コーチ

人は内側から変わってゆく

かつての伝説的な

ボクシングの世界王者

モハメド・アリの

ファイトスタイルは、

 

「蝶のように舞い、

蜂のように刺す」

 

と形容されていました。

 

最近、よく思うのです。

私も似たような

スタイルかな、と。

 

もちろん私は

人と闘っているわけでは

ありません。

 

でも、

日常茶飯事に

思うことがあります。

 

「この人は

難攻不落だな」

と。

 

つまり、

「この人はもう

絶対に変わらないのでは

ないかな」

という印象です。

 

ここで言う

「変わらない」

というのはもちろん、

「本来のその人には

戻れそうもないなぁ」

という意味です。

 

無理に別人格に

変えようとしているのではなく、

その人が

自らの真本音に素直に

生きる状態に戻す

ということが

ほぼ不可能に近いなぁ

と思ってしまう、

という意味です。

 

でも先程も

書きました通り、

そういった「難攻不落さ」を

感じるのは

日常茶飯事です。

 

じゃあその

難攻不落な人を

どう変えるのか?

 

その人を変えるのが

私の仕事ですし、

そういった成果を

出さねば、

私はプロとして

評価されないわけですから

何としてでもそれを

成さねばなりません。

 

もちろん

私が評価されるために

ということよりも、

その人が変わらないと

その会社そのものが

ダメになってしまう、

という切実な理由の方が

圧倒的に大きく、

 

「彼が変わってくれれば、

我社は本当に

素晴らしくなるのに」

 

という

切実な想いは、

どこの会社にも

必ずあります。

 

しかしご承知の通り、

「人が人を変える」

なんてことは

傲慢の極みです。

 

それができている

と勘違いしている人も

いますが、

それは本当に

勘違いです。

 

人は、

自らが変わろうと

本気で思わない限り

決して

変わりません。

 

もちろん、

表面的に変わった

ふりをしていたり、

変わったつもりに

なっているケースは

ありますけどね。

 

人は、

自らを

変えていく。

 

自らを

変えようとしなければ、

変わらない。

 

つまり、

人は

外側から変えることは

不可能で、

内側から

変わることしか

できません。

 

その

「内側から変える」

のが

私の役割です。

 

その視点で

みたときに、

「あぁこの人は難攻不落だ」

と思うのです。

 

そういう人が

いっぱいいます。

 

で、

結果として私が

やっている最も有効な

手段が、

「蝶のように舞い、

蜂のように刺す」

ではないか、と。

 

つまり、

ここぞ!という瞬間に

ジャブを打つのです。

 

もちろん

闘っているわけでは

ありませんので、

表現を変えれば、

「刺激を入れる」

のです。

 

「刺激」とはもちろん、

パンチを放つわけでは

ありません。

 

その人にとっての

「刺激」となる

「一言」

をお伝えするのです。

 

それは、

「問い」であったり

「メッセージ」であったり

します。

 

しかもそれを

「ここぞ!」という

絶妙のタイミングで

しなければなりません。

 

一瞬でも

タイミングを外すと

まったく効果がないどころか、

逆に反撃をくらいます。

 

では、

そのタイミングや

「一言」は

どうすれば見出せるのか?

 

それは、

その人の「真本音」が

すべてを教えてくれます。

 

その人の「真本音」を

キャッチすることが

できれば、

ある意味、簡単に

わかります。

 

あとは、

その人の真本音が

望むタイミングで

望む一言を

お伝えするだけです。

 

ですから

よく私がするのは、

「たった一言を伝える」

ためだけに、

その人に会いに行く

ということです。

 

しかもそのタイミングが

例えば

「一週間後の何時くらい」

というように

わかることもあります。

 

するとそこにアポを入れ、

会いに行き、

実際に向き合い、

本当に今のこのタイミングと

その「一言」で良いのか?を

その場で確認し、

「OK」であれば

それを伝える、

ということをします。

 

そしてすぐに

去って行きます。笑

 

一つの刺激を入れたら、

すぐに去る。

 

こんな

ファイトスタイルです。

 

ファイトしているわけでは

ありませんが。

 

そうすると、

その「刺激」は

その人の真本音が

望んでいたものですから、

その人は

その「刺激」がきっかけで

真本音度合いが高まり、

「内側からの変化」

が始まります。

 

これを繰り返すことで、

難攻不落だと思っていた人が

思わぬ変化を

見せたりします。

 

で、私はこういう時に

いつもとてつもなく

感動します。

 

私がやっていることは

単に、

「刺激」を入れるだけ

なのです。

 

あとは勝手に

その人が自らの力で

進めます。

 

たったあれだけの刺激で

この人は

こんなにもがんばる人

だったんだ!

という感動です。

 

やっぱ、

人って大したもんだな、

という感動ですね。

 

・・・・・・

 

私のこういったサポート力は

いつも言うことですが、

私特有の力では

ありません。

 

私達人間が

本来持っている

コミュニケーションの力を

ただ「普通に」

活用しているだけのこと

です。

 

本当はすべての人が

こういった力を

活用できるようになると

いいな、と

思いますが、

まずは、

こういったことのできる

コーチが増えるといいなと

思っています。

 

そのために、

そろそろ来月辺りから

新たな動きを

取ろうかと準備しています。

 

昨日の記事の続きは

明日書こうかな。

 

つづく

 

本当のコーチを育成したい

私は、コーチとは

クライアントさんの鏡である

と思っています。

 

クライアントさんの

真本音を映し出す鏡

です。

 

真本音は時に、

自分自身に対して

非常に厳しくなることが

あります。

 

特にクライアントさんが

ご自分の人生から

逃げようとしている時は

かなり厳しいです。

 

そういったクライアントさんと

向き合っていますと、

私の中に自然と

とてつもなく厳しい言葉が

浮かんで来ます。

 

それはもちろん

私の気持ちでは

ありませんし、

ましてや

私の解釈でも

ありません。

 

クライアントさんの

真本音からの

ダイレクトメッセージ

です。

 

特に厳しいメッセージを

受け取った場合、

私は心の中で

そのクライアントさんの

真本音に問います。

 

「この言葉、

今、あなたに伝えた方が

良いですか?」

と。

 

「はい、今すぐに

ここで私に伝えてください」

との

返答があった場合、

私は躊躇なくそれを

お伝えします。

 

それにより

多くの場合、

そのクライアントさんは

崩れます。

 

場合によっては

立ち直れなくなるくらいに

崩れ落ちます。

 

それはそうです。

 

その人自身の

真本音メッセージ

なのですから。

 

自分にとって

最も痛いところを

真本音はよく

わかっています。

 

その、痛いところを

私は躊躇なく

突いてしまいます。

 

いえ、

本当は、私の心は

躊躇でいっぱいです。

苦しみも

あります。

 

でも、

そのクライアントさんの

真本音が望むならば

私はやはり、

その「鏡」となります。

 

私は

こういったことを

100%できる人のことを

「コーチ」と

呼んでいます。

 

100%できない場合は、

その人はまだ

「コーチ」ではない、と

私は思っています。

 

・・・・・・

 

こういったことを

書くと、

厳しいなぁ、

とか

怖いなぁ、

とか

思いますよね、きっと。

 

人間であれば

それは当然です。

 

時には私も

私自身に対して

厳しすぎるのではないか?

