27歳のままだ

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私の場合、

精神年齢は

27歳の誕生日で

止まっている。

 

27歳のあの日、

私は海外を

放浪していた。

 

ネパールで出会った

ある男性の家に

転がり込み、

 

そこにはとても

あたたかい家庭が

あり、

 

そこでまるで

家族のように

時間を過ごした。

 

そんなに裕福な

家庭ではなかったが、

かと言って

貧しすぎるわけでもなく、

 

質素だが

とても豊かな

時間だった。

 

私は本当に片言の

英語しか

喋れなかったが、

 

彼とは

人生について

よく語り合った。

 

彼の年齢は

知らないが、

恐らく当時の私より

10歳も20歳も

年上だったろう。

 

でもまるで

同級生のように

彼は気さくに

私と接してくれた。

 

彼は彼なりの

ビジネスをしていた。

 

私も恐らくは

この一年以上に及ぶ

放浪の旅が終われば、

 

日本に帰って

何らかのビジネスを

するのだろう、と

予想していた。

 

「でも、その前に

見ておきたい何かが

あると思っているんです。

今の私には

見ておかなければ

ならない何かが

あると思うんです。」

 

・・・などと、

かなり偉そうなことを

私は語った。

 

それを聴いて

彼はにこやかに

言ったものだ。

 

「私は神を信じて

いるが、

人生は、人の努力に

よって成されるものだ。

人の力では

どうにもできないことに

関しては、

私は神に祈り、

しかしあとは

私自身の努力によって

人生は動いていく。」

 

多分、こんな感じの

ことを言われたのだと

思う。

 

すごくしんみりと

彼の言葉は

私の胸に入った。

 

その日は確か、

私は彼の小さな

オートバイの後ろに

乗せてもらい、

一緒に、片道2時間以上

も走り、

ある丘の上まで行き、

 

そこから一緒に

ヒマラヤの山々を

眺めた後だった。

 

私はもうすぐ

彼のもとを離れ、

ネパールを離れ、

次のどこかへ

行こうとしていた。

 

「お誕生日、

おめでとう」

と彼は笑った。

 

あの日から

私の精神年齢は

止まった気がする。

 

私は今でも

27歳のままだ。

 

ふと気がつけば、

あれからさらに

もうすぐ27年の

歳月が経とうとしている。

 

ひょっとすると

今の私の年齢が

当時の彼の年齢

だったかもしれない。

 

今の私はちょうど、

当時の私の年齢と

同じくらいの人達との

接点が増えてきた。

 

多くは、

すでにビジネスを

しているか、

もしくは、これから

立ち上げようと

している若い人達。

 

彼らと接すると、

私はやはり今でも

彼らと同じくらいの年齢の

イメージで

自分を捉えているのだな、

と思う。

 

でも知らぬ間に、

あっという間に、

私は彼らの倍も

人生を重ねた。

 

もちろん彼らは

私のことを

年配者として見るし、

人生の先輩として

見るだろうが、

 

私の心は、

彼らとはそれほども

変わらない。

 

共に同じ場所にいて

同じ方向を

見つめている気がする。

 

きっとネパールの彼も

今の私と

同じだったんだろうな。

 

つづく

 

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