「弓江さん、

実は、今私が直観的に感じたことなのですが、

今、日下部さんは何か助けを求めていませんか?

そのような気配を感じたことはありませんか?」

 

日下部さんの「実在」を感じ取った私は、

直観的にそのように弓江さんに

投げてみました。

(→前回記事)

 

すると弓江さんは

とても驚いた表情をされ、言いました。

 

「どうしてわかるんですか?」

と。

 

ただし、この「どうしてわかるんですか?」

という言葉は、

あらかじめ弓江さんが

日下部さんが助けを求めていることに

気づいていた、

ということではありません。

 

私からその言葉を聴くことで、

あぁ、そう言えばそうだった、と

その瞬間に気づいたのです。

それは

薄々何となくそう感じており、

薄々気づいていたことを

しっかりと指摘されることで自覚する、

ということです。

 

こういったことは、

非常によくあります。

 

逆に言えば、私達人間は、

薄々感じているが、明確には気づいていない

ということが実に多い、ということです。

 

よく私は、

「気づいていることに、気づいていない」

という表現を使います。

 

私達は日々の中で

本当にたくさんのことに気づきながら

生きています。

にも関わらず、

自分の気づきを、きちんと自分が

拾い上げていません。

ちょっと意識すればすぐに自覚できることを

自覚しないままに進んでしまいます。

それにより、

人生のターニングポイントとなるチャンスを

逸してしまっている人は

とても多いのです。

 

『気づき力』

という言葉も、私はよく使います。

 

「気づいていることに

きちんと気づく力」

です。

 

気づき力が高まれば、

人生も仕事も

一気に質が高まります。

 

そのためには、常に自分自身の心と

向かい合っているという習慣が

必要です。

 

私はそれを

『セルフコーチング』

とも呼んでいます。

 

この時の弓江さんも、

私からの指摘によって

「きちんと自覚していなかったけど、

でも何となく気づいていたことに

今、気づいた」

のです。

 

そして、それが

「どうしてわかるんですか?」

の一言によって現れました。

 

弓江さんは続けます。

 

「そう言えば、

新規事業プロジェクトチームの人員が

半分に減らされてから、

日下部の様子がおかしかったのです。

おかしいと言っても、ほんのちょっとの

ことですが。」

 

「どのようなご様子なのですか?」

 

「時々、ちょっと思いつめたような

表情をします。

何となく、空気が重いですし。

会話をすればいつも通りなのですが。」

 

「日下部さんは、

どんな助けを求めていると思います?」

 

「本人と話をしてみなければわかりませんが、

恐らく、日下部は必要以上に

責任感を持っているのではないでしょうか。

人数が減らされたので、

自分がやらねば、と思っているのだと思います。

それ自体は良いことですが、

ちょっと深刻になり過ぎて、

神経がまいっているのかもしれません。」

 

「木村さんは、どう思います?」

 

「そうですね。

さっき弓江が言ったように、

彼はこだわりが強いところがあります。

それだけ、新規事業プロジェクトにも

彼なりのこだわりがあり、

自分がやらねば、という気持ちがかなり

高まっているのは事実だと思います。

まぁ、私がみんなを鼓舞しましたので、

それを真面目に受け止め過ぎているのかも

知れません。」

 

しかし私は、

このお二人が言ったこと以外にも

彼が助けを求める要因があるような感覚が

ありました。

 

しかしさすがに、これ以上のことは

わかりません。

ここは、実際に日下部さんとお会いすることで

明確になることだと

私は思いました。

 

日下部さんと直接関わる上での

一つのテーマです。

 

このように、

事前にリーダーからの「印象」を聴いておくことで、

実際にその人とお会いする時の

テーマや視点を得られることも多いのです。

 

それが、一歩も二歩も深い

チームコーチングにつながっていきます。

 

私はさらに、

日下部さんの「実在」に

意識を向けました。

 

すると今度は、

彼が何かから目を逸らしている感覚を

得ました。

 

私はまた弓江さんに訊きました。

 

「ところで弓江さん。

日下部さんは、何かから逃げているようにも

私は感じるのですが、

心当たりはありませんか?」

 

「どうしてわかるんですか?」

 

弓江さんはまた同じセリフを

吐きました。笑

 

つづく