と思うことがあります。

 

でもやはり

私は、その人の

真本音の鏡であり続けよう

とします。

 

当たり前のことですが、

人生とは

机上の空論では

ありません。

 

生身の人間が

生身のままで

体験を続けるのが

人生です。

 

思う通りにいかないことなど

無限にあります。

 

躓くことも、

ひっくり返ることも、

立てなくなることも

あるのが

当たり前。

 

それが

人生です。

 

人間は

それほど強いものでは

ありません。

 

すぐに

逃げたくなるし、

すぐに

誤魔化したく

なります。

 

それが

人間です。

 

そういったことを

全部、

受け止めて

引き受けて、

全部わかった上で

それでも燦然と

心の中心で

輝き続けるのが

その人自身の

真本音

です。

 

何があろうが、

ボロボロになろうが、

クタクタになろうが、

真本音は

ただただ

そこにあります。

 

すべての現実を

受け止め、

すべての自分を

受け止め、

その上で、

自分にとっての最善の一歩を

踏み出そうとするのが

すべての人の真本音の

意志であり

願いです。

 

人生には

意味があります。

 

意義があります。

 

すべての人は

使命を持って

います。

 

すべきこと、

やり遂げること、

行き着きたい場所を

すべての人は

心の中心に

抱いています。

 

その「願い」も

「祈り」もすべて

真本音はよく

わかっています。

 

「理想」をよくわかり、

しかし

「現実」もよくわかり、

その上で、

「理想」と「現実」の

狭間における

「最善」の選択を

しようとする。

 

それが私達の

真本音です。

 

真本音メッセージとは

そんな真本音から

自分自身への

メッセージです。

 

「コーチ」とは、

そのメッセージを

100%届けることが

役割です。

 

残念ながら

現時点は、

それを本当にきちんと

やり遂げられる人が

実に

少ない。

 

本当に

少ない。

 

もっと増えれば

いいな、と

切に願います。

 

だから私は

「コーチ」を

育成し続けています。

 

そして、

私自身が

「コーチ」であろうと

し続けています。

 

・・・・・・

 

そういった意味で、

「コーチ」とは

誰よりも自分自身の

真本音と

しっかり語り合える人

でなければなりません。

 

自分の真本音が

わからない人が

人の真本音の鏡に

なれるわけがありません。

 

ですから、

「コーチ」とは

誰よりも

セルフコーチング力が

なければならないのです。

 

「コーチ」という

立ち位置に立つ、と

真本音で決めている人は

世の中に

たくさんいます。

 

しかし、

その自分の意志に

気づいていない人が

ほとんどです。

 

ですから私は

「コーチ」の素養を持った人を

発掘します。

 

そして

その人達に

「セルフコーチング法」を

まずはお伝えしたいと

思っています。

 

つづく

 

加速すればするほど、楽になる

私達人間は誰もが、

「進化をしたい」という本能を持っていますが、

自分が望む進化スピードを実現している人は

ほぼ、いません。

(→前回記事)

 

本当はグングン前に進みたいのに、

思うように進めない、

もしくは、進むことを恐れてしまい

躊躇している自分がいる、

・・・ほぼすべての人がその状態です。

 

私達には「加速」が必要です。

 

しかしどうすればよいのか?

誰もわかっていません。

 

私がコーチとして活動してきた

この21〜2年間は、

その方策を探求し続けてきたという

言い方もできます。

 

もちろん、今も探求中です。

 

ただ、一つ明確にわかっていることが

あります。

 

真本音度合いを高めることが

すべての基本にあるということです。

 

私達人間の揺るがぬ心、真本音とは、

私達の存在意義であり本能の中枢を成す

「進化欲求」に対して非常に素直です。

 

進化のためにどうすればよいか?

を最も大切にしています。

 

しかもそれは理想論ではありません。

 

自分の進化のために、

今の現実に対して、

自分は何をすればよいのか?

を極めて現実的に判断します。

 

その洞察力は

神秘的ですらあります。

 

逆に言えば、

私達人間は誰もが凄い洞察力を

もともと持っているということです。

 

しかしその洞察力は、

真本音度合いが高まらないと

発揮されません。

 

そして、

真本音度合いが高まり、

その洞察によって出された「次の一歩」を

踏み出し続ければ、

私達は必ず、周りと調和します。

 

先ほど書きました通り、

真本音とは極めて現実的な判断をしますので、

真本音で動くことで、

不必要な混乱や混沌は争いや諍いは

激減します。

そこには、必要な試行錯誤が必要なタイミングで

起こるだけです。

 

結果として、その一歩一歩は

進化に対しての最速の道となります。

 

それは「理想」ではありませんが、

「最善」です。

 

つまり、今できる最善、最速の道を

私達の真本音は選択するのです。

 

ですからそういった意味でも、

私は、クライアントさんの真本音度合いを

高めることを、コーチングの要諦としています。

 

そして「脱皮」とは、

そういった真本音度合いの高まった人達が

引き起こす「現実」です。

 

「脱皮」を起こすことで、

ステージが一気に変化します。

 

それは喩えて言えば、

今まで地面を歩いていた自分が、

突然、東京スカイツリーの展望台に

登ったようなものです。

突然に視界が変わります。

今まで見えていなかったものが

見えるようになります。

 

いえ、

本当に大きな脱皮をした場合は、

もっと凄い変化があります。

東京スカイツリーどころか、場合によっては

飛行機の視点とか、成層圏の視点とか、

地球を見降ろす宇宙の視点まで

行ってしまうかもしれません。

 

脱皮とは、それくらいに劇的な

変化があることなのですが、

しかし、本人の顕在意識はその変化に

気づいていません。

 

気づいていないのだけれども、

しかし、視界そのものは

これまでとはまったく比べ物にならないほどに

広がっているのです。

 

ですから、本人の気づかないところで

発想そのものが大きく変化します。

本人は気づいていないのに、

周りから見ると驚くべき発想を

生み出す時があるのです。

 

しかしそれは私達人間にとっては

実に自然な振る舞いです。

 

なぜなら私達は

それだけ大きな進化を望んでいるからです。

でも今のところ、どれだけ脱皮をしても

まだまだ私達の望む進化スピードには

追いつけません。

 

本当に望む進化スピードに

もし追いつくことができたとしたら、

私達人類はとてつもなく素晴らしい世界を

創ることができるでしょう。

 

話があまりに大きくなり過ぎますと

現実味がなくなってしまいますが、

私達誰もにできるのは、

自分自身の「次の一歩」を決めること。

 

その「次の一歩」を

真本音で決めることです。

 

それを粛々と続けることで、

私達は本来私達の望む進化スピードに

近づいていけるでしょう。

 

そのためのサポートが

私のサポートです。

 

そしてそういったサポートのできる人を

私は増やしていきたいのです。

 

真本音で生きること、

進化を加速させること、

それは、決して難しいことではありません。

 

むしろ、それは

最も楽な道のりです。

 

最も自分が自然体になり、

最も自分が自分らしくなり、

最も人間としての幸せを感じることのできる

明るく楽しい道なのです。

 

つづく

 

人の影響力は、ここで決まる

人が人に与える影響力の大きさ

というのは、どこで決まると思いますか?

 

能力ですか?

 

経験ですか?

 

人格ですか?

 

生き方ですか?

 

立場ですか?

 

役割ですか?

 

個性ですか?

 

それらすべては確かに

重要な要素です。

 

しかし私は、

人が人に与える影響度を左右している

要素として、超重要なものとして、

 

「その人の成長度」

 

があると、いつも実感しています。

 

「成長」とは

このブログでも申し上げている通り、

単なる「膨張」ではなく、

「進化」のことを指します。

 

現時点における力の大きさよりも

今、その人がどれだけ日々進化しているか?

によって、私達人間は

本質的な影響を受けます。

 

なぜなら、私達人間の根本欲求は、

・・・つまり、本能の中心にあるものは

「進化」だからです。

 

私達は本能的に

「進化」しているものに対して

畏敬の念を覚えます。

 

どこまで進化したか?ではなく、

どれだけの勢いで進化し続けているか?

