目を開けてごらん

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洞窟の中に

私は仰向けに

倒れていた。

 

真っ暗で

何も見えない。

 

その私の

胸からお腹の辺りに

何かが

乗っかっている。

 

重い。

 

どうやら

時間が経つにつれ、

徐々にではあるが

重みは増している

ようだ。

 

しばらく私は

それに耐えていたが、

しだいに

内臓が圧迫され、

苦しみに

悶えるようになった。

 

重い。

 

苦しい。

 

ゲホッと、

まるで動物の

呻り声のようなものが

私の口から

吐き出された。

 

やばい。

 

このままでは

圧迫されて

死んでしまう。

 

でも、

周りは真っ暗で

何も見えない。

 

いったい

自分に何が

乗っかっているのか

すら

わからない。

 

ただ、

重く

ただ、

苦しい。

 

やばい。

 

死んでしまう。

 

と、

私は必死に

もがき始めた。

 

生命の危機

を感じ、

もがき始めた。

 

その時になって

初めて、

私は

気づいた。

 

ここは

暗闇ではない。

 

私自身が

目を

瞑っているのだ、

と。

 

・・・・・・

 

私は

目を開けようと

思った。

 

しかし、

開かなかった。

 

怖いのだ。

 

怖くて

目を開ける勇気が

出ないのだ。

 

命の危機に

晒されているのに、

怖さの方が

勝ってしまっている。

 

すると

それを見透かした

かのように、

さらに重みが

増してきた。

 

あ、ダメだ。

 

本当に

もうダメだ。

 

もう

限界だ。

 

というところまで

来て、

初めて

私はようやく

目を開けた。

 

・・・・・・

 

目を開けると、

なんとそこは

草原だった。

 

明るい日差し。

 

青空が

広がっていた。

 

呆然としながらも

私は

私の体の上に

乗っかっている

ものを見た。

 

私のお腹と

胸の上には、

 

私自身が

立っていた。

 

お、お前は

俺か?

 

と、必死に

私が問うと、

 

見ての通りだ。

俺は、

お前だ。

 

彼は言う。

 

お前が俺なら

俺を

助けてくれ。

俺の上から

どいてくれ。

 

私が言うと、

 

いいよ。

 

と彼は言い、

あっけなく

私の上から

降りた。

 

ゼーゼーと

私は

何度も息を

深く吐いた。

 

た、

たすかった・・・。

 

私はしばらく

うずくまっていたが、

少し落ち着くと

途端に

腹が立って来た。

 

おい、お前、

なんで

俺の上に

乗っかっていたんだ!

 

私が叫ぶと、

 

何言ってんだ。

お前が自分で

望んだことだろう。

 

・・・と。

 

その一言で

私は

思い出したのだ。

 

そうだった。

 

私が

望んだこと

だった。

 

目を閉じたままで

決して開けようと

しない自分に対して、

本当に

腹を立てたのは

他でもない

私自身だった。

 

だから私は

私自身に

「必死さ」を

与えた。

 

それにより

ようやく私は

目を

開けることが

できたのだ。

 

私はずっと

自分が

洞窟の暗闇の

中にいると

思い込んでいた。

 

それが

人生だと

思い込んでいた。

 

しかし、

本当は

気持ちの良い

草原にいた。

 

青空まで

広がってやがる。

 

その現実を

私は

自ら目を閉ざして

見ようと

しなかった。

 

すまんな。

ありがとう。

感謝してるよ。

 

と、

私は

私の上に乗っかっていた

私自身に

伝えた。

 

わかれば

いいんだよ。

心配したぞ。

本当に

死んでしまうのでは

ないかと

思ったよ。

でも俺は

お前を、

つまりは

俺自身を

信じているから。

 

そう言われて

私は

涙した。

 

涙しながら

訊いた。

 

お前はさ、

本当に

俺なのか?

 

すると

彼は笑いながら

言った。

 

何言ってんだ。

俺はお前だ。

お前が

俺なんだよ。

 

だって俺は、

お前の

真本音なんだから。

 

つづく

 

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