人を主にすることで輝く人がいます。
(→前回記事)
そういったタイプの人は
コーチに非常に向いています。
要するに、
『コーチタイプ』
と言えます。
コーチタイプの人は
どのように人と関わればよいでしょうか?
その基本は
実にシンプルです。
それは、
「その人のことをあるがままに観察する」
ということです。
実は、
コーチタイプではない人がこれをやろうとしても、
「あるがまま」というのが結構難しいのです。
「あるがまま」観察しているつもりでも、
知らぬ間に自分の解釈のフィルターをかけて
その人のことを色眼鏡で捉えてしまう傾向があります。
そういった人はむしろ、
自分自身の願いと向かい合って進んだ方が
周りとの調和を起こしやすいのです。
コーチタイプの人は、
人をあるがままに観察することで
直観が非常に多く働くようになります。
その直観に素直に従って、その人と関わることで
その人にパワーを与えたり、
その人にとっての必要な気づきを喚起したり、
その人自身が自らの指針を見出すサポートを
することができます。
相手をあるがままに観察しながらコミュニケーションを
とっている状態を、私は
『レベル3コミュニケーション』
と呼んでいます。
コーチタイプの人は
このレベル3コミュニケーションが得意なのです。
まず私は、弓江さんに
レベル3コミュニケーションのコツを
お伝えしました。
そして2週間、それを実践していただきました。
実践の第一段階として、
「とにかく木村さんを、あるがままに観察する」
ことのみに集中していただきました。
それ以上のことは
「あえて何もしないでください」
とお願いしておきました。
すると、2週間後の弓江さんからの報告は
私の予想を超えるものでした。
「たけうちさん、
木村という人間は、かなり器が大きいのでは
ないでしょうか。」
コーチングの最初に弓江さんはいきなり
そう言われたのです。
私は少しびっくりしました。
「どうしてまた、そう思われたのですか?」
「いえ、何となくですが、
毎日できるだけ、あるがまま、を意識して木村を
観察し続けたら、日に日に彼が大きく見えるように
なったんです。」
「特に木村さんのどんな振る舞いを見たときに
そう思われました?」
「う〜ん、何か振る舞いがあったからそう思った
というわけではないんですよね。
木村の存在自体に大きさを感じたと言いますか。」
「その彼の存在の大きさと、彼の言動が
一致している瞬間というのはどんな時でした?」
「・・・あっ、そうそう。
彼が瞬時に決断する時です。
木村はよく思考に入ってしまうのですが、
時々直観的に決断を下す時があります。
その時の木村の表情はとても晴れやかで。
しかも、その場の空気感が安定します。
なんか、守ってもらっているような安心感です。
そんな時に、彼の大きさを感じました。」
「いや、すごいなぁ、弓江さんは。
なかなか最初からそこまでの観察は
できないですよ。」
「えっ、そうですか?
あるがまま、ということだけ意識すれば
普通にできますよ。」
やはりこの人はコーチタイプです。
「それ以外に、木村さんについて
何か気づいたことはありますか?」
「う〜ん、上手く言えないのですが、
彼、何かに取り憑かれてませんか?」
つづく
組織には「ツボ」があります。
人間の体と同じく、
このツボを押せば健康になれる、
このツボを押せば活性化する、
という要所があります。
ただ、人間の体と違うのは、
その要所は、移動するということです。
具体的に言えば、
「今は誰にどのような刺激を入れることで、
全体の活性化につながるか?」
という、ツボとなる人が必ずいるということです。
しかもそのツボは、
人から人へと受け継がれていくもの。
そういった前提に立てば、
「今、ツボとなる人に対して、誰をどうつなげばよいか?」
が、組織活性化の最重要ポイントの一つになります。
前回の記事では「調和性」という考え方を
ご紹介しました。
(→前回記事)
その視点から言えば、
・今、ツボとなる人は誰か?
・その人と調和性の高い人は誰か?
・それらの人達をどのように結びつけるか?
というマネジメントをします。
それが「人と人をつなぐマネジメント」の基本です。
平井さんは、それをし続けました。
上記のように書きますと、
少し難しいことのように感じるかもしれませんが、
それは日常的に活用できることなんです。
例えば平井さんがいつも気にしていたのは、
今は誰と誰がランチを一緒に食べると良さそうか?
ということです。
ツボになる人がAさんだとして、
今はAさんと調和性の高い人はBさんだから、
AさんとBさんが一緒にランチすると良さそうだな。
そこでは、このようなテーマのお話をすると良さそうだな。
・・・というようなことを考え、
平井さんはAさんとBさんを一緒にランチに誘います。
誘わなくても、さりげなくそのような
シチュエーションを創ることもあります。
そしてさりげなく、そのようなテーマを
話題として出して、堅苦しくなく、
ランチを楽しみます。
例えば、ミーティングや会議も同様です。
今は誰と誰がどのようなテーマで
ミーティングを行なえばよいか?
そこでは、どのような席順で座ればよいか?
そして、どのような順番で
意見を求めればよいか?
などを発想し、そういった場を創ります。
ただし、発想した通りに絶対に物事を
進めなければならないということでは
ありません。
できるだけ綿密に発想しますが、
あとはその場のムードや流れに任せます。
「その方が面白い展開になりますから」
と平井さん。
こういったことを日常的に
繰り返していくだけでも、
組織の調和度合いや活性度合いは
根本的に変化します。
こういったことは平井さんは
最初からわかっていたわけではありません。
いつもじっと社員さん達を観察し、
(義務としての観察ではありません。
興味を持ち楽しみながら観察し続けていました。)
いつも順番に社員さん達と面談を続ける中で、
思いつき、自然にやり始めたことです。
しかしその効果があまりにも大きく、
いえ、大きいどころか
そういった些細なことから想定外の
面白い展開がたくさん生まれるのを目の当たりにし、
平井さんは
「何気ない日常における、一つ一つの“つなぎ”こそが、
組織活性化の要だ」
と気づかれたのです。
しかし平井流リーダーシップは
これだけでは終わりません。
普段、このような“つなぎ”をしておいた上で、
ある時、ある瞬間に、
ある大きな刺激を入れるのです。
つづく