に畏敬の念を覚えるのです。

 

それは、

本能的な信頼

です。

 

本能的な信頼を感じる人の言葉は

私達の心、というよりも

魂に響きます。

 

ですから私はいつも

コーチを目指す人達に言い続けています。

 

「クライアントさん以上に

コーチが進化をし続けなさい」

と。

 

クライアントさんの進化スピードよりも

遅い進化スピードのコーチは

クライアントさんに良い影響は

起こせないのです。

 

そういった意味で、人のサポートというのは

非常に厳しいものです。

 

サポートされる側よりも

サポートする側の進化の度合いが

高くなくては、

本質的なサポートができないからです。

 

このように書くと、恐らく多くの人は

うわっ、進化というのは大変そうだ、

そんなのは自分には無理だ、

と思われるかもしれません。

 

しかし先ほども書きました通り、

進化とは人間の本能の中枢です。

 

ということは、

進化とはとても

「気持ちいいもの」

なのです。

 

「進化」とは

安定です。

 

「進化」とは

安心です。

 

止まっている方が安定したり

安心できるのではありません。

 

人は、進化し続けている時こそが

最も安定し、安心できるのです。

 

ですから、

進化し続けている人は

端から見れば

「あの人、凄いなぁ」となりますが、

本人にとってはまったく

凄いことをしているという認識は

ありません。

 

むしろ、自然体で淡々と

普通に毎日を生きているだけであり、

それが最も幸せであり

安定・安心であるのです。

 

そういったことを

クライアントさん以上にコーチは

実感として知っていることが

重要です。

 

私ももうすぐ50歳ですので、

さすがに最近は年下のクライアントさんが

増えてきましたが、

以前は、私のクライアントさんは

10歳も20歳も年上の方ばかりでした。

 

しかも経営者が多かったものですから、

人生経験も、経営経験も

私以上の人達ばかりでした。

 

本当に素直に尊敬できる方達が

多かったです。

 

そんな方々をクライアントさんにするわけですから、

私にできることはただ一つ。

クライアントさん以上のスピードで

自分自身が成長(進化)すること

でした。

 

もちろんそれは

勝った負けた、

ということではありません。

 

でも私は、

自分の進化スピードを加速

し続けました。

 

加速して、加速して、加速して・・・。

 

その中で初めて知ったのです。

 

どれだけ加速しても、

まだ足りない、と。

 

まだ自分は満足できない、と。

 

まだ、自分が本来望んでいる

進化スピードには程遠い、と。

 

それは、

私個人だけに当てはまることでは

ありません。

 

すべての人が、

自分の進化スピードは

まだ遅過ぎる、という

ジレンマを持っていると

ある時に気づいたのです。

 

その時から私のコーチングの

テーマの一つが決まりました。

 

どんなクライアントさんにも

当てはまるテーマです。

 

それは、

「その人の望む進化スピードまで上げる」

ということです。

 

すべての人が、

自分の進化スピードに

満足していないのです。

 

本当に満足している人とは、

現時点ではまだ一人もお会いしたことが

ありません。

 

それだけ私達人間は、

「進化」したい存在なのです。

 

今のスピードは

気持ち悪いのです。

 

もっと気持ちよく

なりたいのです。

 

だからこそ、です。

 

だからこそ、

コーチは、クライアントさん以上の

スピードで

進化し続けることが必要であると、

私は思います。

 

クライアントさん以上に

気持ちのよい人生を送るのが、

コーチの必須条件です。

 

つづく

 

本当は、自力で脱皮できればいいんだけど・・・

「脱皮」とは、

大きく「進化」すること。

 

そして「進化」とは、

より「自由」になることです。

 

ですから「脱皮」をすればするほど、

私達は、何かから開放されます。

人としての根本的な幸せを

感じるようになります。

 

しかし「脱皮」そのものについては

不安定さと恐怖心が

伴います。

 

これをたった一人で

乗り越えることのできる人は

なかなかいません。

 

通常は、

「今、自分は脱皮しようとしている」という

自覚はありません。

「脱皮」そのものの概念すら

ないでしょう。

 

何もわからない状態です。

 

ですから、

突如として襲ってくる不安定さと恐怖心を

何とか消そうとするのが

ほとんどの人です。

 

そしてそのための手立てを打ちます。

それにより実際に

不安定さと恐怖心を減退させることも

あるでしょう。

 

しかし、それをしてしまうと

「脱皮」は完了できません。

 

「脱皮」のチャンスを逸し、

「脱皮」をしないままに人生を進む

ということになります。

 

それはそれで一つの人生

かもしれません。

 

しかし、

脱皮のチャンスを逸し、脱皮せずに進む

というのは、

脱皮のチャンス以前の自分に比べて

苦しさが増します。

 

なぜならその人は

「なぜ、脱皮をきちんとしないんだ!」

と自分で自分を責め続けるように

なるからです。

 

もちろんそれは無意識に行われることですから

本人は認識していません。

しかし明らかに

以前よりもその人は人生における苦しみが増し、

その苦しみに耐えながら生きる

ということになります。

 

脱皮のチャンスを逸してしまったことによる

苦しみ。

 

これは私達が想像する以上に大きな

ものです。

 

できれば私はすべての人が、

この苦しみを味わわずに人生を

進ませる、

つまりは、きちんと脱皮を続ける人生を生きる、

・・・そんな状態になればいいなと

思っています。

 

極端に言えば、

それができるだけで、

世界はもっと平和になるのではないかと

私は思います。

 

脱皮には

的確なサポートが必要です。

 

本当は、サポートなしでも行ければ

よいのですが、

現在の世の中においては、

どうしても、サポートが必要です。

 

それが、コーチの存在意義の一つである

と私は思っています。

 

多くの人が健全に脱皮を続け、

世の中の次元がもう少し高まれば、

自力で脱皮できる人の割合も

もっと高まるのではないかと思います。

 

そうなるためにも、

今はコーチが、的確なサポート役が

必要なのだと思います。

 

木村さんと弓江さんは今、

二人コーチングのその場で、

自らの脱皮を完了させようとしています。

 

まずは、弓江さんが

今まさに脱皮しようとしています。

 

実在レベルの表現を使えば、

弓江さんは、これまでの古い皮をほぼ

脱ぎ捨て、

その皮は今、

左足に絡まっている状態です。

 

そしてその皮に意識を向けると、

それは、

「私の“正義”ですね」

と、弓江さんは自覚しました。

(→前回記事)

 

通常のコーチングでは、

「では弓江さん、その“正義”とは

具体的にどういったものですか?」

というような質問をするかもしれません。

 

しかし、脱皮時においては、

あえてそれ以上のことは訊きません。

“正義”という言葉に反映される

あらゆるもの、

というくらいのザクッとした認識で

充分なのです。

 

理屈では脱皮できません。

顕在意識はあまり

働かさない方が良いのです。

 

「弓江さん、

その左足に絡まっている“正義”を、

完全に取り去ることはできますか?」

 

弓江さんはしばらくの間、

左足に意識を向けていましたが、

「う〜ん、難しいですね。

どうしても取り払えません」

と、苦しそうに言いました。

 

「どうすれば、

取り払えそうですかね?」

 

すると彼女は、

面白いことを言いました。

 

「木村リーダーに

取ってもらおうかな。」

 

「えっ? 私ですか?」

と、木村さんは少しびっくりした表情。

 

「わかりました。

それはなかなか良いアイデアですね。

では木村さんに取ってもらいましょう。」

 

つづく

 

コーチングより、指導してください

木村さんとお話しした後、

(→前回記事)

私は少し弓江さんともお話をしたく

なりました。

 

あえて1対1で

お話ししたいと思いました。

 

弓江さんはすぐに時間を

取ってくださいました。

 

さっそく私は本題に入りました。

 

「弓江さん、突然の展開でしたね。

プロジェクトメンバーが半分に縮小されることになり、

今はどんなことを感じていらっしゃいますか?」

 

「木村とも話していたのですが、

実はそれほど驚いたわけではありません。

何となくこうなることは

わかっていたような気がします。」

 

「特に気負いもなさそうですね。」

 

