こんなことが楽しいなんて

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丘に登る
一本道が
ある。

だが
その道は、

二次曲線的に
どんどん
急になる。

最後は
まるで
垂直の壁の
ようだ。

こんなの、

と言えるのか?

こんなところを
私は
行こうと
しているのか?

いやだよ。

だって
進めば進むほど
急になるんだろ?

進めば進むほど
苦しくなるんだろ?

最初は
そう思っていた。

しかしそれでも
その一本道を
行ってしまう自分。

勝手に
足が前に出る
のだ。

そして
だんだんと
二本足では
進めなくなり、

四つん這いで
進むように
なり、

とうとう
垂直に
攀じ登る状態と
なるにつけ、

実は
この進み方が
一番、楽で

しかも
楽しい!

ということが
わかってしまった。

なんだ
人間も、
本当は
四つ足で進む
生き物なのか。
ただし、
それは
垂直な場合に
だけ。

と、
妙な納得を
した。

垂直とは
最短。

四つ足
とは
全エネルギーを
進むことにのみ
使う状態。

つまりは
全集中状態。

最短ルートの
全集中状態こそ
我々人間の
悦びなのだ。

これまで
ずっと
恐れてきたことが、

実は
最も楽で
楽しいことだったとは!

なんという
ある意味
不条理な
世界か。

さて。

そうやって
垂直の壁を
攀じ登り、
ついに
丘の上に出た。

するとなんと
丘だと
思っていたのに、
まだまだ
先があった。

なだらかに
広い平原が
続き、
ずっと先に
次の二次曲線が
見えていた。

あそこもまた
最後は
垂直なのだろう。

しかし
あの二次曲線までは
遠い。

あそこまで
また
二本足で
トボトボと
歩いて行かねば
ならないのか。

二本足は
つまらない。

だから
走ろう。

また垂直の
壁を
攀じ登りたい
のだ。

あぁ、
これが
人間の
宿命か。

つづく

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