木村さんと弓江さんの
二人コーチング。
私は今、お二人から
新規事業プロジェクトチームメンバー
お一人一人についての印象を
お聴きしようとしています。
(→前回記事)
「まずは木村さんにお訊きしますね。
木村さんが今、直観的にお顔の浮かぶ
チーム員はどなたですか?」
すぐさま木村さんは答えました。
「日下部です。」
「年齢は?」
「29歳の男性です。」
「彼についての印象をざっくばらんに
お話しください。
詳しい情報は要りません。
本当に、印象だけで結構です。」
「・・・そうですね。
真面目な人間です。
でもちょっと真面目過ぎるというか・・・。
物事をきっちりとやろうとし過ぎているところが
あります。」
「弓江さんは、いかがですか?」
「確かに真面目ですね。
ただ、私から見ますと、真面目さよりも
ちょっとこだわりが強過ぎる気がします。
言われたことをそのまま行なうよりも、
自分なりの考え方に歪曲してしまうというか。
頭の良い人だと思いますが、
時々、かなりずれたことを言ったりやったりします。」
「良いところはありませんか?」
「妥協しないところですね。
サボろうとか、適当にやろうとか、
そういったところがありません。
実にコツコツと、決めたことをやり続ける
というところがあります。」
「彼との仕事はやりやすいですか?」
木村さんが答えます。
「やりやすい時と、そうでない時の差が
大きいかも知れません。
私の意図と、彼の意図が合致する場合は
とてもやりやすいですが、
そうでない場合は、そこを修正するのに
かなりの時間がかかります。」
「弓江さんはいかがですか?」
「仕事のやりやすさは、何とも言えませんが、
彼としゃべるのは、結構楽しいです。
時々、意見がぶつかることもありますが、
彼は彼なりに考えて、しっかり意見を言うので、
有意義な時間になります。」
「彼の仕事における悩みは何だと思いますか?」
そこで、二人とも「えっ?」という表情に
なりました。
あまりそういった視点で考えたことが
なかったのでしょう。
やはり木村さんから答えました。
「う〜ん、そうですね。
どちらかと言えば、彼は自分の考えを
押し通すことが多いですから、
いかに周りを説得させるか?という
悩みが多いのではないでしょうか。」
弓江さんが言います。
「あまり彼が悩んでいる感じは
私はしません。
悩むことよりも、突き進むことの方を
彼は大事にしているように思いますね。」
この辺りから、私は
日下部さんの「実在」を強烈に感じ始めました。
まるで彼が
この場にいるかのような存在感を
覚えるようになりました。
これも、いつものことです。
ここからが、「実在コミュニケーション」の
スタートです。
私は、日下部さんの「実在」から、
すごく重いものを感じ取りました。
そこに意識を向けると、
あえて言葉にすれば
「助けてください」
と言われているような気がしたのです。
「弓江さん、
実は、今私が直観的に感じたことなのですが、
今、日下部さんは何か助けを求めていませんか?
そのような気配を感じたことはありませんか?」
その瞬間、弓江さんの顔が
驚きの表情となりました。
つづく
木村さんと弓江さんの二人コーチングに
話を戻しましょう。
(→【本物のエネルギーは、落ち着きと覚悟を生む】)
弓江さんは、
脱皮を果たしました。
弓江さんが脱ぎ捨てた古い皮は、
「正義」
でした。
そしてそれを手放した直後に彼女は
「私が皆を引っ張る」
という覚悟を持ちました。
彼女は言いました。
「私にしかできないことが
ある気がします」と。
その一言を聴いた瞬間に、
今度は木村さんの脱皮が
一気に進んだのを私は感じ取りました。
「木村さんも今、
もうほぼ脱皮を完了したようですね。」
「あぁ、そうですよね。
何となくわかります。」
「木村さんが脱ぎ捨てようとしている
古い皮は、今、実在レベルでは
どのような状態だと思いますか?」
「ほとんど脱げましたが、
私の右腕に脱いだ皮がまだ
こびり付いています。
右腕がとても重いです。」
「木村さん、よく観察してください。
その右腕についている皮は
いったい何でしょうか?」
木村さんは目を閉じて
右腕に集中しました。
そして、
「あの、・・・これでしょうか。
“我が想い”という言葉が浮かんできますが。」
「へぇ、面白いですね。
“我が想い”を脱ぎ捨てるのですか。
“我が想い”というと、真っ先に思い出すことは
何ですか?」
「売上を当初の目標の1.5倍上げてやろう、
という私の気持ちを思い出します。」
「木村さんは今、
それを手放そうとしているんですね。」
「いや、・・・それはまずいと思います。
それを手放してしまったら、
目標達成できなくなる気がします。
今のモチベーションも消えてしまう気がします。」
「本当にそうですか?
一度、手放してみてはいかがですか?」
「いや、しかし・・・」と、
しばらくの時間、
木村さんは拒んでいました。
しかしどうにも右腕が
重くなってきました。
「いやぁ、もう右腕が不快で
しょうがないです。」
「やはり木村さんは、その“我が想い”を
手放したいのでしょ?」
「そうなんでしょうか。
・・・いやぁ。でも、もう嫌だなこの感じ。」
「思い切って手放してしまっては?」
「ちょっと怖いですが、
どうもそうするしかないようです。
わかりました、手放します。」
「どのように手放します?」
「・・・自分でやります。」
そう言って木村さんは、
自身の左手で、右腕にこびり付いているものを
ベリッと引き剥がすようにしました。
その瞬間、
フッと私も、体が軽くなった感覚を得ました。
「できたような気がします。」
「そうですね。できましたね。
どうですか?
“我が想い”を手放した感じは?」
「いや、なんか、いたって普通です。」
「売上1.5倍については、
いかがです?
どう思いますか?」
「あぁ・・・、不思議です。
さっきまで、結構、自分は自然体で
売上1.5倍をやろう、と思えていたつもりでした。
でも今、さらに力が抜けました。
いや、力が抜けるというよりも
力を入れようが入れまいが、どうでもいいような・・・。
だって、達成するのは当たり前のような
気がするんです。
やることをやるだけ。
達成するのが普通のこと。
そんな感じがします。」
その時私は感じました。
木村さんはニュートラルに淡々とした
表情になっていたのですが、
その奥に、とてつもないパワーが
宿っていることを。
あぁこれは、
本当に物事を成し遂げる人の空気感だ
と思いました。
何の気負いもなく
淡々と凄いことを成し遂げていく
深いパワー。
これこそが、
木村さん本来の空気感であると
私は確信しました。
つづく