「はい。

むしろ、スッキリした気分です。

今の縮小されたメンバーだけの方が

正直言いまして、やりやすいです。」

 

「木村さんは、これで生産性が

上がるのではないか、と言われてました。」

 

「私もそう思います。

もちろん、残されたメンバーは未熟です。

能力も経験も高めなればいけませんが、

それはさほど難しいことのように

思えません。」

 

やはり弓江さんは

今回のこの展開をニュートラルに

受け止めているようです。

 

しかも私は彼女から

一種の覚悟のようなものを感じました。

 

「何となくですが、

今の弓江さんからは覚悟のようなものを

感じるのですが、自覚ありますか?」

 

「覚悟ですか・・・。

それほど大仰なことではないと思いますが、

私は、たけうちさんがおっしゃったように

チームにおけるコーチとしての在り方を

貫こうと思っています。」

 

「具体的にはどういったことに

注力されるのですか?」

 

「まずは、木村リーダーのサポートです。

彼が、これまで以上に本来の彼を出せるように、

私は彼の隣で寄り添います。

そして、メンバー一人一人の育成です。

私自身が前線に立つというよりも、

前線に立つ彼らを育成するということが

私の役割だと思っています。

彼らの成長が、すべてを決めますね。

そう思っています。」

 

一言一言が

とても腑に落ちる感覚がありました。

すべて真本音で語っているようです。

 

「私は木村さんから、

もう一歩深くプロジェクトに関わってほしい

という依頼をいただきました。

チームメンバーにも直接関わってほしい、と。

弓江さんはどう思いますか?」

 

「ぜひお願いします。

私はコーチとしての在り方をしたいと

言いましたが、

そんな私自身がまだまだ未熟です。

たけうちさんにお願いしたいのは、

私を指導してほしいということです。

私をコーチングするというよりも、

私のメンバーへの対し方を現場でご覧いただき、

私を厳しく指導してほしいのです。」

 

なるほど。

 

この一言を聴くために、

私は弓江さんとお会いしたのだなと

思いました。

 

「弓江さん、直観でお答えください。

今のチームの力を数字で表すと

いくつになると思いますか?」

 

「・・・。 7、です。」

 

「では、チームの本来の力を

数値で表すと?」

 

「・・・。 あぁ、大きいですね。

2,470という数字が浮かびます。」

 

「面白い数字ですね。

しかし、7 と 2,470 ですか。

まだ今のチームは、まったく本来の力を

発揮していないのですね。」

 

「そうですね。

確かに、彼らの力はまだほとんど

眠ったままです。

脱皮しなきゃ、ですね。」

 

「その脱皮、弓江さんが起こしますか?」

 

「えっ? 私にできますか?」

 

「はい。

当初は私が直接皆さんの脱皮のサポートをしようと

思っていましたが、

弓江さんが彼らの脱皮をサポートする、

ということを大切にしていこうかな。」

 

「もしそれが可能であれば、

ぜひお願いします!」

 

大事な方向性が

見つかりました。

 

つづく

 

悩まない人は、自由になれない

私は、

「自由になる」

とは、

「直観に素直になる」

ということだと思っています。

 

もちろん、

「思考」を否定しているわけでは

ありません。

 

しかし「思考」とは

「直観力」を高めるための

一つの手段である、

と思っています。

 

何も「思考」しない人からは

「直観」は生まれません。

 

なぜなら私達の真本音は

「試行錯誤」を非常に

重要視しているからです。

 

結果のみならず、

結果に至るまでの過程(プロセス)の

一歩一歩を大切にしています。

 

ただ単に望む結果を出すのではなく、

その道のりの中で得られるものこそを

大切にしています。

 

そこで必要なのが、

「思考」すること。

言葉を換えれば、

「悩む」こと。

そして、

「迷う」ことです。

 

悩むべきことに

100%しっかりと悩み、

迷うべきことに、

100%しっかりと迷い、

考えるべきことを

100%しっかりと考えることで、

初めて、本当の「直観」は

働くようになります。

 

そしてそこで得られた

「経験」は、

次の似たような傾向の「経験」や

応用的な「経験」において

力を発揮するようになります。

つまりは、

「悩まなくても一瞬で決断ができる」

状態となるのです。

 

私が企業現場でいつも実感するのは、

本来悩むべきことから

逃げている人が実に多い、

という事実です。

 

悩みから逃げるからこそ、

直観が働かなくなります。

そしていつまで経っても

その悩みを解決できない、という

悪循環に陥ります。

 

人生が、仕事が、

ストップしてしまうのです。

 

それは、

進化のストップ、ということでもあります。

 

冒頭の言葉に戻りますと、

「自由になる」とは

「直観に素直になる」ということ。

そのためには、

悩みや迷いから逃げないことです。

 

きちんと「直観」の働く状態に

自分を持っていくということです。

 

さて。

 

木村さん、弓江さんの二人コーチングの

場面に戻ります。

 

二人が「直観的」に決めた

チーム員のペアの組み合わせは、

思考レベルで考えると、

とても納得のいくものではありませんでした。

(→前回記事)

 

「直観」ではOK。

「思考」ではNG。

 

こうした場合、

私はコーチとしてあえて

「断定」することにしています。

 

一般的に、コーチは

クライアントの意見を尊重して、

自分からは答えは言ってはならない

というのが原則だそうです。

しかし、私は時と場合で、

思いっきり結論を言いますし、

断定もします。

時には、「指示」に近いこともします。

 

クライアントが

「直観」か「思考」かで迷った場合、

多くの場合、私は断定します。

 

「ここは直観で行ってください」

と。

 

有無を言わせない空気感を

出します。わざと。

 

それでも抵抗するようなら、逆に

直観に従うことは

やめた方がよいでしょう。

 

しかし、木村さんと弓江さんは

私のその断定を聴いて、

とてもホッとした表情をされました。

 

「わかりました。

これでやってみます」と

木村さんは言いました。

 

そこに、理由や理屈はありません。

それを探してもしょうがない、

という場面です。

 

それをまた木村さんと弓江さんは

直観的に悟ったようです。

 

今から思えば、

この時の二人コーチングが

本当に運命の分かれ道でした。

 

つづく

 

「一つ」になれば、質問すら要らなくなる

これからは弓江さんが

新規事業プロジェクトチームのミーティングの司会を

「コーチ」として行なうことが決まりました。

(→前回記事)

 

木村さんと弓江さんの二人コーチングは

さらに続きます。

 

もうこの頃になると、

私達3人は完全に「一つ」になっています。

 

もちろんそれは感覚的なものです。

 

でも私は、二人の呼吸が

手に取るようにわかるようになっていました。

 

そんな時、私はいつも

あえて私が「問い」を創ることをやめてしまいます。

そして、

次のように言葉をかけたりします。

 

「ここまでの流れとまったく関係なくてもよいので、

何か喋りたいことはありますか?」

 

・・・と、二人に投げます。

 

すると、自然に「喋りたい空気感」が

どちらかから伝わってきます。

 

今回は弓江さんから伝わってきました。

 

「弓江さん、

何か喋りたいことがあるのでは?」

 

そう言われて弓江さんは最初、

「え〜、何か私、喋りたがってます?」

と言いましたが、ふと、思い出したように、

「あっ、あります!」

と答えました。

 

「全然関係のないことなのですが、

それでもいいですか?」

 

「はい、大丈夫ですよ。」

 

「木村リーダーって、西畑さんとお話しすると、

いつも何かおかしくなりません?

