「一撃必殺のコーチング」とは、

コーチがクライアントに強烈な外圧をかけるコーチング

ではありません。

 

クライアントが内側から自分自身を、

本来の自分を阻害している自分自身を

一撃必殺するきっかけを与えるものです。

 

私は、それができる瞬間を待ち続け、

平井さんのコーチングを開始してから約1ヶ月ほど経ったところで

「今がその時だ」と直観しました。

 

今こそ、平井さんの真本音が

掘り起こされる時だ、と。

(→前回記事)

 

すかさず私は彼に問いました。

「平井さん、

平井さんの心は、どこにありますか?」

 

突然そう問われ、彼はしばらく停止し、

そしてこう返されました。

 

「・・・不思議です。

どこにもないような気がするのです。」

 

この一言を聴いた瞬間、

私の体の中心からゾワーッと鳥肌が立つような感覚が

広がりました。

この独特の感覚・・・。

目の前の人が真本音の声を発した時、

この感覚が必ず私に起こります。

 

それは、何かの不純物が溶かされるような

感覚と言ってもよいかも知れません。

 

この一言はまさしく、

平井さんの真本音の一言でした。

 

私はそのまま次の問いを投げました。

ここからが『真本音コミュニケーション』の始まりです。

 

「平井さん、

平井さんの心はいつからないのですか?」

 

「・・・。

子供の頃からない気がします。」

 

ゾワーッとした感覚。

 

「心がなくなってしまった原因はわかりますか?」

 

「・・・。

多分、母親が原因です。

私の母は人から尊敬されるような母でした。

私はそんな母の影響をかなり強く受けました。

母は、私を子供の頃から人格者に育てようとしていました。

私は、そんな母に認めてもらうために、

母から褒められるためだけに生きていました。

子供の頃から。

それが今も続いています。」

 

ゾワーッとした感覚が続き、

私は全身が痺れるようになっていました。

彼の言葉はすべて真本音から出されています。

 

彼の目は真っ赤になり、

今にも泣き出しそうです。

 

「平井さん、

平井さんは、自分を取り戻したいですか?

本来の自分に戻りたいですか?」

 

彼は声もなく、ただ、コクリと頷きました。

 

これで、確認は終わりです。

平井さんは、本来の自分に戻りたいと

真本音で思っているか?

の確認です。

 

平井さんは今、完全に「真本音状態」です。

その彼が、何の迷いもなく

「Yes」の意思表示をされました。

 

これで先に進めます。

 

次に私が行なうことは、

平井さんにとっての「一撃必殺の一言」を

訊くことです。

 

平井さんの真本音が、平井さん自身に対して行なう

「メッセージ」です。

 

真本音からのメッセージを自分自身に投げることで、

平井さんの「一撃必殺」が成されます。

 

私は問いました。

「平井さん、

本来の平井さんが、今の平井さんに伝えたい

メッセージは何ですか?」

 

平井さんはまた停止しました。

ただただ、停止しました。

 

そして、ポツリと呟きました。

 

「・・・たけうちさん、

私のこれまでの人生は、

何だったのでしょうか?」

 

その瞬間、

平井さんの真本音が彼自身に

どのようなメッセージを投げかけたいか?

が私に一斉に伝わってきました。

 

そのメッセージはあまりにも本人にとっては

強烈すぎて、うまく顕在化できないものでした。

 

これはよくあることです。

本当は、クライアント本人が自らの口で

自らにメッセージするのが理想です。

 

しかしそのメッセージが強列過ぎる場合は、

その勇気が出ません。

そういった場合、コーチである私に

そのメッセージが送られてきます。

それは一見、テレパシーのような感じですが、

そういった超能力のようなものではありません。

 

人と人は本当に向き合い続ければ、

言葉を超えたところで、お互いの本当の気持ちが

伝わり合います。

それはコーチだからできる、というものではなく、

誰もができること。

それが、私達人間の本来持ち合わせている力、

本当のコミュニケーション能力です。

 

平井さんは自分自身への真本音メッセージを

私に送ってきたのです。

そういった場合は、私が平井さんの代わりに

メッセージをお伝えする必要があります。

 

私は自然に浮かんでくる言葉を

何の躊躇もなく、そのまま平井さんにお伝えしました。

 

それはかなり強烈な一言でした。

 

「平井さんのこれまでの人生はすべて、

“自己愛”です。」

 

平井さんの全身の力が抜けるのが

わかりました。

 

つづく