本当に怖かった

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一本の道は

見えているのに、

 

先は見えない。

 

見えないどころか、

行く手には

暗雲が立ち込めている

のがわかる。

 

黒くて暗くて

重い雲。

 

その下に

道は続いている。

 

この道は

私の進む道、

だとわかる。

 

しかしあの

不吉な重い雲は

怖い。

 

それでも私は

進めるだろうか?

 

一本道と

言っても、

柵があるわけでは

ない。

 

周りは平原だ。

 

だから

道を外れることは

簡単にできる。

 

元来た道を

戻ることだって。

 

でも

私の目指すものは

あの暗雲のさらに

向こう側にあるのだと、

 

それだけは

わかるのだ。

 

涙が出た。

 

怖いからだ。

 

震えた。

 

怖いからだ。

 

でも

私の体は

一瞬でさえ

迷わなかった。

 

速度を落とさず、

私は

暗雲に向かって

進み続けた。

 

予想通り、

暗雲は暗雲だった。

 

激しく

雨は降り注ぎ、

 

竜巻は起き、

 

雷に打たれた

こともある。

 

よく

生きていられるものだと

我ながら

感心した。

 

しかしどれだけ

酷い目に遭っても、

やはり私は

一本道を外れる

ことはなかった。

 

なぜならそれが

最短の道だと、

 

暗雲の中に

呑み込まれながらも

確信できたからだ。

 

そして

この酷さのすべてを

私は耐えることが

できるのだと。

 

なぜそう思えたのか

はわからない。

 

でも

きっとそれは

一本道そのものが

教えてくれたのだろう。

 

私は

今になって思う。

 

人間だから、

道を外してもいいだろう、

と。

 

道を外しても

きっとまた

この一本道には

戻ってきただろう、

と。

 

だってこの道は

私だから。

 

この道が

私だから。

 

私は私自身を

ただ

歩んでいるだけだ。

 

暗雲も

私だ。

 

最近、晴れ間が

増えてきた。

 

きっとここからは

晴天の清々しい道

となるのだろう。

 

でもその晴天も

私だ。

 

すべて

私だ。

 

私が行なっている

ことだ。

 

つづく

 

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