何かに取り憑かれたようになる、というか・・・。」

 

そうでした。

 

私が、木村さんと弓江さんの二人コーチングを

しようと思った直接のきっかけは、

西畑さんからの「エンティティ」でした。

(→【取り憑かれるのは普通のこと】)

 

どうやら木村さんが西畑さんから

強烈なエンティティを受け取っているらしい、ということを

弓江さんの「観察」によって私は知ったのです。

 

私は、エンティティについて、

二人に詳しく説明をしました。

 

その話を聴いて木村さんは、

「とてもよくわかります」

と言われました。

 

「西畑と喋った後は、なぜがいつも

すごく疲れるんです。

私は彼とは仲がいいし、気も合うと思っているのですが、

なぜか時々、すごく疲れるんです。

まぁ、何かの偶然なんだろうな、と思っていました。」

 

「いつも、体のどの辺りが

疲れますか?」

 

「・・・そうですね。

肩から背中にかけて、ドーンと重くなると言うか。

鉛が乗っかっていると言うか。」

 

「今はどうですか?

その感覚はあります?」

 

木村さんは、ジーッと肩や背中に

意識を向けているようでした。

 

「何となくですが、

ちょっとだけ重い感じがします。」

 

「あぁじゃあ、今も少しだけ

エンティティが憑いているかも知れませんね。」

 

「ホントですか?」

 

「はい、ちょっと見てみますか?」

 

つづく

 

確信を持った指示は、押しつけでもいい

木村さんは、新規事業プロジェクトチームの

真本音を「理念」として言語化することが

できました。

 

それが、

『全員がチームの代表として

お客様と向き合う』

です。

(→前回記事)

 

言語化することで、

自分自身がこの理念に外れる行動をとっていたことを

木村さんは自覚しました。

 

彼は、とても清々しい表情で

「自分は間違っていた」

と言いました。

自分が正しいとか間違っているとか、そんなことよりも

真本音の理念を見つけ出した喜びの方が

大きかったのでしょう。

 

もちろん、弓江さんも喜びました。

 

木村さんが「間違っていた」と言った時、

弓江さんは、「そうでしょう!」と相づち。

そして二人で笑い合いました。

 

いい感じです。

 

すかさず私は次の問いを投げました。

 

「弓江さん、

弓江さんは木村さんをサポートするために

何をすればよいですか?」

 

「えっ?」

 

「今ならわかるのではありませんか?」

 

弓江さんは少し目を瞑って考えました。

 

そしてこう言ったのです。

 

「木村リーダー、

私は木村リーダーに何をすれば

サポートになりますか?」

 

この一言。

 

これは本当に木村さんには嬉しかった

ようです。

 

「えっ、そう言われてもなぁ・・・。」

と言いながら、とても嬉しそうな表情。

 

「木村さん、

ここはしっかり考えて、弓江さんに

指示を出してください。

真本音の指示を。」

 

しばらく木村さんは考え、

言いました。

 

「私と一緒にミーティングの場を

創ってください。

弓江さんにミーティングの司会を

お願いします。」

 

これには弓江さんが驚きました。

 

「えっ? 私が司会ですか?

いや、私は司会の経験はありませんし、

向いていないと思います。」

 

「いや、私は弓江さんに司会をしてもらいたい。

それが、とてもいい気がする。

たけうちさん、どうです?」

 

私は大賛成でした。

 

「実はね、木村さん。

弓江さんにはコーチの才能があるんですよ。」

 

「そうですか!

実は今、私も何となくそんな気がして。

私は以前、自分がプロのコーチになるなんてことを

言っていましたが、私なんかよりも

弓江の方がいいかな、って思ったんです。」

 

さすが木村さんです。

 

「弓江さん、私が弓江さんに司会のやり方を

教えますので、やってみませんか?

司会というよりも、チームコーチングのコーチ役

ですよ。」

 

最初、弓江さんは「え〜っ?」と言いながら

拒んでいましたが、

木村さんが、「これはリーダーとしての指示です」

の一言で、あきらめました。笑

 

「そのかわり、しっかりと事前準備をしましょう。

ミーティングの目的と、

そこでどのような問いを投げるか?を

しっかり準備しましょう。

その上で、あとはアドリブでやればいいんです。

コツはすべて私が教えます。」

 

ということで、弓江さんは司会をやることに

なりました。

 

今思えば、これが本当に

運命の分かれ道でした。

 

司会をすることで弓江さんは、

本来彼女が持っていた天性の力を

ぐんぐん発揮することになります。

 

彼女こそ、

プロのコーチと言ってもよいくらいの

力を持っていたのです。

 

つづく

 

見えないところで何が起きているか?

人の意識とは、

・顕在意識が1%、

・潜在意識が99%、

と言われています。

 

つまり、

自分の見えていない(把握していない)自分の心が

99%を占めるということです。

 

私は、人と人のコミュニケーションも

同じことが言えるのではないかと

実感しています。

 

表面上に見えているコミュニケーションのやりとりは

たったの1%。

見えないところでこそ、

何が起きているか?

 

それを把握することは

とてつもなく重要であり、

その、すべて、とは言わないまでも、

見えない部分の何割かを、きちんと把握できることが

コーチの役割の一つであると思っています。

 

エンティティのやりとり、

などはその典型です。

(→前回記事)

 

信じられないことかも知れませんが、

以前に、次のようなことがありました。

 

ある会社での出来事。

 

その会社は、20数名の中小企業さんでした。

 

まるで家族のように、

ずっと社内の雰囲気の良い会社でした。

 

ところがある時を境に、急激に社内の雰囲気が

悪化しました。

 

これまでずっと一致団結してきた社員さん達が、

突然、派閥を作り、争いを始め、

同じ事務所にいるにも関わらず、

一日中、口もきかない状態となりました。

 

当然それはすぐに業績に反映されました。

 

なぜそうなってしまったのか?

その本当の原因がずっとわからない

という状態が続いていました。

 

私は、その会社の社長から

管理職社員のコーチングのご依頼を

受けました。

そのため、まずは社長と面談をしたのですが、

どうも何かがおかしい、と感じました。

 

そこで、

「社内の雰囲気が悪くなってしまう直前に

入社した人はいませんか?」

と社長に確認しました。

 

すると、3名の中途入社社員さんがいました。

 

私は、その3名と面談しました。

 

結果、そのうちの一名が

とてつもなく濃いエンティティを持っていることが

わかりました。

 

それは女性社員さんだったのですが、

そのエンティティは、その人のものでは

ありませんでした。

 

その人の旦那さんのものでした。

 

つまり、その女性社員さんが

旦那さんの非常に濃いエンティティを受け取り、

それを、毎日、社内に持ち込んでいたのです。

 

それにより、皆さんの関係が

おかしくなっていた。

 

それを確信した私は、

その女性社員さんの旦那さんともお会い

しました。

一緒にランチをする、という形で。

 

そこで旦那さんと繋がり、

彼のエンティティを浄化することを

続けました。

 

そのエンティティは、彼自身が発生させている

ものでした。

 

彼は、自分の生き方に本当はとても

こだわりのある人だったのですが、

彼自身がその生き方を裏切るような感じで、

本来、自分の望む人生とは真逆の人生を

歩んでいました。

 

私は、彼の真本音度合いを上げるコーチングをし、

結果、彼はエンティティを発生させなくなり、

結果、女性社員さんもエンティティを

社内に持ち込まなくなりました。

 

その途端に、社内の雰囲気が

元に戻りました。

 

元に戻るまでの期間は、

わずか、3ヶ月。

 

ウソのような話に思われるかも知れませんが、

本当のことです。

 

そういったことが

実は、たくさんあります。

どこにでも、あるのです。

 

さて、木村さんと弓江さんのお話に戻ります。

 

木村さんがどうしても真本音の自分に脱皮できず、

どうしても、反応本音のパターンが抜け切らない理由が

西畑さんかもらっているエンティティであることが

わかりました。

 

であれば、

西畑さんのエンティティに負けないくらいに

木村さんを強くするか?

それとも、西畑さんを何とかするか?

