江さんにも単刀直入な切り込み方をしましょう。

こういった、真本音度合いが高く、想いも強い人には

単刀直入なのがよいです。

 

「弓江さんは、ご自分の魅力や能力を

まったくもって理解してませんねぇ。」

 

「えっ、そうなんですか。

私に能力なんてありますか?」

 

少し余談ですが、

真本音度合いのもともと高い人ほど、

「私に能力なんてありますか?」という類のことを

言う人が多いです。

自分を低く見ているのですね。もったいない。

 

「ありますよ、もちろん。

何だと思います?」

 

「えぇ〜、わかりませんよ。

自分に特別な力があるなんて思いもしません。」

 

「そう言わずに、ちょっと真剣に

考えてみてください。

弓江さんの、天性の力は何だと思いますか?」

 

弓江さんはしばらくじーっと考えてくださいました。

 

「・・・ダメです。わかりません。

私に天性の力なんてあるんですか?」

 

「はい。

でも、弓江さんはそれをこれまでの人生でほぼ、

使ってこなかったと思います。

でもこれからは、それを使うといいですよ。」

 

「ダメです。ギブアップです。わかりません。」

 

「コーチング力です。」

 

「へっ?」

 

「弓江さんは、プロのコーチになれますよ。

それだけの力があります。

私が保証します。」

 

つづく