人は、生まれ持った強みを発現することで

ある意味、非常にニュートラルで自然体になれます。

 

特に何かを意識して無理矢理に物事を進めるのではなく、

自然に淡々と、まるで当たり前のように

物事を進展させていくことができるようになります。

 

ある中小企業の女性経営幹部の中原さん(仮名)の

生まれ持った強みは、

『毅然』

でした。

(→前回記事)

 

しかし彼女は、それをこれまでの人生でまったく

活かしてこなかったどころか、『毅然』とは真逆の生き方を

し続けていました。

 

そしてその生き方をすることで、

彼女なりに物事を上手く進めていたのです。

しかし、本来自分に存在しているはずの強みを使わずに

生き続けるというのは、ストレスを生む行為です。

 

ですから出会った頃の中原さんはとても疲れていました。

リーダーとは疲れるものである。

リーダーとは疲れてなんぼのものである。

というのが、中原さんにとって当たり前のことだったのです。

 

ところが。

生まれ持った強みである『毅然』を発現できるようになってから

彼女の日々は劇的に変わりました。

まず変わったのが、彼女の「疲れ方」です。

 

以前の中原さんは、

自分の本来望む在り方とは異なる在り方をすることで

発生するストレスでいっぱいでした。

つまり、ストレスを自ら生じさせている状態でした。

 

しかし今の中原さんには、

これがまったくありません。

 

それによってどうなったかと言いますと、

自分のストレスではなく、他者のストレスを直に

感じ取ることができるようになりました。

 

今、誰がどのようなストレスを生じさせているのか?を

ありありを知ることができるようになり、

適宜、対策を打つことができるようになりました。

 

しかも彼女の『毅然』とは、

他者に安心感をもたらすものでした。

いえ、彼女だけでなく、本来の『毅然』とはそういったものかも

知れません。

 

例えば、仕事で何か問題を起こした社員さんが慌てて

中原さんのもとに相談に来たとします。

以前の中原さんは、その社員さんの動揺をそのまま受け取ってしまい、

自分自身も動揺しながら、自分がその処理をする

というパターンを持っていらっしゃいました。

 

ところが今の中原さんは『毅然』としています。

何があっても動揺しません。

社員さんは、そんな毅然とした中原さんの前に来るだけで、

どことなく心が安定します。

そして冷静になって、どのような問題がなぜ起きたのか?

どのように対策すればよいか?を自ら考えることが

中原さんの前に来るとできるようになりました。

 

中原さんは、その社員さんが自らその問題に対して

向かっていけるようにアドバイスをするだけです。

 

これをすることで、多くの問題について

「社員が自ら解決できるようになりました」と

中原さんは言われます。

逆に言えば、

「これまでは、私がやり過ぎていました。

だから社員が皆、私に甘え、私に依存するという悪循環が

起きていました」。

 

中原さんの『毅然』は素晴らしく、

社長でさえ、中原さんの『毅然』を浴びるようになりました。

つまりは、

社長が何かの経営判断に迷った時に、

まず社長は中原さんに相談をするようになりました。

 

社長の相談に対して、中原さんが何か具体的な答えを

出される訳ではありません。

ただ、中原さんの『毅然』とした空気感を浴びることで、

社長ご自身の心が安定し、自然体に戻り、

良い発想が浮かぶようになるそうです。

 

中原さんの『毅然』とは、言葉を変えるならば

『中心軸』と言ってもよいでしょう。

 

私達人間は、真の中心軸を持った人と向き合うと、

非常に心が安心・安定します。

それは、揺るがない大地に降り立ったような安定感です。

 

そして私達人間は、中心軸を思い出し

心に安定感を得ると、「最善の発想」「最善の答え」を

得ることができるようになります。

 

今の中原さんの口癖は、

「私は何もしていないんですけどね」

です。

 

彼女は、何もしてないのに、彼女と向き合う人は

自分自身の「最善の答え」を見つけ出すことができるように

なります。

 

その効果と影響はどれだけのものか?

それは測り知れないですね。

 

さて。

 

ここまで例に挙げさせていただいた中原さんですが、

これは、約6年前のお話です。

 

今も私は中原さんのサポートをさせていただいています。

が、それは不定期です。

中原さんが、「今、コーチング受けたいな」と思われた時点で

呼んでいただく、という。

 

その頻度は年々少なくなり、今は何ヶ月かに一回お伺いする

くらいです。

 

先日、久しぶりに中原さんに呼ばれてお会いしました。

 

この6年。

実に様々なことがありました。

中原さんの会社も、何度も脱皮をしました。

売上規模で言えば、6年前の数倍になっています。

しかしその道のりは決して楽なものではなく、

挑戦するが故の経営危機に何度も陥りましたが、

その度に彼女の『毅然』が社長や社員さん達を助けて来ました。

そんな道のりをずっと私は拝見して来ました。

 

先日お会いした時に、中原さんは私にご報告してくださいました。

 

「実は、弊社の新しいグループ会社を立ち上げることに

なりました。

私がその社長をさせていただきます。」

 

「中原さん、ついに社長ですか!」

 

「はい。私が社長になるなんて思いもよらないことでしたが。

でも、私は私流のリーダーシップを発揮していきます。」

 

「中原さん、6年前に私と出会った頃のご自分を

覚えていらっしゃいますか?」

 

「6年前ですか・・・。

もう忘れてしまっていましたが、今から振り返ると、

あの時の自分は、閉じてましたねぇ。(苦笑)

あの時の自分は、自分ではなかったです。

何か借り物の洋服を身につけて、自分ではない何かを

演じていたような気がします。

あんな疲れる生き方は、もうしたくないですね。」

 

そう言われて、中原さんはニッコリされました。

 

このニッコリに、どれだけ多くの人達がこれまで

力をもらって来たのだろう、と私は思いました。

 

人には、生まれ持った強みが

必ずあります。

 

しかし残念ながら、それを本当の意味で

活かしている人は稀です。

 

新たに創り出す強みではなく、

もうすでにここにある強みなのに。

それを使っていないのです。

 

本当にもったいないことです。

 

私達は、私達にもともと備わっている力を

使い切りたいものですね。

 

自分のためにも。

周りのためにも。