の対策が必要です。

 

私は、西畑さんにお会いすることに

しました。

 

つづく

 

向き合い方一つで発想が変わる

人を主にすることで輝く人がいます。

(→前回記事)

 

そういったタイプの人は

コーチに非常に向いています。

 

要するに、

『コーチタイプ』

と言えます。

 

コーチタイプの人は

どのように人と関わればよいでしょうか?

 

その基本は

実にシンプルです。

 

それは、

「その人のことをあるがままに観察する」

ということです。

 

実は、

コーチタイプではない人がこれをやろうとしても、

「あるがまま」というのが結構難しいのです。

 

「あるがまま」観察しているつもりでも、

知らぬ間に自分の解釈のフィルターをかけて

その人のことを色眼鏡で捉えてしまう傾向があります。

 

そういった人はむしろ、

自分自身の願いと向かい合って進んだ方が

周りとの調和を起こしやすいのです。

 

コーチタイプの人は、

人をあるがままに観察することで

直観が非常に多く働くようになります。

 

その直観に素直に従って、その人と関わることで

その人にパワーを与えたり、

その人にとっての必要な気づきを喚起したり、

その人自身が自らの指針を見出すサポートを

することができます。

 

相手をあるがままに観察しながらコミュニケーションを

とっている状態を、私は

『レベル3コミュニケーション』

と呼んでいます。

 

コーチタイプの人は

このレベル3コミュニケーションが得意なのです。

 

まず私は、弓江さんに

レベル3コミュニケーションのコツを

お伝えしました。

そして2週間、それを実践していただきました。

 

実践の第一段階として、

「とにかく木村さんを、あるがままに観察する」

ことのみに集中していただきました。

それ以上のことは

「あえて何もしないでください」

とお願いしておきました。

 

すると、2週間後の弓江さんからの報告は

私の予想を超えるものでした。

 

「たけうちさん、

木村という人間は、かなり器が大きいのでは

ないでしょうか。」

 

コーチングの最初に弓江さんはいきなり

そう言われたのです。

 

私は少しびっくりしました。

 

「どうしてまた、そう思われたのですか?」

 

「いえ、何となくですが、

毎日できるだけ、あるがまま、を意識して木村を

観察し続けたら、日に日に彼が大きく見えるように

なったんです。」

 

「特に木村さんのどんな振る舞いを見たときに

そう思われました?」

 

「う〜ん、何か振る舞いがあったからそう思った

というわけではないんですよね。

木村の存在自体に大きさを感じたと言いますか。」

 

「その彼の存在の大きさと、彼の言動が

一致している瞬間というのはどんな時でした?」

 

「・・・あっ、そうそう。

彼が瞬時に決断する時です。

木村はよく思考に入ってしまうのですが、

時々直観的に決断を下す時があります。

その時の木村の表情はとても晴れやかで。

しかも、その場の空気感が安定します。

なんか、守ってもらっているような安心感です。

そんな時に、彼の大きさを感じました。」

 

「いや、すごいなぁ、弓江さんは。

なかなか最初からそこまでの観察は

できないですよ。」

 

「えっ、そうですか?

あるがまま、ということだけ意識すれば

普通にできますよ。」

 

やはりこの人はコーチタイプです。

 

「それ以外に、木村さんについて

何か気づいたことはありますか?」

 

「う〜ん、上手く言えないのですが、

彼、何かに取り憑かれてませんか?」

 

つづく

 

人をサポートすることで輝く人がいる

人には2タイプあります。

 

自分を主にすることで

力を発揮するタイプ。

 

そして、

人を主にすることで

力を発揮するタイプです。

 

自分を主にすることで

輝くタイプと、

人を主にすることで

輝くタイプ、

という言い方もできます。

 

コーチに向いている人というのは

後者です。

 

実は、木村さんは完全に前者でした。

ですので、

彼が「プロのコーチになりたい」と言われた時、

あぁこれは反応本音レベルの発想だなと

わかりました。

 

反対に、弓江さんは

後者のタイプです。

 

しかし恐らく、彼女はこれまでずっと

自分を主にして生きてきたはずです。

そのため、

自分の本来持っている力を発揮せずに

ここまで来てしまいました。

 

本来持っている力、それが

『尊重力』

です。

(→前回記事)

 

尊重力とは、

すべての人をあるがままに受け止め、

その人のすべてを尊重しながら育む力です。

 

尊重力のある人と関わると、

関わった人達は、本来の自分自身を

伸び伸びと出すことができ、かつ

本来の自分の力を発揮し、伸ばすことができます。

 

一言で言えば、

尊重力のある人と毎日関わると、

そこにいる人達は、日々、進化します。

 

そういった力を天性で持っている人がいます。

そういった人は、私は

コーチになることを本当にお勧めします。

プロのコーチになるという狭い意味ではなく、

コーチ的な立ち位置でコーチ的な関わりを持つことを

お勧めする、という意味です。

 

そういった人達にこそ私は

コーチングスキルをお伝えしたいのです。

 

弓江さんはまさに

その典型のような人でした。

 

弓江さんは間違いなく、

木村さんの本来の魅力を伸ばすサポート役として

活躍してくれることでしょう。

 

しかし逆に言えば、木村さんは

そんな宝物のような存在を、自分から

遠ざけようとしていたわけです。

 

私は、さらに弓江さんに

木村さんについての印象をお伺いしました。

 

「弓江さんからご覧になって、

木村さんの気になるところは他にありますか?」

 

「・・・木村は、どうでもいいところにこだわるんです。

そんなこと、どっちでもいいじゃん、ということに。」

 

「例えば、どんなことがありましたか?」

 

「・・・例えば、お客様のクレームの時でもそうでした。

クレームが入って、すぐに対応すればいいのに、

誰がクレーム処理をすべきか、を随分と悩んでました。

もちろん、それは大事なこともありますが、

でも、そのクレームには迅速さこそが最重要でした。

私がすぐに行けるって言ってるのに、

彼はしばらく思案していたんです。

何が大事か?を見失って、必要のないところで思案する、

というところが見ていてとてもイライラします。」

 

「よくあるのですか?」

 

「はい、よくあります。

もちろん、そうでない時もありますが。

そうでない時は、すがすがしいくらいに

パンパンパン、っと決断するんですが。

でも思案に入ってしまう時は、・・・まるで別人みたいです。」

 

恐らく、木村さんが真本音の決断をしている時は

弓江さんは「すがすがしい」と感じ、

そうでない時は、「イライラする」となるのでしょう。

ある意味、

とても本質をついた感覚です。

 

「木村さんが常に、すがすがしい木村さんで

いられるように彼をサポートしたいのですが、

弓江さん、手伝っていただけますか?」

 

「私にできることがありますか?」

 

「大いにあります。

弓江さんがコーチとして接するんですよ。」

 

「えぇ? それは無理だと思いますよ。」

 

「無理ではないですよ。

むしろ、絶対楽しめますよ。」

 

「なんか、そんな風に断定されると困りますが・・・。」

 

「具体的な接し方は、私がすべてお教えしますので、

やってみませんか?

楽しいですよ。」

 

「じゃあ、そんなに言われるなら

やってみましょうか。

・・・わかりました。

やるなら徹底的にやります。」

 

さすが弓江さんです。

こういったところに真本音度合いの高さが

現れます。

 

真本音度合いは高まれば高まるほど、

人は潔くなるのです。

 

つづく

 

説得しようとしないことが、思わぬ好展開を生む

弓江さんが変化することで、

木村さんが変化する。

その順番で、二人の真本音度合いを

一気に引き上げる。

 

それが今、私にできる最善のサポートであると

確信しました。

(→前回記事)

 

そんな流れの中での

「弓江さんはコーチに向いています」

というメッセージでした。

 

ところが、弓江さんはすぐにはそれを

受け止めてはくれませんでした。

「とてもとても信じられません」

と。

それはそうでしょう。

当然、そのような返事が返ってくると思っていました。

 

さぁ、真本音コミュニケーションを続けましょう。

 

こういった時ほど、相手の真本音に委ねます。

間違っても、

説得しようとか、納得してもらおうとかは

思わないことです。

 

「どうして、信じられないのですか?」

 

「だって、たけうちさんもわかりますでしょ?

