堕ちたとき

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心だけで
なく、
魂までもが
汚染されてしまっている
のに
気づいたんだ。

それまでは
私は
幸せな人生だと
思っていた。

しかし、
ほんの僅かな
兆候のような
気づきを

いったん
得てしまったら、
もう
ダメだった。

これまで
何となく感じながらも
丁寧に丁寧に
その都度、

まるで
名人芸の
ように

蓋をし、
目を逸らし続けて
いた
内面に蓄積され
続けていた
葛藤たち。

憤りたち。

悲しみたち。

それらが
短期間に一気に
噴き出した。

おかしいでは
ないか、
と。

それは
おかしい。

これも
おかしい。

あれも
おかしい。

自分の
周りにある
あらゆるものが
虚像に見えた。

と、同時に
そうなってみると
当たり前のことだが、

自分自身の
人生全体が
虚像に見えた。

で、
堕ちたんだ。

堕ちる
ところまで、ね。

堕ちてみて
わかったことは
これもまた
当たり前の
事実だった。

私には
何もない。

私には
何の志も
ない。

私には
何の力も
ない。

私には
何の魅力も
ない。

自分が今ここで
自分として
いることだけで、

吐き気がする。

反吐が出る。

この心。

この体。

この細胞の
一つ一つが
我慢ならない。

気持ち
悪い。

今すぐにでも
脱ぎ捨てたい。

・・・とね。

死ぬことは
本当に
考えたよ。

でもね、
死んでもこの
苦しみは
微塵も解消されない、
ということも
また
直観していたんだ。

まさに
八方塞がり。

前にも
後ろにも
右にも
左にも
上にも
下にも
どこにも行けない。

で、
すべてを
諦めた。

「すべてを」
という表現が
一番、適切だな。

あれは
一瞬だったけど、
本当に
すべてを
諦めたんだ。

そこからだよ。

私の人生が
始まったのは。

すべてを
失った瞬間が、

すべての
始まりだったんだ。

つづく

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