「たけうちさん、
私はどうやら間違っていたようです。」
木村さんは、そう言われました。
そう言いながらも、その彼のあまりの清々しい表情に
一瞬私は惹き込まれました。
彼は続けました。
「弓江はいつも、このチームの真本音の視点から
意見を言い続けてくれていたんです。
それがようやく今、わかりました。」
チームの真本音
『全員がチームの代表として
お客様と向き合う』
弓江さんは常に、この視点を持ち続けた
唯一のチーム員であると、
木村さんは言われたのです。
これには弓江さんも納得されました。
「そうです。
言われてみれば、私はいつも
それを大切にしていました。
このチームの真本音と別の行動を見る度に
苛立っている自分がいました。
特に、木村リーダーが外れた行動をとると
イライラが止まりませんでした。」
このチームの真本音は木村さんが
表現した言葉です。
しかしそれは木村さんの「解釈」の言葉
ではありません。
つまり、木村さんの言葉でありながら、
木村さん一人の言葉ではありません。
こういったことが、真本音度合いが高まりますと
当たり前のように起こります。
チームの真本音というのは、
そのチーム員全員が自然に生み出します。
それは最初は言葉にはなりません。
しかしチームが真本音度合いを高めながら
一つになっていくと、自然にそれが
言語化されるようになります。
それこそが、そのチームにとっての
本当の「理念」です。
木村さんのチームには、その理念が
言葉ではなく、すでに「何となく」できあがっていました。
それはそれだけチームが一体化した証拠です。
その「何となく」できあがっていた理念を
木村さんは、あるがままにキャッチし
言語化したのです。
それが
『全員がチームの代表として
お客様と向き合う』
ということでした。
ですので、これは木村さん一人のものでは
ありません。
「みんなのもの」を木村さんがキャッチしただけ
ですので、弓江さんが共感するのは当然なのです。
今回は、木村さんのチームを例にして
お話しさせていただいていますが、
私は常に、このような理念の創り方を
大切にしています。
チームに理念が醸成される前に無理に
理念を言語化して創るのではなく、
無意識レベルで、チームに真本音の理念が
醸成されるのを促し、
それができた時点で言語化する、という
ステップです。
それをすれば、本物の理念になります。
皆の魂が入ります。
そして、やはり私は
チーム(組織)の理念は、言語化することを
お勧めします。
なぜなら、
言語化することで、簡単に意識を向けることが
できるからです。
そして言語化することで、
それが、本当に真本音によるものならば、
私達の心は非常にスッキリします。
これまでの迷いやモヤモヤが
払拭されるからです。
この時の木村さんが
まさしくそうでした。
チームの理念を言語化することで、
彼は、自分の中の淀みに気づいたのです。
そして、チーム員の中で、
最も理念に対して淀みない心で向き合っていのが
弓江さんであるということに気づいたのです。
『全員がチームの代表として
お客様と向き合う』
「私はこれと真逆のことをしていたかも
知れません。」
と木村さんは呟きました。
つづく
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