私のこのコミュニケーションを見れば。

どう見ても、コーチ向きではないでしょ。」

 

「そうですねぇ。

コーチとは真逆のコミュニケーションですね。」

 

「でしょ!

こんな私にコーチング力があるとは思えません。」

 

「ありますよ。」

 

「ですから、どこがですか!」

 

彼女はついに怒り出しました。

大変申し訳ないのですが、私は内心

クスクスと笑いが止まらなくなりました。

 

「コミュニケーションの取り方は、なかなか

最悪ですね。」

 

「わかってますよ!

だから向いてないと言ってるんです。」

 

「でも、コミュニケーションの取り方以外は

すべてコーチに向いてますよ。」

 

一瞬、弓江さんは私の言っている意味を

把握できなかったようです。

しばらく目を白黒させていました。

 

「どういうことですか?

コーチって、コミュニケーションの取り方が

重要なんですよね。」

 

「コミュニケーションの取り方なんて、

表層的なことですよ。

現に、弓江さんと同じようにはっきりくっきり

物を言う人で、コーチング力のすごい人を

私は何人も知っていますよ。」

 

「えっ? じゃあコーチング力って何ですか?」

 

「今は教えません。」

 

「えっ? なに? どうしてですか。」

 

「教える必要がありませんから。」

 

「まったく意味がわかりません。」

 

「わからなくてもいいです。」

 

「たけうちさん、

私をからかってませんか?」

 

「全然からかってませんよ。

弓江さんとのコミュニケーションを楽しんでます。」

 

「それ、からかってるってことでしょう!」

 

そう言って彼女は笑い出しました。

この明るさ。

これが、弓江さんの本質です。

 

例えば、真本音度合いの低い人に

このようなコミュニケーションを取れば、

間違いなく深刻な展開となっているでしょう。

しかし弓江さんは笑い出しました。

 

私が意図してやっていることではありません。

真本音に委ねているだけのことです。

 

「弓江さんは、私がどんなコミュニケーションを取っても

そうやってまっすぐに向き合ってくれるじゃないですか。

私の一言一言をちゃんと聴いてくれる。」

 

「えっ? 私は聴き下手ですよ。

いつも、もっと人の話を聴きなさい、って

叱られます。」

 

「じっくり聴くことはしないと思いますが、

肝心なところをちゃんと受け取っています。

そしてそれに対して、まっすぐに考え、まっすぐに

返してくれます。

それがとても心地よいです。」

 

「う〜ん、確かに、まっすぐというのは

私らしいかもしれませんが。」

 

「弓江さんは、今私が弓江さんに

何を伝えようとしているかわかるんじゃないですか?」

 

「何を伝えようとしているか?

・・・私に『変われ!』ということですか?」

 

「どこを『変われ!』と言っていると思いますか?」

 

「・・・なんか、大したことを要求されている感じは

しません。

ちょっとしたところを変えた方がいい、と

言われている気がします。」

 

「さすがですね!

そこが、コーチに向いているところなんですよ。

本質を掴む力がピカイチです。」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「そうですよ。

例えば、木村さんの今の状況とか。

弓江さんが感じ取ることは非常に本質を

ついているんです。

最も肝心な部分を明確に言い当てています。

それができる人は、コーチに向いてるんですよ。」

 

「・・・そんなもんでしょうかね。」

 

「はい、そんなもんです。

弓江さんはちょっとだけご自分を変えれば

いいんです。」

 

「どこをですか?」

 

「コミュニケーションの取り方を、です。」

 

「えぇ? そんなこと言っても

今の私のコミュニケーションの取り方は長年ずっと

これでやってきたものです。

変えることなんてできませんよ。」

 

「そう思い込んでるだけのことです。

コミュニケーションなんて、最も簡単に変化させられる

ものなんです。

形を変化させるだけですから。

それは私が教えます。

でもこれは、本質を掴む力を持っている弓江さんだからこそ

有効なことなんです。

表面をちょっと変えるだけで、

劇的に物事の進展の仕方が変わりますよ。」

 

実はこの時点では弓江さんには伝えていなかったのですが、

弓江さんの力は、本質を掴む力、だけではなかったのです。

もう一つ、とても重要な力を持っていました。

それこそを、彼女はこれまで、恐らく一切、

使ってきませんでした。

 

それは、

相手を尊重する力

です。

 

私が、

『尊重力』

と呼んでいるものです。

 

つづく

 

的確な枠こそが、心を自由にさせる

「なぜ木村さんがコーチに向いていないか、

わかります?」

 

「はい、だって私は、

自分が主役でいたいからです。

だから、ロックバンドやってますしね。」

(→前回記事)

 

木村さんがこう答えた時、

私は実在レベルで、

木村さんの雲が完全に取り払われたのを

感じました。

 

そして、雲が取り払われたことによって

姿を見せたものがありました。

それは、

小さな一輪の花でした。

 

紫色で、とても小さく可愛らしい花ですが、

スッと一直線に茎を伸ばし、

凛として立っています。

 

イメージとして表現するとそんな感じですが、

「実在」ですので、

それは脳を使わずに感知したものです。

 

あぁ木村さんはやっと

木村さんの本来の花を咲かせ始めたんだな、

と思いました。

 

今後はその花を

大切に育てていくことです。

 

「やっと本来の木村さんらしさが

出て来ましたね。

どうですか木村さん、

自分が主役でいたい、と改めて認識されて、

今の木村さんの心は自由ですか?」

 

「はい、自由です。

なんか、急に肩の荷が降りた感じがします。

とても楽になりました。」

 

「じゃあ木村さん、

木村さんはこれからご自分のエネルギーを

何に向けたいですか?」

 

彼はニッコリ笑いながら言いました。

 

「もちろん、新規事業プロジェクトの成功です。

なんか、自分がなぜプロのコーチになりたい、と

言ったのか、まったくわからなくなって来ました。

そんなことはどうでもいい。

私はプロジェクトリーダーとして全力を尽くしたい。

そしてそれを成功させて、

平井を喜ばせたい。

あっ、たけうちさん、私は平井のためにやるんじゃないですよ。

自分のためにやりたいんです。」

 

「笑。わかってますよ。

自分のため=平井さんのため、でしょ。

平井さんを喜ばせたい、というのも木村さんの真本音です。

自分の喜び=平井さんの喜び、になってますよね。」

 

「そうなんです。

私は本当に平井のことが好きなんですねぇ。」

 

このブログをお読みの皆さんは覚えて

いらっしゃるでしょうか?

