「たけうちさん、私もう100%自己中心かも

知れません。」

 

中原さんはそう言われました。

(→前回記事)

 

私が少しばかり驚いたのは、

彼女のその安定した雰囲気でした。

少なくとも私が出会ってからは

初めて感じる空気感です。

 

これまでの中原さんは、社長からも社員さんからも

信頼は厚かったのですが、

どことなくいつも自信なさげで、

しかし常に前向きではあるのですが、

その前向きさは、ちょっと力の入ったものでした。

 

少し無理をして「前向さ」を創り出しているという

感じでした。

 

しかし今はどうでしょう。

 

前向きとか自信がないとか、

そういった次元を超えて、ただただ

安定した中原さんがそこにいました。

 

何の力みもない。

しかし、とても毅然としている。

 

「どうしたのですか?」

と思わず私は訊き返していました。

 

「実は・・・」

と中原さんが語るところによると

次のような出来事があったそうです。

 

詳細はここでは書きませんが、

ある社員さんがお客様のもとで、ある一つの問題を

起こしてしまったそうです。

しかしその社員さんは、自己防衛のために

嘘をついてその場を切り抜けようとしてしまったそうです。

 

それに対して中原さんは

堪忍袋の緒が切れてしまいました。

 

「これまではそんなことはありませんでした。

社員がどんな問題を起こしても、自分を抑えて

冷静にその社員に対応してきました。」

しかしそれは、中原さんにとっては非常に

ストレスを生じさせる関わり方でした。

 

ここ何週間か、中原さんは「自己中心でいよう」と

し続けてきました。

恐らくその影響でなのでしょう。

 

「私はその社員を呼んで、1時間もお話をしました。

私は自分の感情を抑えることができずに、

自分の思っていることをそのまま社員にぶつけました。」

 

これまでの彼女には考えられない行動です。

 

すると驚いたことに、その社員さんは

涙を流しながら謝ったそうです。

実はその人は、これまでも何度か、嘘に近い報告をしながら

自己防衛をしてしまう癖があったそうで、

それが治らずに困っていたのだそうです。

 

「表面上はいつも反省するのですが、

それはどう見ても、表面上でしかないな、と

いつも思っていました。

なので、彼の癖はなかなか治らなかったのですが、

今回ばかりは、彼も本当に反省したようです。

次の日から、目の色が変わっているのがわかります。」

 

中原さんはそこで気づかれたそうです。

これまで自分が遠慮したり、変な気の遣い方をしていたからこそ

社員が伸びてこなかったのだ、と。

 

「そこからは私も反省しました。

私は、自己中心になるということは、単にわがままになる

ということだと思い込んでいました。

しかしそれは違うのですね。

自己中心になるからこそ、本当の愛情が出るのだと

知りました。

私は、これから自分の在り方を変えようと思います。

本気で。

なので、今はもう100%自己中心でいようとしています。」

 

そして・・・、

そこからの中原さんは凄かったです。

まるで別人になったかのように、

社員さん達と向き合うようになりました。

 

そしてその中で、彼女の生まれ持った強みが一気に発芽し、

ニョキニョキを芽を伸ばし始めたのです。

 

つづく