 

この木村さんとのやりとりをご紹介しているのは、もともと

「私達人間は、的確な枠(もしくは、限度・限界)を与えることで

可能性を伸ばす」

という原理をご理解いただくためでした。

(→【自分の可能性は無限? それはハッタリです】)

 

この場合の木村さんにとっての「的確な枠」とは、

新規事業プロジェクト

に他ありません。

 

つまり、今の彼は、彼自身に与えられた

新規事業プロジェクトのリーダーという役割を全うすること

によって、彼自身の最大の進化を引き起こせる

ということです。

 

しかし彼は、イケイケのパターン(クセ)を出し、

その枠を外れた発想(=プロコーチになる)を始め、

エネルギーが完全に分散してしまいました。

 

実は「コーチング力を伸ばしたい」という想い自体は

彼の真本音だったのですが、

その真本音の想いを実現するためには

「新規事業プロジェクトリーダーという役割の中で

コーチング力を伸ばす」

というのがベストだったわけです。

 

そしてもうお気づきのように、

こういった「的確な枠」とは、本人にとっては

「枠である」

という認識がありません。

 

「ここでこそ、全力を注ぎたい」

とか

「今はここに集中したい」

といったように、エネルギーの焦点化を起こすような

モチベーションのもと、になります。

 

つまり、「的確な枠」をはめることで

モチベーションが高まるのです。

 

逆に言えば、

人には、最もモチベーションの高まる「枠」が

存在するということです。

 

それを見つけることも

コーチとしての大事な役割の一つです。

 

つづく

 

たった一言によって、人の人生は変わるのかもしれない

コーチングをしていますと、

コーチとしての次の自分の一言が

今後の展開を大きく左右するだろう、という

「分岐点」を

強く実感する瞬間が訪れます。

 

それはかなり明確にわかります。

 

クライアントさん(の真本音)は、その一言を

全身全霊をもって待ち望んでいます。

 

どれだけ心を閉ざしている人であっても、

その時その瞬間は、ほんの一瞬だとしても

コーチである私に、100%のオープンマインド状態と

なります。

たとえ0.1秒だとしても。

 

その「分岐点」をつかめるようになることこそ、

プロのコーチとして必須の力であると

私は思っています。

 

木村さんへのコーチングにおいて、

その瞬間が来ました。

(→前回記事)

 

私は自然に浮かんだ一言を

彼に伝えました。

 

「木村さんは、コーチに向いていますか?」

 

その瞬間に、何の迷いもなく

彼からの返答がありました。

 

「向いていません。」

 

・・・と咄嗟に答えてから、

彼自身が、自分の言葉に驚いていました。

 

そして、しばらく茫然とした後に頭を抱えて、

「・・・向いてないのか、オレは」

と呟きました。

 

私は何も言わずに、

ただ黙って彼を見守ることにしました。

 

彼は心の中でいろいろと

自問自答をしていたようです。

 

実際にどのような自問自答をしていたのかは

私にはわかりません。

ただ、

彼の『実在』の変化ははっきりと

わかりました。

 

彼を覆っていた黒い雲から漏れていた

一点の光が、どんどん大きくなっていました。

 

雲が晴れ始めていたのです。

 

そうなるともう、

容易に「真本音コミュニケーション」ができるように

なります。

 

頃合いを見計らって、

私は彼に問いました。

 

「木村さん、いかがですか?

咄嗟にご自分のことを、コーチに向いていないと

言われましたが、

そう言われた理由はわかりますか?」

 

「いや、私には想いがないからです。

私は、プロのコーチとしてやっていこうという

気持ちがありません。

ずっとその気持ちは真本音だと思って来ましたが、

今、それが反応本音だとはっきりわかりました。」

 

「それでも木村さんは100人コーチングを目指して

2週間はコーチングをされましたね。

その2週間のコーチングでのご自分を振り返ると

今はどう感じますか?」

 

「・・・正直言って、全く心が込められていませんでした。

・・・心というよりも、魂が込められてないというか。

100人コーチングをやらなきゃ、という気持ちばかり。

・・・いえ、それよりも、

必ず100人を短期間でやり遂げて、たけうちさんを

ギャフンと言わせよう。

そんなことばかりを考えていたように思います。」

 

彼は正直です。

こういうところが、私は大好きです。

 

「この2週間で、コーチングをした方々の真本音を

感じ取ることはできましたか?」

 

「いえ、今振り返ると、真本音とか反応本音とか、

そんなことはお構いなしでした。

もちろんコーチングをしている時は、真本音を大事に

とは思っていました。

しかし、私はコーチングをこなすこと、

・・・いや、正確に言えば、

俺は素晴らしいコーチングができるんだ!と喜ぶために

コーチングしてました。

相手のことは眼中になかったです。」

 

「木村さんは正直ですねぇ。

でも、ちょっと自分を責め過ぎですね。

そこまでひどいものではなかったと思いますよ。

その時その瞬間は、懸命に向き合って来たのでしょ?」

 

「はい、自分なりにはやって来たつもりでした。」

 

「でも、それは真本音ではなかったと?」

 

「そうです。

私は私のためだけに、コーチングをして来たような、

そんな印象が今振り返るとあります。」

 

それから少し間を置いて、

木村さんは私に問いました。

 

「たけうちさん、

私は本当にコーチに向いていないのですか?」

 

私は即座に、はっきりと答えました。

 

「はい、向いていません。」

 

つづく

 

一撃必殺するのは本人

心をどうしても開かぬ人。

しかもその人が組織の重要な役割を担う人の場合、

私は、やむを得ず、「一撃必殺のコーチング」をします。

 

本来、コーチングとは、

クライアントのペースで進んでいきます。

一歩一歩をクライアントの納得のスピードで

クライアントが自らの答えを見つけながら、

腑に落としながら進んでいくのをサポートします。

 

しかしビジネスの現場や組織活動においては、

そうも言っておれない場合があります。

特に、平井さんのケースは

彼自身の心が、もう持たないことを私は

感じ取っていました。

(→前回記事)

 

彼のペースで進んでしまっては、

彼は昔の私のように心だけでなく体も

壊してしまうかもしれません。

 

私から見れば、彼はそれほどの

限界状態に映りました。

 

では、「一撃必殺のコーチング」とは

どのようなものでしょうか?

 

それは、強烈な外圧による「一撃必殺」では

ありません。

 

クライアント自身が内側から自らを

「一撃必殺」するための

きっかけを与えるものです。

 

何を「一撃必殺」するのか?

 

それは、

クライアント自身が今、壊したい自分

を一撃必殺します。

 

その壊したい自分とは、

本来の自分(真本音の自分)を阻害する自分

です。

それがあることで、

自分の「本来の味」を消してしまう自分です。

 

しかしそれをするためには

一つの重要な条件があります。

 

それが、

「クライアントは今、真本音で

自分を阻害する自分を壊したいと思っているか?」

つまり、

「本来の自分を取り戻したいと思っているか?」

の確認です。

 

クライアント自身が「壊したい」と思っていないにも関わらず、

それをするというのは極めて危険です。

いえ、むしろそういった場合は、

何をしても効果はゼロでしょう。

 

私は、平井さんに意識を乗せ続け、

平井さんに自分のすべてを委ねながら、

その確認をするタイミングを待ちました。

 

そのために、何度も平井さんにお会いしました。

 

平井さんの真本音は

固く閉ざされた状態です。

いきなり彼の真本音の声を聴くことは

できません。

 

しかし、本当の意味で「向き合い続ける」ことで

そのタイミングは必ず来ます。

それまでは、私は通常のコーチングを

平井さんに対して続けました。

 

何回も何回も、通常のコーチングを

続けました。

 

コーチングですので、平井さんは

それなりに様々なことを考え、仕事の改善をし、

自分の行動を改善されました。

 

しかしそれはただの表面的な変化です。

本質的には何も変わっていません。

本人は気づいていませんでしたが、

彼自身は「変わったフリ」をしていただけです。

 

ですので、彼の行動変容はこの時点では

私の目的ではありませんでした。

恐らく、コーチという私の存在がいなくなれば、

彼の行動はもとに戻るだけだったでしょう。

 

それがわかっていて私は

通常のコーチングを続けました。

それは、ただ平井さんと向き合い続け、

平井さんの真本音の声を掘り起こすチャンスを待つ

という目的のためだけでした。

 

当初、私はこの状態で3ヶ月はかかるのではないか

と予測していました。

しかし、1ヶ月を過ぎた頃、

ついにその瞬間が訪れました。

 

自分を相手に完全に委ね、

向き合い続けていれば、

真本音が出る瞬間は必ずわかります。

 

私はその瞬間を捕らえました。

 

即座に私は彼に問います。

「平井さん、

平井さんの心は、どこにありますか?」

 

突然、そう問われ、彼はしばらく

停止しました。

 

そして、こう返されたのです。

 

「・・・不思議です。

どこにもないような気がするのです。」

 

つづく